超能力暴走バトル編_41
穂高華江は、中庭にて消火された。
中庭の端に設置された水道から伸びたホース。ノズルを持って花壇に放水するがごとく華江に水を浴びせているのは、息子の穂高秀雄であった。秀雄は若山と共にもしも学園が火事になった時に備えて大量のホースと水を用意してすぐさま消火に向かえるように準備していたのだ。
「大丈夫? かぁちゃん」
制服は、あわれ焼けてボロボロ。焦げて黒ずんだ部分や、肌が見えてしまっている部分まで。華江は、一部に火傷を負っていた。今は、消火され、軽度の火傷を負っていると判断した秀雄によって体に冷水をかけられ続けている。
華江は顔を上げ、前髪を鬱陶しいとでも言いたげに整え、
「大丈夫なように見えるかい?」
「い、いや」
「救急箱、もってきな」
その命令に反応したのは、ショッピングセンター店長、いつも湖で釣りに興じて暇つぶしをしている自称エリートの若山であった。
「お、じゃあ、おれが保健室に行って取ってくるぜ。ボウズ、保健室てのは何処だ?」
秀雄が場所を伝えると、若山は服を脱いで華江の肩にかけてやり、後、急いで校舎内に走っていった。高そうな服に、ホースからの水が掛かる。
華江は唐突に呟く。
「なんか、あたしは幸せだねぇ……」
しみじみと。
体当たり仕掛けてくる娘がいて、水ぶっかけてくれる息子がいて、救急箱を取りに行ってくれる友人が居る。それだけで、とても幸せだと思ったようだ。
その時、幸せそうなのに嫉妬したのか何なのか、テントから歩み出た生徒会長はこう言った。
「羨ましい限りね。私には、私のために真剣になって動いてくれる人なんて居ないから、本当に羨ましい」
しかし華江は鼻で笑い、
「見えてないねぇ、会長さん。皆、あんたのこと好きだから、守ろうとしてんだろ」
「そうかしら」
「信じなよ。自分の学校の生徒たちだろ」
志夏は黙って、校舎四階を見上げた。