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奴隷の初恋

黄土色の巨人の足元に潜り込む。左足を横薙ぎに切る。剣がガタガタいう、後一撃で壊れそうだと思いつつ返しの刃でもう一撃加える。真ん中から折れた。ヒドイ。モロイ。

巨人は俺に細い手で攻撃してくるが、俺は壁際に居たので巨人の手は壁に激突する。やっぱり狭い道で戦うにはこいつはでか過ぎる。俺にとっては有り難いが。やっぱり引越しした方がいいぞお前。

残った柄を投げ捨てて、袋から先ほど入手した斧を取り出す。その間もクーは投石を続けるが、俺には石の破片さえ当たらない。身も軽く判断力に優れている。本当に優秀だ。なのに奴隷以外の道が無いのは、この世界も理不尽な世界だと思う。斧を用いて再び左足を攻撃する。かなり削れてきた。黄土色の岩がはがれ中からピンク色の岩が露出する。再び俺に細い手で攻撃してくる。さっきとは位置が違うので、このままでは当たると考え、大きくバックステップしてよける。巨人の足はちぎれ、倒れこむ。体全体が崩れ落ちる。仮想視界で確認する。


岩巨人の死体3599/3600


どうやら死んだようだ。数字がザコよりでかい気がする。実はボスだったのか?多分この数字は死体が消えるまでの時間なんだろか?クーに聞くと、クーは死物は世界に還ると言った。死体をつつくと、死体が縮んで箱と黄色の柱が表れた。穴クマを倒した時はダンジョンの文字に触れて同様の宝が出たが。ここは少し違うらしい。


魔岩の箱(イブン・ボックス)

長男の刀(イブン・セイフ)

14万900ナル


金・銀貨と鞘付きの剣が一本だけ入っている。剣はアラブっぽい感じだ。三日月刀と言う奴か。片刃の湾曲した刀だ。宝具なんだろうか?ちょうど斧もボロボロになったので、ちょうどいい。しかし袋に金貨が全部入らない。箱ごと持っていこうかと思ったが、穴熊の箱と違い地面と癒着している。そういやあの箱どうしたっけ?袋には入っていないからバーバ家に忘れてしまったのだろうか?箱も宝具だとすると御礼はしていたのか?しかしアイテムボックスがいっぱいなのは困る。いらないものは捨てちまおうか。そう思い、この世界に来た時に着ていたワイシャツとズボンを捨てる。目立つだけの服などもはや要らない。郷に入っては郷に従う。財布も免許ももう要らない。福沢なんてもう必要ねぇ!ファック学問のススメ!ちょっと決心がいる。そろそろ覚悟を決める時だ。服と財布などを一箇所にまとめ、銀貨を用いて頭に浮かんだ共通呪文を唱える。


ファイア


銀貨は猛火へと変じる。かつて地球の日本に住んでいた男の痕跡が火炎と共に消えていく。火が燃え尽きる。灰さえ残さず完全に焼失した。…故郷には本当に帰れないのだろうか?そもそもこの世界はなんなんだ?俺以外の2人はここと似たゲームのプレイヤーだったようだ。しかし俺は違う。男であることと日本人であることしか共通項は無い。カラミが手に入れられなかったものを見つければ、あるいは何か分かるだろうか。しかし今重要なのは現状確認だ。


「この剣が宝具なのか分かるか?」

「知りません。分かりません」

断言した。しょうがないので壁に叩きつける。刃こぼれさえしない。我ながら乱暴だ。宝具らしい。そういや泥沼の長剣の刃と柄が消えている。消滅したのか?


「アイテムボックスに入らない分の荷物は持ちます。帰還の柱が表れましたね。まさかこんなに速く攻略できるとは流石です」

残った金貨を10枚ほど渡す。ズボンのポケットに入れるようだ。…スカートを履かせてみたい。

「これで攻略したのか?一本道だったし、そう強いのもいなかった。この道の先は無いのか」

「ありません」

言い切るな~竹を割ったような性格だ。しかも利発で美しく聡明だ。出会えたことをこの世界の神に感謝しよう。どんな奴かも知らないが。


「しかしダンジョンって皆一本道なのか?前のもそうだったがあと酸素や道の無いダンジョンとかのやばいのは無いのか?」

あったら困るが。まあ人間の造ったものだそうだから、あまり無茶なのは無いのか?

