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風車は力強く回転を繰り返し規格外の強風は坂を駆け抜けてゆく  作者: 黒十二色
フェスタ_柳瀬那美音(幼馴染の昔話)
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フェスタ_那美音-2

 マツリが仲間に入ってから、少し時間が経過すると、それぞれの関係も少しずつ変わっていった。


 マツリは、集団の中で孤立している自分を確認してしまい、それまで以上に更に荒み、マリナを引き連れてやんちゃした。子分のマリナに依存していた……とも言えるかもしれない。


 その結果、いつもひどい目に遭うのはマリナであり、バカで恐いものなしなのに体力と運に恵まれているマツリは怪我もしなければ痛い目にも遭わない。


 たとえば、氷の張った湖でスケートをして、マリナだけ湖にハマったり。穂高家の敷地内にある風車小屋の屋根にのぼって、マリナだけ落ちたり。雪が降った日に坂道でスキーをしてマリナだけコケて怪我したり。マリナは何もしてないのに、なんか理不尽にマツリに殴られたり。マリナの持ち物をマツリが壊したり。


 そこでマリナはマツリから離れたくて(正確に言うと、マリナの母親が、娘をマツリから放したくて)、サハラとだけ遊ぼうとするようになるのだったが、マツリはそれでもマリナから離れていかなかった。


 サハラはマナカを管理しながらも、サナの補佐役をこなし、更にマツリとマリナとも仲が良かった。


 うまくバランスをとったことにより、サハラはサナの更なる信頼を得るのだが、マツリにとってはそれが気に入らないポイント。そこでサハラに子供らしい嫌がらせを行い、最終的には姉のサナに懲らしめられるというようなことが多々あった。


 カオリはカオリで、自由に生きながらも穂高家という不自由に反発しようとして、何度か家出をした。


 家出先は秘密基地か、お花畑。


 自由を愛し、責任を嫌っていた。


 穂高家という家は、どこか閉じていて、開放されていなくて、厳しくて、甘えを許さなかった。


 カオリはそれが気に入らなかったが、完全に逆らうことはできなかったし、半ば不自由を受け入れてもいた。


 それでも苦しむ姿は、ほとんど他人に見せない。


 それは成長して、十代なかばになった今でも変わっていない。


 サナは、そんなカオリが甘えられる唯一の人で、サナもカオリには甘かった。


 マナカは繊細な天才だった。


 サナと同じレベルで関わり合える唯一の子供。だから本人は意識していなくても、ある意味ではサナの心の支えになっていた。


 マナカは昔から実に多才であった。


 万能で、成績は学校一番。村一番。あらゆる面でクリエイティブな能力を発揮することができ、その上努力家。


 勉強、スポーツ、家事。何でも器用にこなし、凝り性で、全てにおいてトップクラス。血の滲むような英才教育を受けたサナでさえマナカに勝てるものは少なかった。


 単純に才能という意味でいけば間違いなく村で一番であった。


 月並みな表現ではあるけれど、神に愛されているような人間といっても過言ではなかった。


 そんなマナカがソフトボールを始めた。


 それに影響されたのは、宮島利奈。マリナだった。


 マリナはいつもマナカをライバル視していた。


 元々マナカは、ひたすらにゴーマイウェイな子だったので、こっそりマナカをライバル視している子は多かった。


 ただマリナの場合は、マリナの母が何かとマナカを絶賛するので、マナカに勝つことで母の愛情を強く感じたかったのだろう。とにかくマナカと競いたがった。


 しかしマナカは、そんなものは全く眼中になくて、ただ上を見ていて、まさしく孤高だった。


 マリナはマナカに負けたくなくて、でも同じ土俵で戦ってもまず勝てないことを知っていたから……野球を始めた。


 この時、宮島父は大変喜んだという。


 しかしマリナが野球を始めると、マツリも同時についてきて、マツリに毎日球拾いさせられる身になってしまった。しかもマリナは運動が苦手だったこともあり、その上、マツリが野球を始めたことで、サナまで一緒に野球をやり始めてしまった。


 こうなるとマナカがソフトボールから野球に転向してくる展開となり、野球チームでポジションを失ってしまいそうだと思ったマリナは……野球をやめてしまった。


 この時宮島父は、大変にガッカリしたという。


 時が流れ、まつりが中学生に相当する年齢になる頃には、小さな野球チームは、マナカをエース。サナを四番サード、比較的下手っぴなマツリをライトで八番に配置して、対外試合はほとんどできなかったものの全国レベルのチームとなり、時折、街の外から彼女らを見に来る人々まで居たほどだった。


 チームのみんな、野球が、大好きで。きっと、これからもずっと、楽しい日々が続くんだろうなと、皆が思っていた。


 そんな矢先の……ある日のこと……。




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