利奈の両親について
「宮島くんの筋肉って、どうなってるの?」
宮島と呼ばれた高校生ながらムキムキの男に話しかけたのは、女。
鉛筆と手帳を持ちながら話しかけた。
まるで、古風な新聞記者が取材している姿を見るようだった。
「ム? ワシの筋肉? 見るか?」
宮島が言うと、新聞部の女はこくりと頷いた。
そして、
「ぬぇえい!」
ビリビリィ!
宮島は自らの制服を引きちぎった。
目の前に現れた肉体美を目にした女は、その瞬間に恋に落ちた。
「ム? どうかしたか、女子よ」
「宮島くん……わたし、好きかもしれない」
「ん? 何をじゃ?」
それが、ロケットマニア宮島父と、文学少女の宮島母の出会いだった。
十数年後のある日のこと。
「パパとママって、どうして結婚したの?」
利奈は宮島父に訊いた。
どうして、二人が結婚したのか、不思議で仕方なかったからだった。
「それはな……」
「お互いに好きだったの?」
そして、宮島父はこう言った。
「いいか利奈。ママはな、ワシのことが好きなんじゃない。ワシの筋肉が好きなんじゃ」
「なにそれ」
「利奈は、あのレベルの筋肉好きになんてなるんじゃないぞ」
「パパのこと、嫌いになってもいいの?」
「ダメだぁ! それはダメだぁ!」
宮島父は、娘をがばっと抱きしめた。強く。
「きんにく、くるしい~。あせくさ~い」
「筋肉好きでもいい。パパを嫌いになってはいけないんじゃぁ!」
宮島父は町中に響き渡るかのような大声で叫んだ。
【利奈の両親について おわり】