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超能力暴走バトル編_11

 上井草まつり、戸部達矢、笠原みどりの三人は、階段を上がった三階で、明らかな気温の高まりを感じていた。


 それでも長袖制服を脱ごうとしない上井草まつりを不審に思った達矢は無神経にも訊いてみた。


「まつり、お前、何で服脱がないんだ?」


「しねぇ変態!」


 殴り飛ばされた。


「ぐはぁ!」


 まぁ、そりゃそうなるだろう。要するに、服を脱げよと言ったのと何も変わらないから。


 達矢としてはそのつもり皆無でも、誤解であったとしても、受け取る方がセクハラだと受け取った場合、それは残念なことにあまりにもセクハラなのである。


 大の字に寝転がる達矢に向かって、まつりは言う。


「キミは、本当にあれだな、変態だなぁ。この灼熱(しゃくねつ)ぶりだから、独房も大変に暑くなってると思うけど、そこにぶちこんでいいかな」


「まつりちゃん、暑いからってイライラしすぎだよ。今の戸部くんの言葉はね、むしろまつりちゃんの心配をしてのことなんだよ。暑いだろうなって思って、せめて半袖に着替えたらどうだってことなんじゃないかな」


 すると達矢は勢いよく起き上がった。


「そう、そういうこと。さすがみどり。俺の言いたいこと、それだった!」


 しかし、信用できないようで、まつりは別の角度で考える。


「着替えろ? っと、あっ、あたし、もしかして汗くさいか?」


 くさいくさい言われたことが気になっているようで、自分の二の腕のあたりを鼻に近づけたりしていた。


「いやいや違うぞまつり。そういうことじゃない。この状況で長袖は暑そうで、見てるだけで暑苦しいから言っただけだ」


「なんだ、そういうことか」


 ようやく納得したらしかった。


 しかしその後、沈黙が流れた。謝罪が無いのが達矢としては不満だった。


「殴ってしまってゴメンとか言ったらどうだ」


「何だい偉そうに!」


 どごん、と空を飛んだ達矢。


 その時であった。


 紫色のローブで大きな胸を隠し、さらにフードをかぶって顔を隠した女が三人の前に現れた。


 校舎三階廊下にて、紫ローブで顔を隠した背の高い巨乳女、柳瀬那美音との戦いが始まろうとしていた。


「よくここまで辿り着いたわね。アルちゃんは?」


 突然の敵の出現だったが、冷静になれと自分に言い聞かせた達矢は立ち上がりながらこう返す。


「銀髪ロリ少女なら、倒して利奈っちが説教してるぜ」


「へぇ、あのマリナが。説教なんて、そんな偉そうなことできるようになったんだ」


 そんな会話を交わしていたのだが、そこで突然、上井草まつりが殴りかかった。


「てめぇ! さっきはよくも!」


 そう、上井草まつりは、先刻野球拳で勝負して敗北しているのである。


 そりゃ柳瀬那美音とジャンケンしても互角に戦える人間は少ない。何せ那美音は心が読めるのだから。そして心が読める以上、単調なまつりの攻撃など簡単に避けられる。この時も、顔色を変えずにあっさりと拳を受け流してみせた。


 プライドが許さないまつりは、悔しそうに歯を食いしばって、二次攻撃、三次攻撃と繰り出すも、頭突きは避けられ蹴りは掴まれた。


「なんと、あの学内最強を誇る上井草まつりの攻撃が通用しないとは」

 達矢は驚きを隠せなかった。


「強くなったわね、まつり。でも、あたしの方がもっと強くなってるのよ」


「あぁ? 何言ってんだ、誰だてめぇ」


 そして那美音は、まつりの足を手放し、ゆっくりと両手でフードを外す。


「うぇっ? お、おねーちゃん……」


 柳瀬那美音になる前は、上井草那美音だった。つまり、姉妹。


 と、その時だった。


「那美音おねーたま! 加勢しに来ました!」


 利奈が説教してやってるはずのアルファが登場した。


 アルファは、三人に囲まれている那美音を見て、怒りを抱いた。


「いたいけなおねーたまを三人がかりでやっつけようなんて、ひどい!」


 アルファは、ロケットランチャーを構えた。


 二階の女子トイレに隠しておいたロケットランチャー二発目を担いでいた。前のものより巨大だった。それを引きずるようにして持って階段を上ってきて、ここ、三階廊下に辿り着いたのである。


「にげろ、みどり!」

 達矢は叫んだ。


 引き金が引かれた。弾が飛び出した。みどりが悲鳴を上げた。反動でアルファは廊下をゴロゴロ転がって理科室の前で止まった。


「おい達矢! 何でみどりばっか、あたしには逃げろって言わないのか!」


 そんな声の中、ガラスが吹っ飛び、昇降口でのソレよりも圧倒的に威力の高い爆炎や爆風や爆音が生まれた。


 中庭に築かれたテントにもガラスの破片が降ってきて、あやうく風間史紘が死ぬところだった。史紘は、簡単に破壊や爆発が相次ぐ世界を異常だと思いつつ、この町だから有り得ないことは無いとも思ったのだろう。もう諦めの境地に居るような、実に落ち着いた目をしていた。


「まつり様、大丈夫でしょうか……」


 心配していた。



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