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商人の依頼

ゲームマスターを倒してもエンディングにはならない。むしろ手間が増えた。盗賊は焦げてはいたが、何とか生きていた。ヘルが回復の風を起こし治療する。

「一生ついていくッス!」

迷惑である。

「それなら更生して、田舎に帰って世のため人のために働いてくれ、俺の前には現れなくていいから」

「了解ッス!」

素直だ。一目散に村の外に走って行く。ちょっと罪悪感が…まぁ元々極悪人だから更生させて良かったのか?アイテムボックスから零れ落ちた物を3人で集める。ひとまず精霊の壺をアイテムボックス化して金貨や装備品を回収する。回収が終わった頃にさらわれてきた人達が寄ってくる。全部で10人か、その中の1人が俺に問いかける。

「あの、ここはどこなんでしょうか?私達は緑布党に浚われてきたんですが、貴方は一体?」

代表者の人はちょっとおびえている。無理もないか。俺は突然やってきて人を殺したわけだしな。

「私は私の奴隷を救出に来ました。ここから南に12メルほど行くとビルです」

当然建物のビルではない。

「ビル!?東の都ですか、私は西のガヴィ共和国から浚われて…困るんですが、どうやって帰れば?」

そんな事俺に言われても困る。浚った奴等に…それにしても緑布党は少ない。ムカデを襲った連中を含めても5人しかいない。まだ日も高いから、これからワープで戻ってくるんだろうか?だとしたらこのままここにいるのは拙いな。

「私に出来ることは貴方達をビルまで連れて行くことくらいですね、ここにいつまでもいるのは危ないですからね。なにせ盗賊の拠点ですから」

浚われてきた人達は互いに顔を見合わせている。判断がつかないんだろう。仕方ないことだ。ヘルとクーをケリーに乗せる。ケリーは5人くらいなら乗れそうだ。

「我々もついて言ってもよろしいですか?」

もちろんと返す。まだ警戒されている気がするが仕方ない。彼等には足の不自由な人もいないが、竜と併走出来るわけがないので、俺も歩くことにする。なぜかクーもケリーから降りて俺の右手を握る。離れたくないのだろう、俺もだが。

「突然箱の中に先程の小太り男が現れ、気付いた時にはここにいたのです」

「そうか、何もされなかったか?」

「私もヘルも何もされませんでした。何故か姿を変化させられましたが。妙な事を言っていました」

なんでもクーが云うにはゲームマスターはおかしな力を持っていたそうで、浚ってきた人間を変化させて市民の意識を持たせるとか云って延々演説していたそうだ。なんでも亜人と人間の違いは見た目だけなので、亜人を全員変化させてしまえば奴隷はいなくなると考えたそうだ。本気だったのか?そういやエルは奴隷解放連だったとかクーが言ってたな、緑布党とは同一の組織なのか?

村から出て2メルほど歩いたが、誰も疲れた様子もない。大した距離でもないが、帝都の東は山地が多いので、周りには水色の草が生い茂り、斜面には真っ青な樹が林立している。今歩いている道は獣道というほどでもないが、整備されているわけではなく、人が歩いた所が道になっている程度だ、歩きやすい道というわけではない。おそらく盗賊の村は廃村だったのを利用したんだろう。都から近くても廃村はあるのか。


「ありがとうございました。盗賊の村から帰ってこれるとは思いませんでした。荒野に明かりというやつですね」

この辺りの言い回しなのか?途中疲れた人をケリーに乗せたが、全員無事ビルに着いた。

「いえいえ。皆さんのお役に立ててよかったですよ」

「助けていただいて、大変厚かましいお願いなんですが…」

「なんでしょう?」

「お金を貸していただけないでしょうか?」

そんなことか、壺から金貨を10枚取り出し、それぞれ1枚づつ渡す。返ってはこないだろうが、袖振り合うも他生の縁だ。いや…人を殺した事の罪悪感を薄めたいのだろうか?あんまり気にしてないが、夜にはうなされるかもしれない。金貨を渡し終わると、彼等はなんども頭を下げる。今さらだが頭を下げる風習はここにもあるのか。


「さて、ちょっと予定外のことがあったが、無事ビルに着いたな」

宿屋で荷物が無くなっていないかを確認していたら、箱に食料を置いてきたのを思い出したが、いまさら取りにもいけない。ケリーはアカシュの所に預けてきた。竜を置いて置ける宿がないらしいので仕方ない。いっそ売ろうかとも思ったが、ケリーは強いものにしか懐かないそうで、しかも主人を決めてしまった竜は他の人間を乗せないらしい。アカシュは俺ならば御せると思ったから売ったそうで、悪気はなかったらしい。実際ケリーは相当速いのでいい買い物ではあった。ケリーの為にも家を建てないといかんな。一度買った生き物は責任持たなくては。ドアをノックする音が聞こえた。

