超能力暴走バトル編_5
「あたしは明日香に負けたわけじゃない。ていうか、誰にも負けたわけじゃないし。だって紫ローブの変なヤツさ、まるで心が読めるみたいでさ、ジャンケンつよすぎ。ありゃ絶対機械仕掛けだよ。なんかすげースパコンとか積んでるに違いない」
紫ローブの人は、機械仕掛けではなかった。
新しい制服に着替えて戻ってきた上井草まつりは、必死に言い訳を繰り出していたが、真に受けて「大変だったね」なんて言う者は居なかった。
それで気落ちした後、怒りを抱いた上井草まつりは、近場の髪のキレイな笠原みどりと宮島利奈の髪をバサバサッと連続でたくし上げ始めた。
「くらえ、みどり! モイスト! モイスト!」
「きゃっ、やめっ、やめてよ、まつりちゃん、意味わかんないって」
「今度は利奈だ、そらモイスト! モイスト! モイスト!」
「いたいっ、いたたた、まつり、いたい、いたいってまつりっ」
モイストと叫びながら逃げ回る二人を追いかけ、暴れ回っていた。
志夏は呆れる。
「この暑いのに、よく暴れてられるわね……」
「まぁ、そのうち汗だくになって倒れるだろ」
二分も経たないうちに、戸部達矢の言う通りになった。三人、ゼェゼェ言いながら校庭に大の字に倒れることとなった。
町全体の気温で見ても普段より暑い上、中庭は熱を放つ明日香により近い場所であり、志夏の力によって冷房状態が継続されているとはいえ少し動くだけで汗がダラッダラふき出すほどの真夏日くらいの温度はある。
校舎に近付くほど熱は強くなり、校舎内の気温は摂氏四十度を越える。明日香の至近であれば、六十度近くなってしまうのだ。
そんな高熱を抑え込むのは大変な作業であり、志夏としてはさっさと何とかして欲しかった。何とかなるにせよ、どうにもならないにせよ、上井草まつりを含む対明日香部隊にさっさと敵のダンジョンに踏み込んで欲しかった。
そこで志夏は、特別に力を振り絞って倒れる三人に向かって強く送風した。
「はぁー、すずしー」
「生き返るわぁー」
みどりと利奈は言って、仰向けに倒れたまま幸せそうに伸びをした。
まつりは無言で立ち上がり、すっきりした顔して立ち上がる。そして志夏の視線を感じたようで、
「さぁ皆! 敵は学校に居るわ! 踏み込むわよ!」
そう言って歩き出す。
他の皆も、呆れながらもついていった。