超能力暴走バトル編_3
志夏は生徒会長として、説明した。学校のあたりで危険なものがあると。この町に居ると危ないと。もしものことがあってはいけないと多くの生徒を避難させた。町の住人も続々と避難を続けた。
紅野明日香とそれなりに関係が深そうな生徒には紅野明日香の力が暴走したことを伝えた。
「というわけで、紅野明日香が暴走しているから、何とかしてちょうだい」
とまぁ、そんな風に。
その結果、残った者が何人か。
伊勢崎志夏はもちろんのこと、戸部達矢、上井草まつり、笠原みどり、学校から穂高家に避難して来ていた浜中紗夜子、風間史紘、宮島利奈、穂高緒里絵。それと空気を読めるのか読めないのか定かでない何人かの不良生徒や住民が何人か。私服軍人の姿も二人くらい。
志夏は、町自体にエアコンをかける作業によって動きに多くの制約が生まれた。つまり戦えなかった。そのため、何とか明日香を止めて欲しいと達矢とまつりに頼み込んだ形である。
達矢はともかくとして、まつりがついてくるとなれば、みどりや利奈やおりえ、そしてフミーンがついてきて、浜中紗夜子もコッソリついてきたりする。その保護者のうちの何人かは子供が心配だからと町に居残った。
問題は、ここからである。
もしかしたら止めない方が事態が好転するかもしれないと志夏は考えたが、さすがに町全体に灼熱状態が続くのであれば、やがて誰も居なくなり、町は滅んだも同じことになる。暴走は、止めなくてはいけない。
というわけで、町に残った少数の者たちで、いかにして暴走する明日香を止めるかを考えることにした。
ひとまず、冷房のある図書館に集合して今後どうするのかといった話し合いの場を持った後、図書館の守りを穂高緒里絵と浜中紗夜子に任せて精鋭を選抜。その者たちを連れて学校の中庭に前線基地を築くことにした。
達矢と利奈とみどりの三人が、くすんだテントを設営し、志夏が現状の簡単な説明と確認を終えた時、
「でも志夏、何で明日香が暴走してんの?」
上井草まつりは当然とも言える疑問を口にした。
これについては、「あれじゃないの? ジャンケンでずっとあいこだったからとか?」だとか「便秘なんじゃないかな」だとか「あぁ確かに意外と色々溜め込むタイプな気はするよね」だとか「何かにとりつかれたんじゃねぇの」だとか「古代の何かが目覚めたのかもしれません」等々。色々と意見が出たが、全ては推測の域を出ず、確信を持てる理由など見当たらなかった。生徒会長にして神である伊勢崎志夏にも見当がつかなかった。
「つーか、暴走なんて、どうすりゃいいんだよ。止め方とか、わかんのか?」
戸部達矢は志夏に向かって言ったが、そんなもの、わかるわけがない。原因がわからないからこそ止める方法も見当がつかないのだ。しかし、わからないなどとは、なるべく口にしたくない志夏は言う。戸部達矢の眉間を指差しながら、
「それを調査するのも、あなたたちの仕事よ!」
すると、上井草まつりは言うのだ。
「そんじゃ取り敢えず、ぶったおして何で暴走したんだって取り調べっか!」
拳で手の平を叩きながら。
力づくで吐かせるつもりのようだった。