みどりウラシマルート-2
「――お嬢さんを、ください!」
俺は、笠原商店の前の坂道に膝をついて叫んだ。
「な、なんだと……」
中年の男、笠原父は、驚愕していた。
「みどりさんを、ください!」
俺は更に言った。
「お父ちゃん、そういうことだから」
みどりはそう言った。
「ダメだダメだダメだダメだぁ!」
「何で? あたし、達矢のこと愛してるのに」
「そ、そんなことを突然言われても……」
「お父ちゃんにも、身に覚えがあるんじゃないの? 聞いた話では、駆け落ちしようとしたことがあるらしいじゃん」
「娘よ! 何故それを!」
「だから、これは遺伝なんだよ」
俺は、偉そうにそんなことを言ったみどりに、
「本当にいいのか、みどり」
確認した。
「うん」
深く、強く頷いた。そして、
「お父ちゃん、そういうことで、あたし、達矢と街を出て行くから」
宣言した。
「ダ――」
「ダメなんて言ったら、縁切る!」
「ぬぁっ!? みどり! 何故そんな娘にそだってしまった!」
「お父ちゃんの血を引いちゃったからでしょ!」
「何だってドーター!」
「言葉通りよファーザー!」
「むしろ母親似だがな……」
「何を遠い目して言ってるのよ。とにかくあたしは、行くからね。ばいばい! ほら、行こう、達矢」
「あ、ああ……」
俺は、みどりに手を引かれて、湖方面に歩き出した。




