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利奈っちの長所をさがす

 笠原商店でばったり会った三人、まつり、みどり、おりえは、世間話に花を咲かせていた。


みどり「ところで、この間マリナに会った時さ」


まつり「利奈に会った? どこで?」


みどり「ショッピングセンターでバッタリ」


おりえ「元気だったのかにゃん?」


みどり「うーん、元気なかったかも」


おりえ「そうなのかにゃん」


みどり「なんか、自信を失ってるみたいだったよ」


まつり「あぁ、いつものアレね」


みどり「いつものことなの?」


まつり「そうそう。周囲よりも劣ってる自分を見つけてしまって、一人で悔しがってるの」


みどり「言われてみると、たしかに……。『わたしには特技が何も無い』って言ってたかも」


まつり「へぇ」


みどり「特技が無いなんて、そんなことないのにね」


まつり「たとえば?」


みどり「…………」

おりえ「…………」

まつり「…………」


みどり「えっとぉ……」


おりえ「あっ、お裁縫上手だよ」


まつり「それは、もっとうまい奴いるからなぁ」


おりえ「そっか、一番は、マナちゃんか」


みどり「あいつは何でもできるからね。あ、漢字とか、得意じゃない?」


まつり「利奈は難しい字とか読めるけど、でも書けないから特技とはいかないでしょ」


おりえ「ひきこもりの才能があるとかどうにゃん?」


みどり「明らかに短所でしょそれ。ていうか、ひきこもりの才能なら、マナカやまつりちゃんの方が上だと――」


まつり「…………」ぎろり。


みどり「ごめん、なんでもないです」


おりえ「手先が……」


まつり「もっと器用なの居るってば」


おりえ「うむにゅん……一番上手にできないと、二番目以下の人は存在価値を消されてしまうことがあるということにゃん?」


みどり「まぁ、そういうケースもあるかもねぇ」


おりえ「まなちゃんがいれば、マリナはいらないってことにゃん?」


みどり「ある観点から見れば、そういうことになるのかもねぇ。ある観点から見ればね。ある観点から」


まつり「何よ、ある観点って」


おりえ「使えない子ってことにゃん?」


みどり「カオリ……そういうこと、思ってても言わない方が良いのよ」


おりえ「みどりさんはそう思ってるってことにゃん?」


みどり「ち、ちがうわよ、友達のことそんな風に思わないわよ」


まつり「あ、利奈は、髪長いよ」


おりえ「それだにゃん!」


みどり「特技っていうのかな……確かに長いけどさ……」


まつり「あと、字が上手い。整ってて面白くない字だけど」


みどり「まつりちゃん下手だもんね」


まつり「何だってぇ?」


おりえ「姐さん下手じゃないにゃん。アジがある字だにゃん」


まつり「そうだ、あいつピアノ弾けるんじゃないか?」


おりえ「それだにゃん!」


みどり「さすが、付き合い長いだけあって、まつりちゃんはマリナの良いとこいっぱい知ってるのね」


まつり「まあね、子分だし」


おりえ「それだにゃん!」


みどり「どれよ!」


おりえ「まつり姐さんの子分であることは、とてもとても素晴らしいことなんだにゃん」


まつり「あらやだ、褒めても何もでないわよ、カオリ」


みどり「いや、何だろう、いいことじゃないよねそれ」


まつり「何だと? モイストするかこの野郎!」


みどり「な、何でよ、意味わかんないわよそれ!」


まつり「モーイスト!」


みどり「ひぁああああああ!」


おりえ「みどりさん! にげてー!」


みどり「やめてぇーー!」


まつり「逃がさーーーん!」


みどり「ひぃぃぃ!」


まつり「モイスト! モイスト! モイスト!」


みどり「やめてよぅー」


おりえ「にゃんにゃん♪」


 笠原商店は、今日もおおむね平和だった。



【利奈っちの長所を探す おわり】




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