風間史紘の章_6-5
さて、フミーンの居る病室に来た。
「……というわけで、あとはお前の意思だけなんだが」
「僕の……意思……」
「つまり、生きたいか、死にたいかってことやねん」
「そ、そりゃ……そりゃ生きたいですよ! 僕だって! 生きて、色んなことしたいですよ! RUNちゃんの新曲も聴きたいですし、集めていないRUNちゃんグッズもありますし! でも! 手術なんて! こわくてたまらないわけですよ!」
そりゃ、そうだ。
手術はこわい。
俺だって、手術を受けろなんて急に言われたら、ビビるだろう。
しかし、その時、
「…………わかった」
RUNが言って、掛けていたメガネを外し、
「フミくん。ウチのこと、わかる?」
そう言った。
「……え?」
「よく見てみろ。誰かに似てるだろう」
「まさか……え? なっ……うそ……何で……RUNちゃん……?」
「RUNです☆」
彼女はポーズをキメた。
「達矢です☆」
対抗してみた。セクシーに。
「ララ、RUNちゃんが、何でこんな所に!」
俺のポーズは無視された。
「偶然、通りかかっただけやねん」
「え、でも、大場崎蘭子さんじゃ……」
「そんなん偽名や」
「ということは……本当の本当に……ホンモノ……?」
「RUNです☆」
「達矢です☆」
「アルファです☆」
「な、何でこんな……夢?」
俺は何となーくニヤニヤしつつ、
「おいおい、ここは『フミーンです☆』と言ってポーズをキメる流れだっただろうが」
「で、しゅうつ受けるん?」
「手術……」
RUNは頷き、
「病気が治ったら、ウチの歌聴かせたる。だから、必死で治してな」
「RUNちゃんが……歌を……? まさか……僕のために?」
「うん。フミくんだけのために、歌ったる」
「なっ……僕だけのために……?」
「しゅうつ――」
「受けます」
フミーンが答えた次の瞬間、
「ふあーい、じゃあチクっとするよー」
アルファは信じられないほど素早い動きで注射器を操ると、フミーンの腕にチクっとした。
そして、フミーンは「うっ」と声を漏らし、カクンと頭を垂らして意識を失った。
「な、何したんだ……今……」
「麻酔打ちました。手術室に運びましょう」
「お、おう……」
「ナースさん! お願いします!」
アルファが部屋の外に向けて言うと、ナースさんたちが一斉に入ってきて、フミーンを手際よく抱えて運搬台に移した。そして、ガラガラと車輪の音を残して部屋の外へ運んでいった。
「さて、それでは、お二人は待合室で待っていて下さい」
「お、おう」
「はい……」
アルファも、運ばれていったフミーンを追いかけるように部屋を後にした。