上井草まつりの章_6-2
授業が始まった。簡単そうな授業だが、今の俺は、そんな授業にすらついていけない。
なぜなら……天井に突き刺さったままだからだ。
誰も抜いてくれないんだが、どうしたものか……。
「これを、上井草、読んでみろ」
教師の声がした。
下では授業が繰り広げられている。
「ゼスイズザペン!」
もろ訛ってる。超カタコト。
「そう、『This is the pen.』意味は?」
「ここは刑務所です」
何だそれは。これはペンです、で良いだろ。バカじゃないのか、まつり。
「正解」
うっそ……。
「ところで、さっきから気になってたんだが、この天井から生えてる下半身は誰のだ」
すると級長、志夏の声。
「戸部達矢くんです」
「何で刺さってるんだ」
そんな教師の問いに、志夏は呆れたように、
「上井草さんに飛ばされました」
「そうか。じゃあ仕方ないな」
「ってオイィ! 仕方ないって何だ! 抜いてくれよ。何でずっと刺さりっぱなしなんだよ!」
俺は叫んだ。
「……ふぅ」
志夏の声がして。
ズボッ。ドサッ。
俺は久々に教室の空気を吸った。志夏が足を引っ張って引き抜いてくれたらしい。
「ありがとな、志夏」
「どういたしまして」
教室には、まつりの姿もあった。
「おぼえておけよ、まつり」
俺は怒りに満ちていたので、にらみつけながら言ったのだが、
「あぁ?」
にらみ返された。こわい。
「おい戸部くん。とりあえず席につけ」
「は、はい」
俺は、教師に言われた通りにした。