みどりウラシマルート-4
やがて船は港に着いて、俺とみどりは静かな街に降り立った。
「な、何だ……これ……」
「これが……都会……って……?」
ドサッ。
俺の肩に掛けられていた鞄が、寂れた港に落ちた音。
☆
街は廃墟と化していた。
それは、風車の街と変わらないような、いや、それ以上に朽ちている印象を受ける街。
名残はあった。
同じ地名の別の街というわけではなかった。
達矢がかつて都会の街で過ごしていた時間が、はるか過去のものであったかのように、風化した世界が広がっていた。
そこにあるはずの『今』が無い。
竜宮城から戻った浦島太郎が見た世界に居るような、不思議な世界に迷い込んだようだった。
新聞を見つけた。
未来の日付だった。
墓を探して、墓を見つけた。
家族の墓だった。
ずいぶん昔に亡くなってしまったようだった。
時間が流れすぎて、停滞して止まってしまった場所のようだった。
達矢は泣き崩れた。
やっと更生した自分を、その姿を見せたかった。
自慢のガールフレンドも紹介したかった。
でも、遅かった。
何が遅かったのか、わからなかった。
ただ一つ、私が何かを言えるなら、そういう運命だったいうことだけ。
「達矢……」
笠原みどりは、達矢を後ろから抱きしめた。
そして、達矢と一緒に泣いた。