「はいはい。今開けますよ」

木製のドアを開ける。東の都は四季が在り、建築物の様式が日本と似ていると攻略本に書いていたので、住む事に決めたのだ。…まぁ塔は殆どが木製ではなく石だったが。やっぱり当てにならない攻略本だ。

「アカシュでございます」

日曜日によく聞く台詞と共に老人が現れた。

「おや、まだ何か御用で?」

もう用なんてなかったと思うが。

「箱に置き忘れてきたソウド殿の荷物を持ってきました。それと今回の顛末のお話をしておきたいのです。それとソウド殿の腕を見込んでお願いがあるのです」

ムカデ箱に置いてきた食料とズダ袋を受け取る。アカシュ氏によると、盗賊村には盗品の倉庫や緑布党のシンボルである旗があったことと、何十人もの生活の痕跡が残っていたことから、状況的に緑布党の拠点であったことは確からしい。また騎士団が、村から逃げてきた人から事情を聞いたそうで、俺は緑布党の団長を殺した事については咎められないそうだ。これについては後日詳しく話を聞きに来る事もないらしく、アカシュ老人が手を打ってくれたらしい。

「緑布党を壊滅させたという実績を騎士団が欲しがったのですが…よろしかったですかな?」

別に問題ない。必要な物は手に入った。盗品なんて貰ってもしょうがない。盗品はどうなるんだろう?騎士団が横領するんだろうか?

「緑布党の被害を被っていたのは貴族や豪商が多かったので、騎士団も盗品を見つけられてホットしているようです。なかには騎士団のパトロンである貴族様の家宝もあったようですから」

騎士団って公営じゃないのか。その後も話しは続く。都の近くに盗賊団の拠点があるなど灯台下暗しもいいところだと思ったが、どうも連中はワープを活用して悪事を働いていたらしく、帝国の方々で活動していたそうだ。なんでも村に戻ってくるかもしれない連中をしばらく監視するそうだ。よかった、これで俺が残党に狙われても安心だ。

「ソウド殿のお助けになった者達は、1人残らず盗品と一緒に故郷に返されるそうですよ」

これで情報も漏れないだろう。…漏れないといいなぁ、月夜の無い晩も出歩きたい。とにかく俺の名前は緑布党壊滅の件については一切出ないそうだ。帝国全土を震え上がらせた盗賊団を壊滅させたのは東の騎士団だと宣伝したいらしい。クーは少し不満顔だ。俺の手柄を他人の者にされて憤りがあるんだろう。

「それで、アカシュさんは俺に何をさせたいのですか?」

この老人は俺に黙って騎士団の利益を通した。騎士団とどんな話をしたかは知らないが、どうも俺の事は伏せていたそうだ。さらわれた人達には、俺は騎士団の人間だと説明したそうだ。たしかに俺に名声など必要ないのは確かだが、どう言うわけかこの老人は俺の活躍を騎士団のものにするために色々と手配したようだ。何か魂胆があるんだろう。

「あの村の連中が緑布党だったのは確かですが、それは結果論です」

確かにそうだ。というか盗賊でも殺したら事情聴取くらいする筈だが。

「わしはソウド殿を煩わせたくなかった、というのもありますが、恩を売っておきたかった。貴方のような方は騒動や注目を嫌うものですから」

俺のような…?

「この都の最難関迷宮『青龍洞ブリュード』を攻略していただきたい。正確には60階に行って頂きたい」

「何故そんな事を俺に頼むんだ?」

「ソウド殿はあの盗賊の心を操ったと見ましたが…」

身構える。俺に触発されてクーも緊張している。

「身構えなくても結構です。実は似たような事をした男と50年ほど前に義兄弟になったのです」

「詳しくお話願えますかな?」

「勿論です。ソウド殿への頼みと関わることですから」

アカシュと義兄弟になったのはルンという男で、おかしな力を使うとても強い男だったそうだ。アカシュの姉と結婚して、結婚直後に迷宮で死んだそうだ。それだけの話なのになんで60階がどうとかいうんだ?

「実は青龍洞を昔攻略したという男が最近になって私の店に来たのですが、60階でルンを見たというのです」

「迷宮には時間制限があるんでしょ?50年前に死んだ男が居る訳無い」

「それはもっともです。その男は30年ほど前に60階に到達したそうで、その時見たのです。まぁおかしなことを言っているのは分かりますが、ぜひやっていただきたいのです。ソウド殿は義兄と同じくとてもお強いのだから充分可能でしょう」

う~んどうするかな?

