上井草まつりの章_6-3
チャイムが鳴って、授業が終わった。休み時間の開始である。
「戸部くん」
そして、休み時間になってすぐにみどりが駆け寄ってきた。
俺は立ち上がった。
「よう、エクスカリバーじゃねえか」
「聖剣かよっ」ぽすん。
意味のわからないボケに、お約束のツッコミを入れてくれた。
このやり取り自体、意味がわからないが。
「って、そんなことよりも、大丈夫? 天井に刺さって生きてるとか、戸部くんおかしいよ」
「俺じゃなくてまつりがおかしいって言ってくれ」
「戸部くん……さっきさ……まつりちゃんさ……」
「ん? まつりがどうした」
「戸部くんのこと『殺す殺す』ってブツブツ言ってたから気をつけてね」
「大丈夫だ。あいつに俺は殺せない」
なぜなら今の俺は規格外に丈夫だからだ。
たぶん、西洋風のソードに刺されても生きていられるし、和風のカタナに斬られても生きていられるだろう。そういう何か神聖な何かの加護を感じる。
「ところで、みどり。もしかして、さっきさ……」
「何ですか」
「まつり、泣いてたか?」
「…………はい」
他人にひどいことをしておいて、自分がされると泣くとか、どんだけ面倒な女だよ。
「わけわかめライスだぜ」
「どんなわかめですか」ぽすん。
手の甲で撫でるように叩かれるのがもう快楽。みどりのツッコミは可愛い。でもたまに少しズレてるかもしれない。どっちかと言うと、どんなライスなのかの方が気になるところだろう。
けどまぁ、何ていうかな……とにかく、ツッコミになってくれなくても、まつりにモイストされないようにしてやりたいな。と思った。
「みどり」
「はい?」
「俺は、まつりに勝つぞ」
「はぁ……」
「俺が風紀委員になってやっても良い。それどころか、生徒会長になって風紀委員という権利を剥奪し、排除しても良い」
「え……あっ、政権交代かよっ」ぽすん。
思いついた顔で、みどりはツッコミを入れてきた。
いや、ボケじゃなくてマジで言ってるんだがな。
「みどり、お前をモイストの恐怖から救ってやる!」
「まぁ、それはうれしいけど。でも、あんまり、やりすぎないようにね」
「おう」
そしてみどりは軽く手を振り、去って行った。