超能力暴走バトル編_17
穂高緒里絵は、坂を下っていた。前のめりに転んで、わきゃっ、とか言って泣きそうになったが、すぐに立ち上がって自宅の前に立った。
学校から程近い、坂の途中の花屋。見た感じ和風の木造建築である。そこが穂高家が生活を営む場である。あまり大きくないようでいて、見た目よりもだいぶ広いし、地下室なんかの充実ぶりも目を見張るものがある穂高家だが、地下は基本的に『緒里絵の立ち入り禁止区域』である。色々と大事なものが置かれていて、うっかり壊されてはたまらないから。
しかし、緒里絵はそこに何度も出入りしており、少なくとも道に迷わない程度には知っている。
緒里絵が向かった一角は、僅かに酒くさかった。
母、華江のワインセラーなんかもあるから、お酒に興味津々の穂高緒里絵十六歳には探検のし甲斐があるというもの。とはいえ、大事にされている瓶や樽を開封したら日本刀持って暴れる母に殺されてしまいかねないので、普段はそこらへんに転がってる飲み干された後のビンから「一滴くらいでてこないかにゃん、一滴ならバレないにゃん」と呟きながら栓を開けたり、傾けたりして遊んでいる。たいてい空っぽだが。
一滴飲んだからといって、どうなるわけでもあるまいが、コッソリ悪いことをしているという感覚がスリルなのだろう。場所が場所なら、うっかり万引き少女にでもなってしまいそうな思考を展開させている緒里絵である。
とにかく、ゴミっぽいお酒のビンを見ると栓をあけたり傾けたりする悪癖があるのだ。そうなると、万引き少女というよりも、ホームレス少女みたいなイメージになってしまうけども。
緒里絵はワインセラーのある階から、さらに地下に潜る。
ゴミ同然のガラクタばかりの場所に出た。
さて、緒里絵がこの場所に来たのには、目的がある。
そう、武器を探しに来たのだ。決してお酒目当てではない。未成年飲酒ダメ絶対。
押入れの中にも武器のようなものが入っている場合があるが、より強そうなものがあるとするならば、このガラクタ地下室である。
緒里絵は記憶を頼りに、武器を探す。
ゴミの山の中から、木製の箱を取り出す。開けてみると、装飾された刀を見つけた。脇差ほどの、短めの日本刀である。華江の部屋にも日本刀が飾ってあるが、実はそれよりも遥かに高価なものだった。
「これだにゃん」
幼い頃に見たキラキラした宝刀。十六になってから見たら、思ったほどのキラキラ感は無かった。しかし、高級そうな青く渋い輝きに満ちているし、龍の彫刻なんかもあしらわれてたり、家紋が踊っていたりして、それはぞんざいな扱いをされていた伝家の宝刀だった。
青と金の装飾が綺麗な鞘から、刀を抜いてみる。
鋼の輝きは褪せていなかった。
緒里絵は、刀をチャキンと鞘にしまいこむと、ふふん、と満足そうに笑って、それを持って学校へと戻る。刃物を手に敵を殲滅するという少年漫画的展開を夢見たのである。
もろ銃刀法違反だけど。