あ、うち、アホな家だったんだ、と利奈は思った
最近知ったんだけど、わたしがまだ立ち上がることもできないくらい幼い頃、両親から色んなことを吹き込まれていたらしい。
右も左もわからない頃から、わたしの耳元で両親が色々と囁いていたというのだ。
言われてみると、まどろみの中で聞いた微かな記憶があるような気がする。
記憶を辿り、わたしは思い出した。
★
「ロケットはいいぞ、ロケットはいいぞ、ロケットはいいぞ」
パパの声。
「筋肉ばんざい、筋肉ばんざい、筋肉ばんざい」
ママの声。
「いい? 利奈。宮島家はね、代々村の秘密を守り続けるという役目を負ってるの。それから家訓も早くから教えてあげないとね。いい? 利奈。宮島家の家訓はね、『騒がない、暴れない、逆らわない、遊ばない』わかった? とにかく勉強しなさい。勉強勉強勉強」
耳元で囁き続けるママ。
「ママ、ちがうぞ、利奈にはロケットを造らせるんだ」
「ふざけんじゃないわよ。ロケットなんて道楽やってたら、あなたみたいなダメな大人になるじゃないの」
「何ぃ!?」
「とにかく、利奈を立派に育てるわよ、パパ」
「そ、そうだなぁ。お前に似ると良いなぁ」
「そうねぇ……。息子だったら、楽しみだったのに」
「何がだ?」
「筋肉」
「ふははは」
「うふふふ」
★
何だろう……思い出したくなかった。
わたしの親、変だ。
わたしは思わず顔を覆った。
【アホ一家、宮島家 おわり】