フェスタ_利奈っち-4
ヨロヨロと歩きながら保健室に来た。
利奈っちが戸を開け、
「やはー、サハラー」
誰かを呼んだ。
「あら、マリナ? 何しに来たの? またまつりちゃんが何か……」
笠原みどりが居た。
「あぁ、ううん。今日は、筋肉痛が一人」
「筋肉痛?」
そこで、俺はヨロヨロのまま歩み出る。
「そう、俺だ。俺の筋肉の悲鳴が止まらないんだ」
「というわけだから、アレよろしく」と利奈。
「え? アレ? いいの?」みどり。
「たまにはやっとかないと、腕も鈍るでしょ」
「まぁ……そうだけど……」
そんな会話の後、
笠原みどりは俺に近付いてきた。
「な、何だ……何をするんだ?」
「戸部くん……ちょっと我慢してね……」
そしてみどりは、俺の腕を掴んだ。
「我慢ってなにぅうおあうああええええええええい!」
ゴキゴキボキバキベキキキッ!
痛い!
腕ひねられた痛い!
痛い!
骨がぁ!
「うぁあああああああ!」
ゴキゴキッ。
筋肉痛だって言ってるのに、何で骨の音がするんだよ!
「そりゃ、そりゃぁっ」
右腕からはじまって、右足、左足、左腕、首、そして胴体。
みどりの手によって容易く捻られる。
メキメキ、ボキゴキ、ブチブチ!
なんかブチブチとかヤバイ音してるし!
「はぐぁあああああああ!」
地獄のような痛みが続いた。
そして、それは二分ほど続いて、終わった。
「戸部くん、どう?」
「どうもこうもあるか! 痛いわぁ!」
「でも、筋肉痛は治ったでしょ?」
「…………」
おや?
言われてみると確かに……。
「ね? 言ったっしょ。便利だって」
謎の秘術というわけか。
単なるストレス解消の道具にされたかと思ったが、確かに体の痛みは消えた。死ぬほどの痛みを味わったけど。
「だが、あれは痛すぎる。もっと優しい方法は無いのか?」
「おかしくなったものを短期間で無理矢理治すっていうんだから、痛みが伴うのは当然よ」
「そうか」
妙に納得した。
「用事はそれだけかな」
「それだけよ」
利奈が頷いた。
「あ、じゃあさ、二人ともこれから暇?」
「暇といえば暇だけど、何、サハラ」
そう、展示はしてしまったので、もうやることは少ないのだった。
本来なら、たとえば来客の質問に答えるとか、もう少しやるべきことがあるのだろうが、あいにくこの街の人間はおおらか。やるべきことなんてのは無視するだろう。
「暇だな」
「本子も暇ですよ!」
三人とも……いや、二人と幽霊は暇だと返した。
「じゃあさ、皆で、あいつの店行かない?」
「あいつの店?」俺。
「っていうと……マナカの?」利奈。
「そう、マナカの」みどり。
マナカ……ってことは、浜中紗夜子か。細い体をした儚げで綺麗な子だったと記憶している。肌が白くて、おでこ広くて、ぱっちりした目の。
「マナカ、店なんて出すんだ」
「うん。なんか、やるみたい。これもらった」
言って、みどりが見せてきた何かのチケットみたいなものには、『パスタ屋★はまなか パスタ半額券』という文字が書かれていた。
「一緒に行こうよ。なんか、一人で行くの、寂しいし」
「まぁいいけど、何の店?」
「パスタらしいよ」
「パスタ……? マナカが料理なんてできんの?」
「さぁ……」
「どうせマズいわよねぇ」
「マリナ、それは行ってみないとわかんないわよ?」
「とりあえず、行ってみようぜ!」
俺が言って、
「「ゴーゴー!」」
本子と利奈っちは拳を突き上げた。