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風車は力強く回転を繰り返し規格外の強風は坂を駆け抜けてゆく  作者: 黒十二色
番外編_理科室の友達と過ごした日々
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理科室の友達と過ごした日々-2

 二日目!


 独房で一夜を明かした私は、ひどく不味いゴハン食べさせられたけれど、何とか生きてた。


 なお、昨日の日記は独房の中で書いたものだ。暇だったから、それしかやることが無かった。なんか獄中出版する人の気持ちが、わかったような、わかんないような……いや、あんまわかんなかったな。私は、これからこのノートを彼女を観察する日記にしようと思っている。


 さて!


 今日の私の目標は、理科室に入ること。


 風紀委員は、「理科室に近付くんじゃねぇ」みたいな言葉を浴びせてきたけれど、あいにく私はワガママなんだ。そんな他人の命令を聞いてやる心の余裕なんて無いし。


 というわけで、理科室に向かった私だけれど、正面からの突破はどうやら無理だと考えて、逆側からの侵入を試みた。逆側って、要するに窓である。風がびゅうびゅう吹き上げてくる窓である。


 まずは屋上にのぼって、両脇と鉄柵に命綱(笠原商店で買ったロープ)をしっかりと結びつけて、特殊部隊の第一突入班にでもなった気分でちょっとずつ降りていく。そんなことするなんて当然初めてで、すごくドキドキしたなぁ。


 四階の窓を通り過ぎて、三階へ。


 理科室にはカーテンなんて無かったから、彼女の部屋をあらまし覗き見ることができた。


 昨日と同じ黒い服着た彼女は、誰かが戸を開けようとするのを警戒するように地べたに体育座りして廊下へと続く戸を見つめているようだった。あるいは単にボーっと一点を見つめているのかもしれないけど。


 何でそう思ったかって言うと、何だか部屋の雰囲気がとても寂しいものだったからだ。


 どう見ても万年床なベッドくらいしか見るべきものは無く、ただ机が立ち並ぶ殺風景な部屋だった。ベッドがあるってことは、そこで寝泊りしてるってことなんだろうけど、よりによって何で理科室なんて選んだんだろう。


 背中を向けた華奢な体は、何だかとても弱そうで、私よりも弱そうで、何でだかわかんないけど、私はちょっと悲しくなった。


 とにかく私はガラス窓をノックして手でも振ってみることにした。


 と、そんなときに、また風紀委員の邪魔が入った。


「てめぇ、何してやがんだ」


 とか言いながら、ロープを引っ張って私を屋上に引っ張り上げていった。遠ざかる地面、遠ざかる彼女の部屋。伸ばしてみた手は虚しく空を切った。まだノックしてないのに。


 また捕まってしまった。


 薄暗い部屋で風紀委員に二度目の取調べを受けて、「何でこの町に来たのか」って言われたんだけど、なんかビビらせたくて嘘ついちゃった。割とトンでもない犯罪を並べ立ててみたんだけど、「へぇ」って感じで大して驚きもしないで、なんか逆にこっちが焦ったよ。


 嘘だって見破られたのかな。


 風紀委員の人、バカっぽかったけど、案外鋭いのかも。ああいう手合いは鋭いのは目つきだけで頭おかしいって偏見があるんだけど、案外、ね。


 そんで、風紀委員から、「理科室に近付く目的は何か」と問われた時に、私は回答に困って、ちょっと考えてみた。


 何で私が理科室に近付いたかといえば、最初はただ理科室のユーレイってのが何なのか知りたいっていう野次馬的好奇心だったんだけど、二回ほど彼女の姿を見ただけで、その目的が変わっていた。


 あれこれと考えたんだけどね、早い話が、彼女に興味を持ったんだ。理科室のユーレイではない、彼女という一人の人間に。


 そういったことを伝えたらね、不味いゴハンが出されることもなく釈放されたんだけど、結局「あいつに近付いたら殺す」とかって脅してきて、何をそんなに騎士気取りなのかって思ったけど、生返事して寮に帰ったよ。


 もちろん、明日も行くつもりだ。私には怖いものなんて、あんま無いし。



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