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風車は力強く回転を繰り返し規格外の強風は坂を駆け抜けてゆく  作者: 黒十二色
番外編_理科室の友達と過ごした日々
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理科室の友達と過ごした日々-5

 十二日目。


 初めて会った日の日付から数えて、十ニ日目になった。


 昨日、彼女に「今日で、会って何日目だと思う?」ってきいたら、何て返ってきたと思う?


 なんか、三週間すぎたくらいとか答えてきて、ちょっと時間の感覚ズレすぎだろって思った。


 まぁ、彼女の生活リズムはムチャクチャで、私が行っても眠り続けてて全く起きない日もあって、そんな日々を目の当たりにした私としては、なんつー腐った生活してんだろうって呆れた後で心配になるほどだ。


 些細な心配事なんてどうだっていいくらいって思ってる私でさえそう思うのだから、大変なことデスよこれは。


 あぁ、そういえばちょっと今、過去の日記を見返してみたんだけど、私さ、日記書かなさすぎじゃない?(笑)


 最初の四日だけ書いて、その後七日目しか書かなくて、むしろその間にすっごく面白いことがいっぱいあったのに、何で書いてないかな。ダメな私。


 えいっ、とかって自分の頭をコツンとしてみたけど、一人きりの部屋でそんなことしてるとすっごい虚しくなってくる。


 今日は、ちょっと用事があって、彼女の家(ていうか理科室)には行けなかった。


 まぁ、そうだね。行けたらたぶん、こんな日記なんて書いてないだろうな。


 彼女と居ると楽しくて、遊んだ後も、明日はあれして遊ぼう、これして遊ぼうって考えるだけで楽しくなっちゃって。


 じゃあそういう考えたことを書けばいいんじゃないかとも思えるけれど、それはちょっと違うんだ。書いてしまったら、予定になってしまって日記じゃなくなってしまうんじゃないかって気がするし、書き記すことで楽しみが薄れてしまう気がするんだ。


 まぁそういったわけで、せっかくワクワクしながら行ったのに、彼女が風呂にも入らずに眠りこけたりしてる日には、ものすごい必要以上にガッカリしちゃうのだ。そうするとガッカリしすぎて日記も書けない気分になる。


 この一週間、私は、彼女に色んなものを与えた。


 まぁ私のお古なんだけど、ノートパソコンとかもあげた。


 何で会ったばかりの彼女にそこまでするんだって不思議がる人が世界のどっかには一人か二人くらい居るかもしれないけれど、早い話が、私が遊びたかったからだ。


 彼女は外に出ないくせにインドアな遊びはそんなに好きじゃなかったみたい。だけど、私オススメのありとあらゆる娯楽を与えた。少女漫画とか、パソコンとか、刺繍とか、絵画とか。したら、やってみると案外みんな楽しかったらしくて、すっかりハマッてた。


 そんなこんなで、二人で楽しくネットサーフィンしたり、漫画読んだり、ゲームしたり、刺繍や絵なんか私より明らかに才能あって、すごく器用で精緻で、やることがハンパなくて、びっくりして、ちょっとむかついたけどそれ以上に嬉しかった。


 勝ってるのが胸のサイズと身長くらいで悔しかったけども、何でもできる彼女が誇らしかった。


 私は昔からガサツで乱暴なくせに体が弱くってさ、一緒に遊ぶ相手があんま居なくて、どうしても一人遊びばっかりになっちゃった。きっと彼女もそうなんだろうなんて勝手に決め付けてたけど、彼女の場合は一人遊びすらしなかったのかもしれない。なんか、そのくらい精神に「やみ」を感じた。


 まぁ、こういう日記だから言うけどね、もしかしたらね、もしかしたらだけども、もしかしたら、私が彼女に色々してあげたのは、この町に私が居たっていう確かな足跡を残したかったからかも。


 だから、彼女という特殊な存在と関係を持ちたがったのかもしれない。


 でも、パソコンを与えたのはミスったかなって思う。


 萌えアニメにハマって、一日中、DVD見続けているなんてこともあったし、匿名の掲示板を一日中延々と読み続けているなんてこともあった。パソコンから離れても漫画のまとめ読みが好きで一日中そればっかってのが続いた。


 はっきり言って、こいつ腐ってやがると思うことが何度もあった。でも、その腐り具合はむしろ改善されてる気がした。全く何もしないで部屋の隅を見つめているよりは、面白いことに触れて目を輝かしてるわけだから健全なようにも思えた。だから、私は何も言えなかった。


 まぁ、自ら与えた禁断の木の実を取り上げた時に、彼女に嫌われるのが怖かったっていうのが、口出しできなかった一番の理由なんだけど。


 いや、えっと、うーん。ちょっと違うかな。ちょっと本音言うとね、目を輝かして喜んでる彼女を見るのが、すごく好きだったんだ。そう、好きだった。つーか、好きな子の喜ぶとこ見たいっていうか。うん。そんな感じだ。




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