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名付けの親

「あんっ!そこぉ~いいですわ~気持ちいいです旦那様~」

「御主人様のマッサージは最高です。ありがたく受けることです、ヘル」

「そうだね~クーちゃんは毎日これしてもらってたの?いいな~」

キスされた後に彼女をインゴット2枚で貰いうけ、宿屋に帰還し、夕飯を食べて、地下の風呂に入った。地下の風呂は洞窟の様に薄暗かったが、客層が良いせいか、おかしなのはいなかった。その後は部屋でストレッチをしていたが、彼女達が長風呂からあがってきたので、マッサージを楽しんでいる。趣味と実益を兼ねた作業だ。2人ともとても柔らかい。


つい一ヶ月前まではこんな状況になるとは思いもしなかった。あの頃はせいぜい近所の本屋の美人店員の笑顔を遠目に楽しんでいたぐらいだ。しかしあまりにも簡単に惚れられている。何故だ?

考えられる事としては、やはり『さいしょの男』が何かしたんだろう。もしも奴が俺と似たような立場で、この世界に訪れ、意世界のシステムに細工するならば、美女と出会いやすくし、相手から惚れるようにするだろう。男の夢の一形態である。どうやったのか知らないが。

「しかしいいのか?ヘルなんて名前で?」

「ん~旦那様のくれた名前、良いと思うよ~」

そう、彼女は記憶喪失であった。フィクションではよくいるが、現実では出会うことの少ない症状のひとつだ。ヘルという名前も腹が減っていたから、とりあえずそう付けたら気に入ってしまった。マッサージが終わるとヘルは気持ちよさそうにベッドに寝転がる。


「では御主人様。今度は私がマッサージをします」

うつ伏せになり、クーが乗っかる。

「わたしも手伝う~」

「ではヘルはおみ足を揉んでください。二人で協力しましょう」

仲良くなってくれるといいのだが。

「旦那様のパパとママに挨拶したいけど、どこにいるの?」

やはり少しずれている。ここが宿屋だと分かっているのか?

「親類はもういないな。父と母親の葬儀は喪主だった。ヘルの家族はいないのか?」

「いないと思うよ~なんかそんな気がするの」

お気楽だ。記憶喪失ってこんなもんなのか?

「しかし、奴隷のままでいいのか?解放する事も出来るぞ?」

一目惚れされたとはいえ、選択の自由は与えたい。

「命がみんなで1つって素敵だと思うの」

クーに教わったのか?正直俺には良く分からない価値観だ。…心の操作、嫌な考えが浮かぶ。奴隷は奴隷であることを喜ぶように操作されている?そもそも俺にしても日本で前科は無く、凶暴な人間ではなかった。なのに今は怪物とはいえ、奴らの臓物を見ても動じない、奴隷という日本では失われた観念も受け入れている。ここの空気に適応したように、俺も操作されているのか?さいしょの男の作った法則によって…


楽しいマッサージが終わり、窓の外を眺める。色とりどりの明かりがある。何でも魔光というものらしい。意世界の文明レベルは少し分かりかけてきた。生産技術は無いが、それは迷宮の力によって補完されている。人権意識は人間が中心であり、亜人にはどこまでも冷酷だ。中世…西洋におけるローマ崩壊から始まる時代区分の終わり頃か、近世の初めくらいの文明かも知れない。

日本風に言うならば、江戸文化の爛熟期と言ったところか。華やかな娯楽・文化が誕生したが、下層階級はたいへん苦労していた頃だ。その辺は現代と変わらないかもしれないが、一応現代は選択の自由がそれなりにある。もっとも俺は歴史学者でも文化人類学者でも無いので正確なところは分からない。だいたい魔力のある世界の文明の進み具合を地球の基準で計れるのかは分からない。

「二人ともとても綺麗だ」

辛抱のランプに火を付けて、部屋を照らす。赤熱電球くらいの明るさだ。ランプを3年間一日も休まず使うなどできるだろうかと思っていたが、ランプに照らされた黄金と蒼銀の髪の2人の裸体の女神は毎日見ても飽きないだろう。楽しい事は毎日続ける事が出来るはずだ。

「ありがとうございます御主人様。へル、最初は痛いですが、すぐに馴れます。まずは私が手本を見せるので、真似して下さい。上手くいかなくても御主人様に任せていれば安心です」

「痛いの?うん、でもがんばるね~」

 2人は本当に可愛いな。そう言えば奴隷商からいくつか奴隷専用装備を貰ったのを思い出した。首輪と腕輪と足輪である。なんでも装備するだけで避妊具になるらしい。まぁ体に悪そうなので付けさせないが。金はある。別に2~3人食い扶持が増えても問題は無い。


さてこれからどうするべきか?夜の宴が終わったので一息ついて考える。ヘルにかけた布の一部がすごく盛り上がっている。う~んでかい。

クーの服が仕立て終わるまでは帝都に居るしかない。ついでにヘルの服も作ってもらうつもりでいたが、偏屈らしいいし、やってくれるだろうか?金は…少々減ったがまだインゴットは3枚ある。無論迷宮で稼ぐ事は出来る。そういえば山で得た金は500万ナルだ。獲得金倍増は働いたのか?それとも固定ドロップには効果が無いのか?

