表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
411/579

フェスタ_利奈っち-4

 ヨロヨロと歩きながら保健室に来た。


 利奈っちが戸を開け、


「やはー、サハラー」


 誰かを呼んだ。


「あら、マリナ? 何しに来たの? またまつりちゃんが何か……」


 笠原みどりが居た。


「あぁ、ううん。今日は、筋肉痛が一人」


「筋肉痛?」


 そこで、俺はヨロヨロのまま歩み出る。


「そう、俺だ。俺の筋肉の悲鳴が止まらないんだ」


「というわけだから、アレよろしく」と利奈。


「え? アレ? いいの?」みどり。


「たまにはやっとかないと、腕も鈍るでしょ」


「まぁ……そうだけど……」


 そんな会話の後、


 笠原みどりは俺に近付いてきた。


「な、何だ……何をするんだ?」


「戸部くん……ちょっと我慢してね……」


 そしてみどりは、俺の腕を掴んだ。


「我慢ってなにぅうおあうああええええええええい!」


 ゴキゴキボキバキベキキキッ!


 痛い!


 腕ひねられた痛い!


 痛い!


 骨がぁ!


「うぁあああああああ!」


 ゴキゴキッ。


 筋肉痛だって言ってるのに、何で骨の音がするんだよ!


「そりゃ、そりゃぁっ」


 右腕からはじまって、右足、左足、左腕、首、そして胴体。


 みどりの手によって容易く捻られる。


 メキメキ、ボキゴキ、ブチブチ!


 なんかブチブチとかヤバイ音してるし!


「はぐぁあああああああ!」


 地獄のような痛みが続いた。


 そして、それは二分ほど続いて、終わった。


「戸部くん、どう?」


「どうもこうもあるか! 痛いわぁ!」


「でも、筋肉痛は治ったでしょ?」


「…………」


 おや?


 言われてみると確かに……。


「ね? 言ったっしょ。便利だって」


 謎の秘術というわけか。


 単なるストレス解消の道具にされたかと思ったが、確かに体の痛みは消えた。死ぬほどの痛みを味わったけど。


「だが、あれは痛すぎる。もっと優しい方法は無いのか?」


「おかしくなったものを短期間で無理矢理治すっていうんだから、痛みが伴うのは当然よ」


「そうか」


 妙に納得した。


「用事はそれだけかな」


「それだけよ」


 利奈が頷いた。


「あ、じゃあさ、二人ともこれから暇?」


「暇といえば暇だけど、何、サハラ」


 そう、展示はしてしまったので、もうやることは少ないのだった。


 本来なら、たとえば来客の質問に答えるとか、もう少しやるべきことがあるのだろうが、あいにくこの街の人間はおおらか。やるべきことなんてのは無視するだろう。


「暇だな」


「本子も暇ですよ!」


 三人とも……いや、二人と幽霊は暇だと返した。


「じゃあさ、皆で、あいつの店行かない?」


「あいつの店?」俺。


「っていうと……マナカの?」利奈。


「そう、マナカの」みどり。


 マナカ……ってことは、浜中紗夜子か。細い体をした儚げで綺麗な子だったと記憶している。肌が白くて、おでこ広くて、ぱっちりした目の。


「マナカ、店なんて出すんだ」


「うん。なんか、やるみたい。これもらった」


 言って、みどりが見せてきた何かのチケットみたいなものには、『パスタ屋★はまなか パスタ半額券』という文字が書かれていた。


「一緒に行こうよ。なんか、一人で行くの、寂しいし」


「まぁいいけど、何の店?」


「パスタらしいよ」


「パスタ……? マナカが料理なんてできんの?」


「さぁ……」


「どうせマズいわよねぇ」


「マリナ、それは行ってみないとわかんないわよ?」


「とりあえず、行ってみようぜ!」


 俺が言って、


「「ゴーゴー!」」


 本子と利奈っちは拳を突き上げた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