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アルファと本の出あい-3

 ある日のことだった。


 噂を耳にした。


「風に聞く超能力部隊の柳瀬那美音が実は二重スパイで、裏切って逃亡したらしい。その際に負傷者が数名出たそうだ」


 アルファにファルファーレという名を与えた情報通の男が言っていた。白人の男だ。


 それを耳にした時、アルファは呟いた。


「あたしも……」


 次の瞬間には手を引っ張られていた。


 その次の瞬間には抱えられていた。膝の裏と背中を持たれて運ばれていた。


 エンジンつきの小船に乗せられ、連れ出された。


 男は、アルファを風車が並ぶ町まで連れて行った。


 一度、北の森へ逃げた後、


「ファルファーレ、一日だけ野宿で我慢するんだ。そう、ここで、この森で。大丈夫、こわい動物とかは出ない。この森に動物はいないんだ。本当にこわいだろうけど、それしかない。朝起きたら、南側にある大きな建物へ行け」


 そんなことを言って、ポケットから取り出した真新しい赤いリボンを彼女の髪につけようと頭に手を伸ばした。プレゼントしようと買ったものだった。


 そんな時だった。


 追っ手が来た。


 無言で迫ってきた。銃を構えていた。何発か撃った。威嚇だった。


 男は逃げた。


「逃げろ!」


 と叫んで自分が逃げた。


 それでアルファは走り出した。


 リボンが地に落ちたのを合図にするように、走り出した。


 何でこんなことになったんだろう、なんて知識ばかりのぼやけた頭で考えた。


 誰のせいだろう。誰のせいでもない気がする。そんなことも思った。


 走った。木枝で手の甲を浅く切った。血は出なかったし痛みは無かったし気づきもしなかった。


 涙が出そうになった。


 泣いてる暇なんて無かった。


 息荒く、何度かふらつきながら駆けた。


 追手は二人も居たが、子供らしい小ささを活かして狭いところへと逃げると、何とか逃げ切れた。破れたフェンスの隙間を、這うようにして通り抜けた。


 少し歩くと、澄み渡る湖のある広場に出た。


 風車が建っていた。


 坂のある方向を見つめてみる。


 坂の上に白い建物があった。その背後には険しい山があった。


 懐かしいと思った。生まれた家があった山に似ていたから。


 でも、そんなことを考えている場合じゃないと思った。


 逃げなくてはいけないと思った。


 走り出した。


 立ち止まったら、捕まってしまう。


 たすけてと、叫びながら逃げていた。


 心が読める女の人に、救ってもらおうと心の中でも叫んだ。


 森を抜けた。湖があった。この湖は、どこに続いているだろうかと思った。


 潜ってみようと考えた。


 いちかばちかだった。


 飛び込んだ。


 泳ぎは苦手だった。


 水の中で目を開けられなかった。


 必死にもがいた。


 白い柱に、頭をぶつけた。





【アルファと本の出あい おわり】



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