超能力暴走バトル編_39
その頃、Dくんとの恋が、思わぬ形で終焉を遂げてしまった穂高緒里絵は、愚痴っていた。
理科室。
抱えた枕を腕でいじくりつつベッドに座る紗夜子と、机の上に座って足をぶらつかせている緒里絵。
「まなちゃん。ありえないことが起きたにゃん」
「何なの、さっきから?」
「ありえないことだにゃん」
「だから何」
「ありえないんだ……にゃん」
悲しそうだった。
しかし紗夜子は冷静に、
「カオリ、さっきからありえないばっか言っててウザい」
バッサリと。
「うむにゅん……」
「聞いてあげるから、さっさと言ってよ」
そして、ようやく語り出す。
「実はね、さっきね、おかーさんに刀を取り上げられた後ね」
「うんうん」
「保健室にでも行って、ここの、すりむいた膝にね、薬でも塗ろうと思ったんだけどね」
「それで?」
「そしたらね、その途中の階段のとこでDくんが……」
「いとしのDくんが?」
「Dくんが、まつり姐さんと……手を……繋いでた……」
「あらら」
「まなちゃん、反応うすくない? あたしのこと考えてくれてる?」
「うんうん、それで?」
「そしたらね、姐さんさ、『やば、みつかった』とか言ったから、どういうことなのかって問い詰めたらね、なんか、手を繋ぎながら『ごめんカオリ。付き合うことになった』とかって」
「あー、そうなんだ」
「もうさ、言葉失ったんだよね。涙も出てきてさ、そしたらDくんが、こう言ったの。『穂高緒里絵さんには、オレなんてもったいないっす。緒里絵さん可愛いんで、きっと別に素敵な人が見つかるっす』とかって」
なお、その後緒里絵は泣いて逃げ出し、緒里絵を泣かせたという理由でDは殴られ蹴られ骨折られ、保健室送りになったという顛末だった。
「うんうん、カオリ可愛いもんね。だいたいの人に可愛がってもらえるよ」
「そういうことじゃなくて。あたしはDくんがよくて……。他の人なんて……」
「たっちーなんてどう?」
「論外。たつにゃんバカだし」
「不良Aって人」
「むきむきこわい」
「じゃあ、サハラ」
「意外と厳しいから苦手」
「風間……なんとかくんとかはどう?」
「あれはまつり姐さんの所有物」
「秀雄」
「いちおう弟だし」
「あ、わたし?」
「うーん……やめとく」
「冗談」
「真顔で言わないでほしいにゃん……」
そして紗夜子は思いついた顔で、こう言った。
「あ、ショッピングセンターの店長さんとかいいんじゃない?」
緒里絵はハッとしてポムンと手を叩いた。
「それだにゃん! 店長の若山さん、そこそこ格好いいし、頭いいにゃん!」
「解決したねー」
しかし、緒里絵は俯いた。
「Dくん……」
そう簡単に恋が忘れられたら、苦労しない。
すると紗夜子は座っていた姿勢から仰向けに寝転がる形になり、一つ息を吐いてから言う。
「カオリ、一緒にお昼寝しよっか」
「え。いいにゃん?」
「いいよー。シエスタしよう」
「……じゃあ、甘えさせてもらうにゃん」
緒里絵は机から飛び降り、紗夜子の横に寝転がった。
「枕、ないにゃん?」
「これは、わたしのだから貸さない」
「ひどいにゃん」
泣いた。腕の上で。