どの道ヘルはまだレベルが低いし、危険度の高い迷宮には入らないので、俺も低級ジョブを上げて褒章値を荒稼ぎするとしよう。いやセットしているジョブの分しか加算されないのか?その辺も確認しよう。寝ているヘルのステータスをチェックすると、セカンドジョブどころかサードまで持っていた…取得条件が分からん。俺のように所有業は見れなかったので、細かい内訳も不明だ。仮想視界にも随分と馴れたものだ。初めは使うだけで吐きそうになっていたのに。

帝都を出たら東に向かうつもりでいた。金の生る樹の栽培とヘルの家族探しだ。ヘルは東で捕獲人に捕まって、あれよあれよという間に連れて来られたそうだ。捕獲人達はプロ意識が高すぎる。ヘルにはまったく瑕が無かった、こんな美人なのに、ホモなのが捕獲人になる条件か?いやそれだと別の問題が出るか?

とにかく一目惚れされたとはいえ、親がいるなら挨拶くらいはしておきたい。やる事やってから挨拶するのもおかしい気がするが。


「おはようございます。御主人様」

目覚めるか目覚めないかくらいで、クーが額に挨拶してくる。左腕にはヘルがしがみついている。起こさないように静かに、ベッドから出る。

「おはよう」

「朝食を用意してあります。どうぞ」

パンやスープが三人分用意してある。助かるが、いつ買ってきたんだ?

「昨日風呂に入る前に町に出て買ってきました」

気配りの人だな。ホント助かる。

「ところで本日のご予定は?」

「今日は迷宮探索を休んで、文字の練習をしようと思う」

字を書けないハンデは克服しておきたい。

「文字の練習は半日もかかりません。ヘルのレィビィルとやらを上げてからでもいいのでは?」

確かに文字の書き取りは反復練習の方が大切だ。クーに疲労の色は無いし、低危険度の迷宮ならいいかな。

「実は攻略する迷宮を見つけておきました」

「ヘルにも大丈夫な迷宮か?」

「もちろんです。修練道プリスドという作法の良く知られた30階の迷宮です」

作法が知られているのか。

「作法は単純なもので、5人以下で入ることです」

簡単だな。

「しかし、そもそもヘルが迷宮に潜りたくないと言ったらどうする?」

「昨日聞いておきました。生き物を殺さないなら入れるそうです」

用意周到な奴めと言って撫でてやる。魔物は生き物かどうか判断するのはヘルだが、駄目そうなら帰ってきて文字の書き取りをするとしよう。

「ご馳走様でした」

飯を食い終わって、スープの入っていた皿をたらいに水を入れて洗う。そういえばそろそろ上級ジョブを得られる頃か。しかしアイテムボックスは捨てがたい。上級職でも使えればいいのだが。


所有技─探索者─アイテムボックス⑤─トラップサーチ③─発見者ディスカバー─アイテムボックス⑤─アイテムサーチ0─アイテム鑑定①─トラップサーチ③


完全な上位互換だ。試しに探索者だけを外してもアイテムボックスには変化は無かった。袋が破れていたら大変だった。我ながら考え無しだ。ついでに?の棒を鑑定してみると、ひのきの棒(宝具)であった。ようやく分かったか。そのまんまだ。ファーストはサムライだとして、セカンドは発見者、サードは何に…野球の監督みたいな事考えてるな。


天職─ファースト─武者LV40─セカンド─発見者LV01─サード─防人LV01

設定─褒章値167/288─悪行値0/108-獲得金増大2倍-獲得経験値6倍


結局サードは武者の派生ジョブにした。攻略本によると、仲間をスキルで守る事が出来るそうだ。人気はあまり無いジョブであったそうだ。ナイトやパラディンにステータス効率で負けていたらしい。褒章値はLV1の分は加算されないようだ。はて?そうすると俺の初期値がだいぶ多いが何でだろ?まぁ役に立ったから良いのか?

