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フェスタ_アルファ-1

※途中まではフェスタ_利奈っちと一緒です。

「フェスタ_利奈っち-5」の途中から分かれてる感じです。途中まで一緒のところはダイジェスト風にしてあります。

 最初の登校日に、いきなり馴れ馴れしい自称神さま伊勢崎志夏から「たっちゃん、文化祭をするゾ」とか言われ、生徒会室に連行され、どっかで見たような見ないような連中を紹介された。


 フェスタ実行委員の方々だった。


 そこで、「気になった人を選べ」みたいに志夏が言ってきたもんだから、生徒会長からの直々の命令に転校初日の俺が逆うのも、なんか感じ悪いかなと思い、言われたとおりに一人を選んだのだ。


 背の高い、髪が長くて綺麗な、すらっとした美人。『図書委員』という腕章を左腕に装備した女子。宮島利奈である。


 何故彼女を選んだのか。まあ、そんな理由なんてのは、特に無い。フィーリングというやつである。俺は気分で動く欠陥だらけの人間なのさ。


 いやしかし、人間ってのは血管だらけな生き物であるから、そんな自分を肯定して生きてい良いのでは――


 って、血管って、そっちの血管かーい。字が違っとるぜー。血管と欠陥でー。


 とまぁ、セルフ説明ツッコミという、自爆をかましてみたのだが、ええと、何の話だったか。


 ……そうそう。利奈な。宮島利奈っちの手伝いをしたって話だ。


 この宮島利奈という女。はっきり言って間抜けであった。欲張って、色々な出し物をしたがって、一人では到底作業できないアイデアをぽんぽんと繰り出してくる。もしも俺が手伝わなかったら、きっと何の出し物もできずに終わって、ずーんと落ち込んで他人や社会のせいにしていたに違いないんだ。


 さらに、この利奈っちは、変なやつで、何と幽霊に取り憑かれていたのだ。本子さんという白い服着た、足の無い、小さくてフワフワの可愛い幽霊だった。


 利奈は、町の歴史をまとめて紹介する博物館と近代武器展示とロケット展示とを一日で準備しようとしていた。


「お前それ無理だろう。手伝ってもらうのも無理だろう」


 というようなことを言ったところ、柔軟に聞く耳はもったものの、やりたいことは曲げない頑固さも大工の父から譲り受けていたようで、「したい、したい!」と繰り返し、一つに絞れと言っても難色を示し、「全部やるの! やるのやるのやるの!」といった感じに駄々をこね、一度手伝うと決めた手前、いまさら引き返すわけにもいかず、結局なんかよくわからんうちに、俺が利奈の手伝いをすることに落ち着いたわけだ。


 志夏の手を借りたり、大半の肉体労働を俺がこなすという、どうかと思う形で、展示場は完成を見た。


 俺は疲労により、その展示場の中心で仰臥せざるをえず、そのまま眠ってしまった。


 朝になってみると、近代兵器に溢れた展示場に居て、そんでもって予想通りの筋肉痛。


 志夏の声でウィンドミルフェスティバルの開幕が告げられてすぐに、利奈がヘラヘラしながらやって来て、「まつりなら筋肉痛になんてならない」みたいなことを言ってきやがった。お前の指示で動いたと記憶しているんだが、いたわりやねぎらいの言葉が無かったのは、そういうわけか。上井草まつりのような化け物と比べられても、なんつーか困る。


 筋肉痛の方は、すぐに治ることとなった。保健室に居た笠原みどりが、俺の体をあちこちにひん曲げてくれたおかげで、激痛で涙目になりながらも、元通り、痛みが消えた。


 その筋肉痛を治療してもらったお礼に、というわけではないのだが、笠原みどりの提案に付き合う形で、彼女らの幼馴染がやっているというパスタ屋へと出向いた。


 しかし、パスタ屋はやっていなかった。


 そこで今度は、利奈の展示を、みどりに見せてやろうという運びになり、予想外に繁盛している利奈っちプロデュースの空間まで来たわけだ。


 そして今、幼いブルーアイズシルバーヘアーの子供と、ムキムキの大男に出会ったというわけだ。


「何よりも、これっ! ワシのロケット! 最高じゃあ!」


「このロケット、おじたんが作ったんですか?」


「いかにも」


「なかなかやりますね……」


「この良さがわかるとは、お嬢ちゃん、若いのにやるな」


 こういった感じで、ロケットをきっかけにあっという間に仲良くなっていた。


 町一番のムキムキ男は、大工でロケット狂いの男であり、速い話が宮島利奈の父親であった。しかしロケット大好き銀髪チャイルドの方は、素性が不明なので、どうも迷子なのではないかと思われる。


