上井草まつりの章_6-6
教室。まだ自習時間中の教室で、笠原みどりが待っていた。
学校に戻った頃には、まつりの涙も止まっていて、いつも通りのまつりが戻って来たように見えた。
「みどり、ごめんね。心配かけて。あたしもう、大丈夫だから」
「まつりちゃん……」
見つめ合ってる。
うんうん。微笑ましい場面だ。俺は頷きながら二人のやりとりを見ていた。
「ごめんね、今まで、モイストして」
「あたしは平気だけど、その……大丈夫?」
「うん。これからは、達矢をいじめるから」
「そっか……」
「だから、もう大丈夫」
言って笑った。いつもとは違う、吹っ切れたようなあの笑顔で。そして更に続けて言うのだ。
「達矢と結婚するから」
一瞬だったのか、とても長い時間だったかは定かでないが、教室内の時間が止まった。絶対に止まったと思った。
俺とみどりは叫ぶ。
「「え、ええええええ!」」
クラス中も「「「えええええええええええっ!」」」と叫んだ。
結婚? 何それっ! どういうことっ!
「な?」とまつりは言って、俺の手を痛いくらいに強く掴んだ。その上で、らしくない潤んだ瞳で見つめてくる。
何これ……どういうこと……。