風間史紘の章_6-6
数十分後。待合室から見える『手術中』の赤いランプが消えて、手術室から衛生的な薄い水色の帽子をかぶって汗だくのアルファが出てきた。
「ふぅ……」
帽子を取って溜息を吐いた。
「どう……だった? アルファ」
「手術は成功しました。彼が命を落とす可能性は限りなく低くなりました」
「そ、そうなのか……」
「はい。最先端医療です」
RUNは大きく息をついて安堵し、
「よかったぁ……フミくん……」
と、その時、廊下を走る音が聴こえてきて何事かと振り返ると、院長先生が走ってきていた。そして、正座の姿勢で廊下をずざざざと滑った後、
「弟子入りさせて下さいっ!」
土下座した。
「弟子ってなーに? ニッポン文化、よくわかんなーい」
さらに数ヵ月後。
都会の病院に俺たちは居た。
病気が完治したと知って、病院の外で待っていたのだ。
手術を決断した勇者フミーンが、自動扉から出てきたので、迎えてやる。
「よう頑張ったな」
笑顔で。
「ええ。だって、もう、一度死んだと思ったんですよ。でも、生きることができた。それで、まだやりたいことがいっぱいあったことに気付きました。だから、もう、これから、何でもできそうな気がするんですよ」
RUNは言う。
「もう、自分を諦めたりせんて、約束な」
「ええ、約束します」
そして、看護婦さんが、花束をフミーンに手渡す。
「風間史紘様。退院おめでとうございます」
「おめでとう」
「おめでとう!」
風間史博は、「ありがとう」を繰り返し、泣きながら、笑っていた。
そして青空に、約束の歌が響く。
【風間史紘の章 おわり】