 笠原みどりは、「迷子だと思う、保護者を探そう」と言って、少女と同じ目線になるようにしゃがみ込んで、


「お嬢ちゃん、どこから来たのかなー。お母さんはー?」


 語りかけたが、


「おばたん誰?」


「なっ――!」


「ジャマしないで」


「かっ……かわいくない……」


 見た目は可愛いのになあ。


 銀髪少女は、ムキムキの太股の筋肉をペタペタ叩いて、


「おじたん」


「ん、おじたんってのぁ、ワシのことか」


「どれくらいロケット好き?」


「妻よりも好きだ」


 おい、いいのか、それ。娘の前で。ていうか、妻よりロケットが好きって、すごいな。


「おじたんなら、あたしのパートナーになれるかもしれない。力も大事だけど、一番大事なのは情熱」


 アルファはそんなことを言って、目をキラキラさせている。


「何と……困るぜ、娘の前で告られちまったわい……」


 ちなみに、告られたわけではないと思うのだが、驚く利奈をよそに、筋肉質の男が、頭をポリポリかきながら照れていた……。


 ふと宮島父は利奈の呆れ気味の表情に気付いたようで、大音声で、


「じゃが安心しろ利奈ぁ! 娘よりは劣るぞ!」


「おい利奈。なんつーか、変な父だな……」


「ちょっと達矢、失礼じゃない?」


「いや、だって、なぁ?」


 俺はみどりの方を向いて言ったが……。


「…………」


 なんか、不機嫌だった。


 不機嫌すぎて全く可愛くない顔になってる。むくれてるとでも言えばいいだろうか。おそらく、さっきの「おばたん」発言が、効いたのだろう。


「どうしたんだ、みどり……」


「あたしって、老けてる?」


「いや、まぁ……まつりとか利奈とかに比べれば、大人っぽい言動ではあるな」


 容姿はむしろまつりや利奈っちより幼く見えるが。


「老けてなんて……そんなことないのにぃ!」


「そ、そうか……」


 見た目は若いというよりも幼いくらいだから、老けてるとは思えないが、たぶん、何と声をかけても無駄だと思う。たとえばここで、「そんなことない、みどりは可愛いよ。老けてなんかいない」と言ったところで、「なぐさめてくれなくたっていいもん! わかってるもん!」みたいなことを言って、さらに自虐に走りそうな気がする。俺の勘がそう告げている。


 さて、ロケット好きの筋肉と少女の会話に視点を戻そう。


「あたしは、アルファ。あたしと一緒に、世界を守りませんか?」


 アルファはそう言って、宮島父を勧誘していた。


「ん……。それは魅力的だが……しかし、ワシにも仕事がある」


「仕事?」


「大工だ」


「あれは良い音楽ですね。合唱にするともう感動」アルファ。


「それは第九でしょ」すかさずみどりがツッコミを入れた。


 そして、アルファは脈絡なくこう言った。


「アイスクリームが食べたくなりました」


 何なの、この子。

 たまに会話が繋がらないぞ……。


「ねぇ、達矢。パパなんて放っとこうよ」


「そうね。あたしを『おばたん』と呼んだ可愛くない少女なんて、迷子のまんまでも何でも良いわよ」


 要するに、この二人の言葉が意味するのは、三人行動で、どっか別のところに行きましょうということであろう。その上で、俺に「どうするか決めろ」と言ってきているのだ。


「そうだなぁ……どうするか……」


 いやいやしかし、だ。


 迷子の子供を放って置いて行くってのは、何となく気が引けるもんじゃないか?


 どうだい?


 そう思わんか?


 思うだろう?