そういえば仮想視界に映る情報はユーピンの物と相違無い物なのだろうか?完全攻略本はプレイヤーであることを前提として書かれたものだったので、チュートリアル的な紹介は無かった。もしやまだ知らない機能が有るのだろうか?だがもう図書館には行きたくない。あらゆる情報がある場所というのは冥界や地獄と同じく想像上の物であるべき所だ。俺の本能はあそこにはもう行くなと言っている。


「ここが修練道です」

目の前には四角い白い建物があった。中に入っていく鎧姿の連中が出て来ずに入り続けるというのは結構シュールだ。ここに来る途中で新しい鎧を買った。泥沼鉄の装備は引き取ってもらった。…全部で100ナルであった。銀貨1枚である。


鉄綿の兜(アイメン・ヘルム)

鉄綿の鎧服(アイメン・アーマー)

鉄綿の腿巻(アイメン・クイス)

鉄綿の脚袢(アイメン・レギンス)


新しい装備はこれ全部で金貨5枚である。軽くて動きやすい上に泥沼鉄より防御力があるらしい。鉄綿はそのまんま鉄製の綿である。どうやって造ったんだ?クーとヘルにも同様の装備を一式買った。ヘルは動きやすいように長髪をポニーテイルっぽくまとめている。可愛い子は何をしても可愛い。

「ヘルは何ができるんだ?」

「えぇとね、風でヒューってしたり、バヒューってしたり」

「風を使って攻撃し、風をまとって鎧とします」

クーは賢いな。なんか仲良くなっているような。いい事だ。迷宮の周りに屯している連中がヘルの事をいやらしい目で見ている。ヘルは気にしていないようだが、たぶん自分がどんな目で見られているのか理解してない。かなり初心なんだろう、性知識が無いとも言う。昨日もクーと俺を見てあたふたしていた。そんなこんなで迷宮に入る。

「わぁー景色がすぐ変わったー」

ヘルが素直な感想を云う。修練道は洞窟や山とは違い、室内って感じだ。天井も壁も床も全て四角四面だ。中学校の廊下が延々続いている感じだ。道の幅がやや狭く、人の交差は問題ないが、4人以上が横に並んで歩くのは無理だ。ゴリラから入手した棒は強力な熱量を感じさせる強力な装備だが、長さが2m以上あるので、この通路では振るえない。

長男の刀を装備して前進する。クーも爪を装備し、ヘルは途中で買った杖を装備している。風流士って魔法使いなのか?攻略本にはのっていないジョブだったが。一応杖は攻撃力も魔法攻撃力も上げるそうだが。

「おいおい、ここは子供の遊び場じゃねぇぞ!」

「いやいやどうみても貴族のボンボンでショ」

HAHAHAと五人組のパーティーが笑っている。初めて迷宮内で出会ったのがこいつ等か。立ち振る舞いから云ってそう強くも無さそうだ。剣と鎧の汚れや錆もあまり戦闘経験が無いと自白している。大体なんで直線の道の真ん中で座り込んでるんだろ?会釈してさっさと進む。

「無視すんなヨー。手取り足取り教えるヨー?」

「この先やばいってぇ。ベテランの言う事聞いた方いいてぇ」

「お姉ちゃん!そんなのより俺達の方がずっと上手いぜ!」

「やられそうになったらお姉ちゃんだけは助けてやるヨー」

聞き流しながら進むと敵が表れた。


緑小鬼LV03


懐かしい奴だと思いながら斬り殺す。以前よりも上達したせいか、血をまったく出さずに絶命させた。やればできるものだ。

「ヤバイと言っていたが、このくらいの敵がか?」

「御主人様はお強いのです。あの連中は弱すぎですが。いわゆる地舐めですね」

「地面なんて美味しくないよ~」

「迷宮に長く座り、地面を磨くと言うことです。」

「?よくわかんないよー」

可愛い。今まではバカ女なんて…と思っていたが、悪くない、むしろ良い。

「そういえば、クーちゃんはなんで変身するの?」

「そのことは外では言わないでください。危難を避けるためです」

「解った。神に誓う。もう言わない」

「神…?」

怪訝な顔をしている。何でだろ?また前方から敵が表れた。しかしシンプルなダンジョンだ。入り口から出口迄見通せる…30階あるというから階段だろうか。後ろを見るとさっきの5人組が新しく来た5人組の邪魔になっている。


動く死体(ゾンビ)LV01


「ヘル、試しに攻撃してみるといい。できるか?」

「うん、やってみる。」


『烈火をはらんだつむじ風が襲来する』


燃える赤い風が灰色の人間大の魔物に接近する。ゾンビは3m程吹き飛び火傷を負いながらも生きている。顔色は悪いがタフなやつである。再びヘルが呪文を唱える。


『大風が襲来すれば炎は二倍になる』


青い風が出現し、ゾンビの体表の残り火の勢いを激しくし、灰色の魔物は松明の様に燃え盛って崩れ落ちた。アイテムは取れるのだろうか?


動く死体の死体358/360


死体の死体…?

「よくやった、ヘル。初手柄だな」

「フフゥーん!すごいでしょ」

「しかし生き物を殺すのには抵抗は無いのか?」

まぁ動く死体だったが

「うーん…なんか魔物?って息をして無いって言うか?なんて言うのかな?」

「まぁ問題が無いならいい事だ。クーと共に頼りにしているぞ」

「お任せください御主人様」

「頼りにしてるよ、クーちゃん!」

いやお前も頑張れよ。

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