「迷宮も息をします。入り口から出口までを一本の紐が張り、それが切れた場合はダンジョンの機能が無くなるとお考えください。道の途中を何かで塞いでも迷宮が溶かします」

ふむふむ迷宮の紐ね。出口が無いってことは無さそうだ。


「常に一本道でもありません。ここは弱い者が来るため、一本道です。弱い迷宮はそうした傾向があります。御主人様には物足りませんでしたが」

「いや、一歩一歩進むとしよう。急ぐことも無い」

実際レベル上げは重要だ。しかしここはどういう作法なんだ?偶然勝てたからいい物をもっと危険なダンジョンなら出れなくなり死んでいた。作法についてもっと知るべきだと思う。

「作法を整えると出れなくなるのか?」

村のダンジョンもそうだった。紐の概念と同じく共通の仕組みなんだろうか?

「違います。迷宮の作法は様々です。帝都の修羅の道(シュラド)は作法が広く知られている迷宮ですが、入り口から出ることも出来ます」

「なるほど。クーは賢いな、お前に会えてよかったよ」

「私もです。御主人様はレィベリとやらで強さが分かるのですか?」

未亡人もそうだが発音がなんか違う。まぁ和製英語見たいな物だから外国人が聞いても同じ反応するだろうか。


「目安として少し分かるだけだ。細かい筋力《STR》とか知力《INT》は分からん」

「…私はこの迷宮に入った時よりもわずかでも強くなっているのでしょうか?教えてください」

珍しく歯切れが悪い言い方だ。試しに奴隷のところから視る。…0のままだ。例のローマ字のEXPもダブル0だ。

「強さとは相対的なものだから、俺の見たレベルが絶対の物じゃないぞ?」

「…やはり強くなっていないのですね」

しょげちゃった。いつも強気なだけにこうした姿も保護欲をかきたてさせる。

「俺の見たところでは神狼依り代のレベルは上がっていないが、自覚があるのか?」

「…私は産まれた時から強く。村のために働いていました。村人も感謝していましたが、ある日自分の強さが成長していないことに気が付きました。それからまもなく売られたのです」

「それは村人が悪い。クーに落ち度は無い」

「しかし…」

「俺はそう決めた。しょげてるところは似合わないぞ?大丈夫だ。もっと強くしてやる。俺を信じろ」

実際セカンドジョブを使えるならもっと強くなるだろう。セカンドが駄目でも他のを伸ばすだけだ。レベルを100にすれば多分旅人でも強いだろう。それにサムライ・パワーを使えば剣術は教えることが出来るだろう。クーは俺を潤んだ濃蒼の目で上目遣いで見つめ、抱き付いてきた。


「御主人様…御主人様にお会い出来て良かった」

「そうか、おれもヨカッタ」

緊張して片言になっている。ぎゅっと抱きしめると、いつまでも抱き付いていたくなるほどやわらかく暖かい。しかしここには時間制限があり、いつまでもいるわけには行かない。


「さてでは宿に戻るか」

「御主人様ならば今日中にもうひとつ位迷宮を攻略出来ますが?」

「俺の目はごまかせんぞ。クーは少し疲労している。まぁ少し休めば大丈夫だろうが。今日はもうやめだ。死んでは元も子もない。金も稼いだし、お前を強くする方法も考えないといかんしな」

しかしなんで俺はあんまり疲労していないんだろうか?体はまるで疲労していない。サムライ・パワーだろうか?袋からバーバ家で貰った布を使って互いの汚れを拭く。何でも迷宮を出るとすぐに町なので血や泥を付けたままでは拙いという判断だ。

二人で一緒に黄色の柱に触れる。やっぱり『出』と書いてある。クーは文字など見えないそうだ。やはり人間にしか見えないのか?いやそもそもステータスが見えるのも変だ。やはり『はじまりの男』は地球人でこの世界に何らかの仕掛けを行ったのだろうか?調べる事がまた増えた。あとでメモしておこう。

迷宮の外に出る。しかし行列で前と後ろに並んで居た奴等は俺がいなくて不審に思わなかっただろうか?作法を整えた迷宮には新しい侵入者はいなかった。作法はそこまで知られていないのか?ギルドが秘密にしているのか?商売上の秘密を知られたとギルドが討伐に来るんだろうか?そもそもこのダンジョンの作法なんて知らないが。たまたま…いやもしや精霊の鍵のおかげだろうか?謎がどんどん増える。