 思うはずだ。


 思おう。


 迷子の子の相手をしてやろうではないか。


「アイスクリームってのは、どこにあるんだ、みどり」


「え? 何であたしに訊くの?」


「いや……みどりなら何か知ってるかなと思って」


「まさか……戸部くん。この可愛くない少女にアイスクリームを与える気でいるの? 何の罰を与えることなくっ?」


「まあ……そういうことになるかな」


「血迷ったのっ!?」


「血迷うったって……でも迷子だったら放っておけないじゃないか」


「最低! 戸部くんなんてもうしらないっ!」


 言って、みどりは走り去って行った……。


 何なんだ一体……。


「みどりも変なヤツだな……案外……」


「まぁねぇ。この街に変じゃない子なんていないよ」


「アイスクリーム♪ アイスクリーム♪」


 みどりは逃げるし、子供はアイスクリームを欲しがって歌うし……。


 まぁいいか……。


「で、利奈っち。アイスクリームを売っている店はどこに……?」


「う~ん……今日はお祭りだからさ、アイスクリーム屋さんもどこかにあるかもね」


「うぅむ……でも、もう少し暑かったらあるかもしれんが、まだ春か梅雨かってくらいだぞ」


「でも、何ていうのかな……女の子の中には、どんなシーズンでもアイス食べたいって思う子も居る気がする」


 そうなのか……。


 するとムキムキが、こう言った。


「ん? アイスか? ワシもアイスは作れるぞ」


「パパのは、かき氷っしょ! そういうんじゃないのよ」


「そうか、それは残念じゃ」


「アイスまだー?」


 アルファは、いかにもわがままな声と表情でアイスクリームを求めている。


「それはそうと、利奈よ」


「何よ」


「このロケットの展示の仕方だがな」


「それがどうしたの」


「ロケットの真髄をわかっていない配置だな。ただ大きさの順に並べたのでは、なんというか……そう『流れ』。流れがわからんだろう」


「ごめんパパ。何言ってるんだかわかんない」


「いいか、利奈。ワシの作ったロケットにも歴史があってだな。一番最初は確かに小型ロケットじゃった。しかし、次に造ったのは人が乗れるほどの巨大ロケット。そこから軽量化と小型化を進めていき、試行錯誤を繰り返して至ったものが、あんな中途半端な位置に展示されているのは、おかしなことじゃあないか!」


 なおも宮島父の語りは続く。


「あの最高傑作は、この展示のクライマックスに置くか、校庭のど真ん中に置くとか工夫しないと、ロケットを見に来てくれた人に対して失礼だろうが!」


「何このめんどくさい父……」


 利奈っちは呟いた。


 すると、


「――利奈ぁ! きこえたぞぉ!」


 べしっ。


 宮島父が、利奈っちの頭を叩いた。


「いたっ! 体罰ぅ?」


「まったく、親の顔が見てみたいわい!」


 自分のことじゃねぇか……。


 と、その時――


「利~奈ァ~」


「うげぇ! ママ!」


 しかめ面で、ママ登場。


「ち、ちがうぞ利奈! ワシがママを呼んだんじゃないからな! ママにはお前が色んなものを展示してるなんて言ってないからな」


「パパ……少し黙ってくれないかな……。言い訳もできなくなっちゃった……」


「利奈。これはどういうこと?」


「え……えっと……あのね、ママ、これは――」


「クソくだらないロケットの展示は別にどうでも良いの。武器を展示してるのも、特別に許してあげても良いわ。今日はお祭りだから。でもね、街の機密情報とか、街の歴史とかを堂々と公開するって何事!?」


「あ、でも――」


「宮島家の人間としての自覚がひどく欠けているわ!」


「で、でも、せっかく調べたし……」


「昔言ったでしょ! 宮島家は代々『街の秘密を守リ続ける』という役目を負ってるって話は!」


「え。そんなの聞いたことない……」


「言ったはずよ」


「いつ言ったの?」


「あんたが二歳くらいの時よ」


「そんなの憶えてるわけないっしょ!」


 母は(あご)に右手をそえながら、


「おかしいわね。毎日のように語りかけてたのに」


「なにそれ! 洗脳でもしようとしてたの!?」


「とにかく! ロケットと武器は展示してもいいから、他の巻物とか歴史研究物は今すぐ撤去しなさい!」


「やーだー!」


 バシン!


 頬を叩いた。体罰だ。最近はもう流行らない体罰だ。


「撤去!」


「いたい……」


 何か、すごく、可哀想だった……。


「どうやら修正が必要のようね! 来なさい!」


 腕を引っ張られる。


「やーだー! パパ! 助けてぇ!」


「がんばれよ、利奈!」


「ふざけんなぁ!」


 また母は、わめく利奈にバシンと手を挙げて、叫ぶ。


「騒ぐな! 暴れるな! 逆らうな! 遊ぶな!」


「むむぅ、父としては宮島家の家訓を出されてはどうしようもないな……」


 嫌な家訓だな……。


「騒がない、暴れない。逆らわない、遊ばない……。頭文字等をとったりして略すと『さばさば』だ」


「そうっすか……どうでもいいっすけど……」


「あなた!」と、利奈のママは、利奈パパを呼んだ。


「何だい、ママ」


「この展示、全部撤去しときなさい」


「しかし……このロケットは……」


「じゃあ、ロケットだけは展示しといていいわ。他は全部撤去」


「わかった。撤去だ」


「う、裏切りものー!」


 利奈は悲痛に叫んでいた。


「騒がないっ!」


 ばしっ。


 頭をはたかれ、腕を引っ張られて行った……。


「あーん、たーすーけーてー!」


「みっともないでしょ! やめなさい!」


「ママのバカーーーー!」


 そんな叫びが、遠ざかって、やがて喧騒に消えていった……。


 宮島父も、撤去作業に取りかかるため、視界から消えていた。


 残されたのは、俺とアルファ。二人きり。


「とりあえず、アイスクリームでも探すか?」


「うん!」


 良い返事だった。


「アイスクリーム♪ アイスクリーム♪」





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