表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
507/579

風車の町と抜き打ち学力テスト-7

 夜になってしまった。


 強風の中、アスファルトの上を彷徨う。


 明日はテストであるが、そんなものは関係ない。


 俺は、俺は友人が出演する深夜番組を見なくてはならないんだ。


 そのためには、グラウンド十周だって補習だって甘んじて受ける。できれば受けたくはないが、友人に呪われるよりはマシだ。


「テレビ……テレビを見せてくれ……」


 呟いたその時だった。


「お困りのようね」


 背後から、そんな声。


 俺は振り返った。


「志夏か……」


「はぁい、達矢くん。こんばんわ」


 そこに居たのは、生徒会長にして級長の伊勢崎志夏。


 微笑を浮かべながら立っていた。


「志夏、助けてくれ。テレビが見られないんだ!」


「そうねぇ、私はテレビ持ってないから、残念だけど見せてあげることはできないわね」


「そうか……」


「でも、そうねぇ。風間くんのところに行けば、町で一番立派なテレビがあるって聞いたことがあるわ。まあテレビっていうよりもホームシアターだけど」


「ほほう、町一番か。いやでも待て、風間ってのは誰だ」


「風間史紘くんよ」


「あぁ、フミーンのことか。そういやそんな名前だったな。フミーンは、一体どこに居るんだ?」


「あら、知らなかった? 入院しているのよ。南西にある、坂の上の病院の303号室に」


 入院していただと?


「とにかく行ってみるか。情報ありがとな、志夏」


 俺は志夏に背を向けるとフミーンが入院している病院に向かって歩き出した。


「がんばってねー」


 俺は志夏の声を背中で聞いた。





 さて、病院。


 どうやら面会時間は過ぎているようだ。


 照明の多くは落とされ、薄暗い明かりの受付ではナースさんが退屈そうに自分のツメをいじくっていた。


 俺はコソコソと夜の病院をほふく前進する。


 そう、忍び込もうというのだ。


 何故なら、俺にはテレビ禁止令が発令されていて、つまりそう、お尋ね者だからだ。誰にも見つかるわけにはいかない。


 フミーンの病室は何処だろうか。


 303号室と志夏が言っていたから、三階だろうな。


 俺は階段に向かって進み出した。ほふく前進のまま。


 と、その時、


「誰か居るの?」


 ナースさんの声。


 しまった、見つかったか。


 ここは一つ、裏技を繰り出そうではないか。


 相手の気を逸らして、隙を作るのだ。


 俺はポケットに手を突っ込んだ。


 そして、ポケットの中に入っていたゴキ○リの形をしたプラスチックのオモチャ、通称ピージーを掴んだ。


 そして、投げた。


 ピージーはライナー性の軌道を描き、ナースさんの前に落ちた。


「ひぃっ!」


 悲鳴と共に、涙目で体を硬直させた。


 ――よし、この隙にフミーンの部屋へ。


 そう思った時、


「きゃあああああああああ!」


 夜の病院に、響き渡った声。廊下の電気が一斉に点灯した。


 しまったぁ、これでは忍び込むどころではない!


 何と言う失策!


 ひとまず逃げなくてはっ!


 俺は駆け出した。


 が、目の前には、白衣を着た男が!


 がしっ!


 俺は捕まった。医者と思われる男に羽交い絞めにされ動きを奪われた。


「えっ?」


 ゴキ○リに対する悲鳴だったのに、俺が捕まったことに不思議そうな声を出すナースさん。


「不審者め! ここで何をしていた!」


「ち、違うんです、俺はただ……」


「ただ……何だ?」


「病院に忍び込もうとして、プラスチックでできた害虫のオモチャを囮として転がしただけで……」


「逮捕ぉ!」


 俺は医者に捕まった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