カラミやトップランカーは既プレイだったからいいものを…いやカラミは攻略情報は役に立たないといったし、トップランカーはすぐ死んだ。この世界はゲームかもしれないが、アップデートはされているらしい。

いつの間にかクーは例の不細工な子供に変身している。俺の左手を握ってくる。柔らかい…だが俺は不細工な子供の手を握るホモに見られているのだろうか?せめて保護者に見られたい。

「とりあえず買い物にでも行くか、クーも俺も一張羅しか無いからな」

そう言うと、緑の髪の痩せた青年商人が寄ってきた。


名前─サク─男

天職─行商人

設定─悪行値7/108


「迷宮攻略お疲れ様でございます。ご入用の物がございますか?」

「服あるか?」

「もちろんです。迷宮で服が破れる方はおおぅございます」

「女物もあるか?プレゼントしたいのでね」

「もちろんです。トーガにスカート・チュニック何でも取り揃えております。店はすぐそこですがどうされます?」


頷くと案内され、黄色の壁をした店に到着する。商人はみんな黄色いが好きなのか?看板には『サット雑貨』と書いてある。自分の店ではないのか?危うく口に出そうとするが、そういえば普通の人間は名前を見ただけでは分からない。これから仮想視界を使う時は名前を視ないようにしないと。しかし気合を入れて悪行値を視て、なおかつ気を張らなくても視える名前だけ視ないのは、結構面倒くさい。使わなければいいだけなのだが、便利な物はいまさら手放せない。


「ではサットさん。この方達は服が欲しいそうです。女物もプレゼントしたいそうです」

では、と言って去っていく。どうやらあいつは迷宮を出てきて金を持っている人間を行きたい店に案内するのを商売にしているらしい。いろんな商売があるな~サットさんの悪行は0だ。ボッタクリでは無さそうだ。服や食品が置いてある。どうせなら服屋に連れてくればいいものを。

服を何着か見繕う。クーに女物を選ばせるが、ズボンと普通の上着を選ぶ。動きやすそうだが。いいのか?まぁクーは化粧っけもないが素で美人だ。問題ないんだろう。ついでにおやつを選んだ。なんだか分からんが赤いせんべい状の半液体の物体とポテチップスにみえる物を選んだ。お菓子は300円まで。お菓子は制約の中から選ぶのが楽しいのだ。服を上下一式3着とお菓子の袋詰めで銀貨3枚である。ここで着替えようかとも思ったが、アイテムボックスの容量はほぼいっぱいだ。鎧を持って移動したくはない。

雑貨屋を出て菓子を食いながら宿に向かう。赤いほうは意外と渋い味だ。ポテチっぽい物は干し芋みたいな感触だ、結構甘い。フルフェイスヘルム状態で食いながら歩き、宿に到着する。亭主は宿代は今日までだからまだ泊まりたいんなら、明日また金払ってくれと言われる。さてどうしようか、と言いながら飯の金を払って部屋にはいる。全身の防具をクーにも手伝ってもらって脱ぐ。結構歪んでいたので、少し乱暴に脱ぐ。いつのまにかクーは変化をといている。


「お疲れ様です。御主人様。今日の収入は木っ端探索者が10年迷宮に潜っても得られないものです」

「俺一人なら無理だったよ。クーが居たからこそ魔物を素早く察知し素早く攻撃できた」

実際本音だ。俺一人ならばバックアタックを喰らっていたかも知れない。クーはなぜか脱いだ。ハダカ。綺麗だ。美乳だ。無駄な脂肪が一切無いが程よく筋肉が付いており。痩せぎすでなく健康的だ。蒼銀の髪と狼の耳が彼女は地球ではありえない美しさだということを思い出させる。


「御主人様に抱いて欲しいです」

「美しいな…これまで見たものの中で一番美しい。いいのか?」

「御主人様が迷宮で振るったお力を視ました。貴方こそ運命の人です」

「俺が拒んだらどうする?」

「いじわる…」

「嘘だ。我慢できん。抱くぞ」


服を脱ぎ、ベッドに急行する。なんだか上手く乗せられたような気もする。俺の態度は分かりやすいようだしな。この世界の人間との間で子供が生まれることは、カラミが証明した。もっとも自分の子供かどうかなど、女にしか分からないが。そんなことはどうでもいいとばかりに、クーの体を貪った。…どちらが獣人か分かったもんじゃない。

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