「実は私はこの都に庭付きの家を建てようと考えているのですが、それに協力してくれるなら、この話を受けましょう。ただし結果はわかりませんよ」

「おぉ!感謝します!ソウド殿!もちろん家の事などお安い御用。老い先短いこのカラシュの話しは貴方以外の方には誰も信じてはくれませんでした」

なんでもカラシュは隠居して時間があるので、帝都にこの話を受けてもらえる人間を探していたらしい。結局駄目だったそうだが、それで意気消沈して帰ってきたらしい。フンは心配性の息子にいざと云う時のために雇われた人間だそうだ。ワープはかなり体力を使うらしく、フンは自宅でうんうん唸っているそうだ。普通の人間のワープは一ヶ月に一回が限度らしい。

何度も頭を下げながら、カラシュが退散する。今日はよく頭を下げられる日だ。

「よろしいのですか?結局作法も何もわかりませんでしたが」

たしかに。カラシュは迷宮のことなど知らないのだろう。あくまでも商売人だ。

「家を建てる事について協力してくれるからいいじゃないか。それにどの道青龍洞には潜るつもりだった。ついでだついで」

金の生る樹を栽培するにせよ家を建てるにせよもう少し金はいる。いや金はいくらあっても困るもんじゃない。

「話しは終わり。今日は色々あったから、もう宿からは出ないぞ。お前達をたっぷり楽しむ」

この宿には風呂が無く、近くの公衆浴場を利用するシステムだが、今日は風呂は入らん。

「御主人様がそうおっしゃるなら…」

「えへへ~旦那様?クーちゃんね~捕まってた時ね~」

「こらっ!ヘル!それは言わない約束です!」

何があったのやら、しかし今日は大した事はしていないはずだがえらく疲れた。この2人と離れ離れになると思っただけでこの有様か。我ながら小心だ。逆に言えばそれだけ大事な人を手にしていると言うことなのだろうか?この町に家を建てれば、ようやく俺の収支は地球の時よりもプラスになる。2人の美女に挟まれて幸せな感触を楽しんでいる時点でプラスのような気がするが、不動産的にはマイナスだ。この2人にも幸せになって欲しい。2人の腹を撫でながら考える。いずれ子供を産んでもらうつもりだし、それにはやはり家がいる。


「ヘルも大分馴れてきたな」

最初はかなり戸惑っていたヘルも今ではクーと遜色ない動きが出来る。

「…旦那様?なんであたしが一目惚れしたか知りたい?」

上にいるヘルがランプの明かりに照らされた豊満な体を見せつけながら聞いてくる。勿論知りたいと頷く。

「気がついたら山の中に居て、ここがどこなのかも自分が誰なのかもわからなかった。あんまり不安でもなかったけど、寂しかった。あたしと繋がってる人が誰もいないのが怖かった」

記憶喪失の不安感は俺には分からないが、もし自分がなっていたらと考えると恐ろしい。

「なんだかわからないうちに覆面の人達に、行った事もない国に連れて行かれて良く分からないところに入れられた。何にも分からなかった所に、旦那様が来たの」

奴隷にされてすぐ出会ったのか。

「一目で分かったの旦那様だって、自分が愛する人だって」

「初対面だろ?」

地球に金髪の豊満な体をした知り合いはいなかった。

「そんなのどうでもいいの。あたしにとっては、世界で始めて出会った誰だか解る人だったんだよ」

熱っぽく語る度に、豊満な体が揺れる。眼福である。とにかく俺は出会った時に旦那だと思われたのが一目惚れの原因らしい。そんな理由でいいのか?女心はわからん。

「でも、隣に可愛くない男の子が居たから、そういう趣味の人だと思ったよ」

変身したクーの事か。相変わらず記憶喪失なのに変なこと知ってるな。

「だから、精一杯アピールしなきゃと思って、初めてのキスをしたの。それからもいろんな初めてあげちゃった」

確かにあのキスは衝撃だった。いきなりキスするなんてマフィアでもやらない。

「でも…旦那様はちょっと…変態だった。箱の中であんなの見せる事になると思わなかったぁ」

箱の中で色々やったがどれのことだろうか?

「嫌いになったか?」

「ううん…旦那様の言うことは何でも聞くよ。今日だってそうしてれば怖い思いしなかったのに」

ギュッとしがみついてくる。いろんなものが当たって実に気持ちいい。

「今日の事は俺のお前達への愛を確認させてくれたから役には立った。結果良ければ全て良しだ」

「御主人様…」「旦那様…」

俺の右で気絶していたクーも回復したようだ。ランプの明かりはまだまだ残っている。さて、言語に絶するお楽しみを味あわせてやろう。それが無事俺の元に戻ってきた可愛い2人へのご褒美だ。

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