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笠原みどりの章_2-4

 さて、所変わって教室。


 風のせいで少し髪がボサボサになってるみどりは教室中央の自分の席に座ると、そこで要注意人物の上井草まつりと雑談を開始。幼馴染ということで、それなりに仲が良いらしい。俺も窓際最後尾の自分の席に鞄を置いた。


 と、そこに、


「おはよう、達矢くん」


「おお、志夏。おはよう」


 級長の伊勢崎志夏が現れた。


 志夏は現れるなり小声で、


「…………気になる?」


「え?」


「笠原さんと上井草さん」


「ん、ああ。まぁな」


 この街で生まれた人ってのが、どんな人間なのかってのは、確かに気になるところではある。


「もしかして、志夏も、この街で生まれた感じか?」


「うーん。微妙なところね」


「生まれたところ、わからないのか?」


「いや、わかるわよ。鮮明に。でも、それは、言えない」


「謎の女だな」


「そういうことになるわね」


 フッと軽く笑った。


 何か、この方のキャラがイマイチ掴めないんだが。風みたいに掴み所が無いというか。


 と、その時、みどりが上井草まつりを置いて廊下へ出て行くのが見えた。


「気になる?」


「そりゃな」


「好きなの?」


「……え? 何て?」


「好きなの? 二人のうち、どっちか」


「な、何言ってんだ、急に。まだ出会って二日目だぞ!」


「人を好きになるのに、期間は問題じゃないわ」


「まぁ、そりゃそうだとは思うが……」


「好きなら、ガンガンいきなさい! それじゃ、また後でね」


「あぁ、はい」


 言いたいことだけ言って、志夏は去って行った。


 視線は志夏を追って、教室中央へ。


 その時、奥に居た上井草まつりが不意に走り出し、俺の目は動くものに反応して、まつりを目で追った。


 その先に居たのは、教室後方の扉から入ってきた笠原みどりだった。


 風で乱れた髪を整えていたらしい。


 そして、まつりは、その整えたばかりのみどりの髪を両手を使ってばっさばっさと乱暴に何度もまくり上げていた。


「モイスト! モイスト!」


 謎の奇声を発しながら。


 なるほど、突き抜けるほど問題児だ。


 何してんだ、あれ……。


 二人は、幼馴染だし、仲が良いかと思ったんだが、やっぱそうでもないのかもしれない。


「や、やめてよまつりちゃん。痛い、いたいってば」


 嫌がっている。当然だ。


「モイスト! モイスト!」


 ばっさ、ばっさ。


 しかし、クラスの皆は、見て見ぬフリだ。


 ひどいことだぜ。


 ここは、俺が動くしかない。


 昨日、みどりが父親に叱られていた。そのきっかけを作ったのは、俺だ。だから、そのお詫びとして、今、今、みどりを助けようじゃないか!


 俺はみどりに接近した。良い香りがした。みどりの髪の匂いだ。


 俺は、まつりの背後から、まつりの両腕を掴んだ。


「モイスト! モイ――」


 ガシ、と。


「おい」


「へ?」


「やめろ。嫌がってるじゃないか」


 その瞬間。教室に尋常じゃないざわめき。悲鳴交じりの。


「はぁ?」


 俺は、まつりの手を離すと、こんどは涙目のみどりの手を握る。そして引き寄せ、みどりを庇うように前に出た。


「え……」


 握った手を離す。


「達矢……だったっけ?」


「そうだ。戸部達矢だ。上井草まつり」


「何の用? 突然うしろから腕掴んで」


「みどりをイジメるな」


「は? 別にイジメてなんてないよね、みどり」


「えっと……その……」


 はっきりイジメられていると言えないのか。これは、あれか。それほどまでにひどいイジメということだろう。


「痛がってただろうが。それに気付かず攻撃してたら、イジメなんだよ!」


 俺は言ってやった。


「何だい、偉そうに」


「とにかく、みどりは俺の恩人だ。だから、変なことするな」


 上井草まつりは俺をにらみつけながら、その長身に似合うようなアルトボイスで、


「……風紀委員に逆らうの?」


「俺は遅刻をして悪びれないような奴を風紀委員とは認めないぜ」


「あ、あの……二人とも……やめ――」


「みどりは黙っててくれ」「みどりは黙ってろ」


 俺とまつりは同時に言った。


「ぁぅ……」


 必要とあらば、みどりを守るために、何とかこのまつりとかいう女を懲らしめねばならないかもしれん。


 時に、男と女を越えた「悪」という特殊性別が存在することがあって、その場合は追い出すために暴力もやむなしだ。ほら、座禅で煩悩を祓うためにバチーンって棒で叩かれることがあるのと同じように……そう、喝を入れてやると考えてもらえば良い。


「良い度胸ね」


「そうだな。弱いものイジメに興じる女よりは、度胸があるつもりだぜ」


「……覚悟、しときなさいよ」


「何をだ」


「風紀委員の恐ろしさ、思い知らせてあげる」


「へぇ、そいつは楽しみだ」


 剣呑な雰囲気の中、チャイムが鳴り、それを合図にするように志夏が介入する。


「はい、二人ともそこまで。授業よ、授業」


 するとまつりは拳を収め、


「フッ、後で、『ハナシアイ』しましょ」


 ニヤリ魔女のように笑いながら言うと、廊下側の自分の席に向かった。


「大丈夫か? みどり」


「……まずいよ、達矢くん」


「え? まずい?」


「まつりちゃんを怒らせるのは……」


 みどりは、まつりの方をチラチラと見ながら不安そうにしていた。そして、「ほら、お前ら、席つけ、席ー」とか言いながら教師がやって来た。




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