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みどりウラシマルート-1
※みどりエンディングからの限定的な派生
風が戻った夜の街。
湖のほとり。
風に飛ばされて、ドームを形成していた布たちが西の山に落ちた。
俺は、愛する笠原みどりを強く抱きしめていた。
抱きしめながら、空を見た。
みどりと一緒に、その夜空を。
「…………」
言葉なんか、失った。
光ない街。暗い世界。星明りだけ。
見上げた空には、星がいくつもあった。
流れ星が、いくつも流れていた。
知らなかった。
こんな空が、あるなんて。
星が降って、降って、願い事がいくつも言えてしまえるくらいに……。
「ねぇ、達矢」
「何だ、みどり」
泣いていたはずのみどりは、いつの間にか泣きやんでいた。
「流れ星って、何で流れるの?」
「風でも吹いてんだろ」
俺は答えた。
そして、風を取り戻した街で風車が回り出し、星空は、ボンヤリとしたいつもの濁った空に戻った。
「……みどり」
「何?」
「前にも言ったけどな……」
「…………」
「いつか、一緒に、この街を出ような」
「……うんっ!」
少しずつ光を取り戻していく街を背景に、彼女は、笑っていた。