幕間_02_モイスト発祥の話
教室。
みどり「どう? この髪。しっとりでしょ?」
女子「私もあれ欲しかったんだけど、売り切れてたんだよね」
みどり「あたしのお店にも少しだけ回ってきたから、お父ちゃんに頼んでとっといてもらったんだ」
ガラッ。
まつり「おはよう、諸君! すまんな、遅刻してしまった!」
みどり「まつりちゃん、見てみて! うちの店に入った新商品! 昨日発売して即完売したんだよ!」
まつり「何だそれ、シャンプー?」
みどり「シャンプーみたいなものだけど、ちょっと違うの。これを髪に塗るとね、しっとりツヤツヤの髪が手に入るんだよ」
みどりはその新商品を手に持って見せびらかし、空いた手で自分の髪を撫でた。
まつりは、みどりの手にあった物体を奪い取り、書いてある文字を読んだ。
まつり「……モイスターソース……?」
みどり「そう、モイスターソース! 都会でもなかなか手に入らない貴重品な――」
ばさぁ!
まつりが、みどりの髪をたくし上げた。
みどり「きゃあ! 何すんのよ、まつりちゃん」
まつり「なんか自慢しててむかつくんだよ!」
みどり「な、何よ……いいでしょ、このくらい。あたしのお小遣いで買ったんだから」
まつり「しっとりツヤツヤ髪なんか手に入れやがって、このぉ!」
ばさっ!
また、みどりの髪の束がふわりと舞った。
みどり「やめてよぅ、乱れちゃうでしょ」
まつり「何がモイスターソースだ!」
ばさっ。
まつり「何がモイスターだ!」
ばさっ。
みどり「やぁ! もう!」
まつり「モイスト! モイスト!」
みどり「い、いたっ! いたたた! 痛いってば!」
まつり「モイスト! モイスト!」
みどり「あぁん、もうやだぁ」
泣いた。
まつり「あはっ、楽しいかも、これ」
みどり「うぅ……」
まつり「モイスト! モイスト!」
この時、モイストというイヤガラセが誕生した。