表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/579

上井草まつりの章_7-2

 寮を出てすぐに商店街に差し掛かった。


 通学路をまつりと二人で歩く。何故か腕組を強要してきた。


 だがこれは「殺すよ?」と脅迫されての愛の無い腕組である。泣きたい気分でいっぱいだ。


 それにしても……さっきの朝食はひどかった。


 美味しくなかった。


 人の多い食堂だったのに、俺とまつりが食堂に入った途端に急にガラガラになって、お通夜みたいに静まり返った。そんな中で食事をするのが、まず一つ目の美味しくないポイント。そして、食事中にぶん殴られたのが二つ目の美味しくないポイント。最後に、メインディッシュの焼き鮭を奪われたのが三つ目の美味しくないポイント。俺が毎朝楽しみにしているステキ朝ごはんタイムが台無しだった。


 しかも朝食後には、生着替えをまじまじと見つめられ、挙句、その時言った言葉が「キズだらけの汚い体ね」だった時には、もうモイストしてやろうかと思ったよ。


 誰のせいでキズだらけになってるかを考えて喋れと言いたい。


 いや、大半俺のせいなんだけどね。俺が変なことしたり言ったりしなけりゃまつりにぶっ飛ばされることもないわけだからな。


 で、通学路。


 みどりの家の前を通る。


 心なしか、まつりが俺の腕を抱きしめる力が強まった気がした。


 それはもう、肘が曲がってはいけない方向に曲がるくらいに。


「いたたたた!」


「おー、ソーリーサー」


 言って、一瞬離れて敬礼し、また腕に抱きついてきた。


 そういえば、朝にまつりが言っていたアレは、どういう意味なんだろうな。


『一緒に住むって言っても、どうせ少しの間だけなんだから』


 すぐに出て行くって意味だろうか。訊いてみるか。


「なぁ、まつり」


「何だよバカ野郎」


 いきなり暴言かよ。何この情緒不安定娘。まぁでも、もはや気にするべきことでもないか。慣れたし。


「なぁ、まつり。質問していいか?」


「セクハラしたら殺すぞ」


 そんなことを言われたらセクハラしたくなるだろうが!


「ねぇねぇまつりちゃん。昨日のことだけど、何でパンツ紫色だったの?」


「しねぇええ!」


 ばこーーーん!


「ヴァイオレーット!」


 紫色を意識した言葉を叫びながら、俺は空を飛んだ。


 ドサッ。すぐに立ち上がる。


「違うんだ。今のナシだ」


「そう。じゃあ何?」


 さらっとしてる。これはある意味長所だな。うん。


 気を取り直して、本題だ。


「今朝言ってたけど――」


「浮気をするかしないかって話ね」


「ちがうよ」


「違うのかぁ!」


 どかーーーん!


「ないわぁー!」


 俺は吹き飛びながら叫んだ。


 ドサッ。で、立ち上がる。


「さすがに今のは何で殴られたんだか――」


「口答えするなぁ!」


 ずごーーーん!


 ドサッ。立ち上がる。


「頼むから会話をしてくれ」


「拳で語っとるんじゃぁああ!」


 どごーーーーん!


「この鬼嫁がぁああ……」


「誰が鬼だぁああ!」


 ばこーーーん!


 ドサッ。


 いかん……これは体が……もたない……。


 ゆっくりと立ち上がる。そして言う。


「別れよう」


「誰が別れるかぁ!」


 まつりは言うと、ジャンプして、落ち際に俺に蹴りを見舞った。


「カカトォ?」


 ゴスン!


 顔面にカカト。


 ここに来て新技っ! 痛いっ!


「別れないと言え!」


「ワカレマセン」


 言わされた。


「ようし、それでは、本題に入ろうか」


「もう何を訊きたかったんだか忘れたよ」


倦怠期(けんたいき)かこの野郎ぉおお!」


 どかーーーーん!


「もうゆるしてー」


 ドサッ。


 朝から大変だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