上井草まつりの章_7-6
さて、はっきり言って、この学校の昼飯は争奪戦である。
少し遅れると、人気のあるメニューには次々と『SOLD OUT』の文字が躍り、売り切れたメニューの有無をおばちゃんに訊ねれば「おとといきやがれっ!」と罵られる。そう、それはまさに戦場。しかし、すでに戦場は閑散としていた。戦は終わっていたのだ。
そもそも、校則という縛りが極薄なこの学校において、昼休みに昼飯を購入するというのがそもそもの愚なのだ。午前の授業中に昼食を済ませる不良が大半で、昼休みに昼食を買いに行く真面目な生徒は飢えるという、どうかと思う仕組みになってるのだ。
当然、食堂の食券売り場は全メニュー売り切れ。そして、併設されたパン屋に残っていたのは、ただパンの味がする以外に何の味もない食パンくらいのものだ。
「仕方ないよな。無かったんだから」
俺は不味いと評判の食パンを一斤買って教室へ戻った。
教室に戻ると、窓際の席に、皆が居た。
まつり。みどり。志夏。風間史紘……の四人。
「ただいま」
「おふぉいっ!」
遅い、と言いたいのだろう。口に食べ物を入れてもぐもぐしたまま、まつりは言った。俺に買いに行かせておいて、自分は何か食ってやがる。
「お前が遅いせいで、ついついみどりとフミーンの弁当食っちゃっただろ。謝れよ!」
「ごめんなさい」
逆らっても意味がないので素直に謝る。
「あたしに謝ってどうすんのよ! みどりとフミーンに謝れ!」
この女。
「ごめんなさい、二人とも」
二人は、「はぁ……」とか「まぁ……」とか呟いた。
「で、何を買って来たんだ、達矢」
「これ、味のない食パン」
「うわ、まずいやつじゃん」
「これしか残ってなかったんだ。俺だって走ったさ。まつりのために。でも、着いた時にはもう戦いは終わってた……。あとのまつりだったんだ!」
「ダジャレかこの野郎ぉおおお!」
どかーーーーん!
「ダジャレだいすきィーーーー!」
ドサッ。すぐに立ち上がる。
何か色んなところから血が噴き出したりしてるが、まぁこんなものは二秒で止まる。今の俺は神の加護を受けているかのように不死身だから。
「だが、まつり。さすがに痛い」
「うるさい。罰として昼飯抜きだ! 何か食ったらぶっ殺すからな!」
物騒すぎっ! 何この子っ!