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フェスタ_利奈っち-3

 武器展覧!


 貴重書物コーナー!


 街の歴史研究!


 パパロケット!


「できたわっ!」


 三つの部屋にまたがる利奈っちの展示が完成した頃には、もう深夜であった。


 しかし、深夜とはいえ、まだ校内に人は多く、明日の本番に向けての準備を進める生徒たちの声で、そこそこに騒がしかった。


 ちなみに、ここだけの話だが、重いもの担いで坂のぼったの、全部俺。


 フワフワと宙に浮いた本子さんに見守られながら、汗だくで運んだのだ。


 武器は図書館裏にあった謎の洞窟の地下深くから階段をのぼって坂を下って、更に坂を上って持って来たし、


 貴重書物も図書館からの道のりだから、また坂を往復するハメになった。思ったより本ってのは重たくて大変だった。ただの紙の束だと思ってると痛い目みるね。


 最後に、俺の体にトドメをさしたのが、利奈パパが造ったというロケット!


 これがまぁ、一番大きなので全長十五メートルくらいあって、それと同じような重さのが三本もあった。


 もうね、一人で運ぶものじゃないんだが、何回も立ち止まりながら坂を上がってきた俺は、どんな偉人にも負けないくらいに偉いんじゃないかと思うよ。


 どんだけ重くても、誰も俺の手伝いをしてくれないというのはツラかった。


「さて、だいたいできたね、達矢」


「そうだな、利奈っち」


「家に帰って寝よう」


「優雅なもんだな……」


 言いだしっぺの利奈っちが一番働いていないというのは、一体どうしたことだろうか。


 確かに、全体の配置とかをこう、考えたのは利奈っちだ。


 しかし、指示通りに動かしたのは俺だぞ。


 利奈っちが頭脳労働をしたのはわかる。わかるが、そういうのは頭でわかっても納得できないものなのだ。


 体を動かした人間は、動いていない人間が憎いのだ。


 理屈じゃどうにもならないんだ、それは。


「そいじゃ達矢。また明日ね」

「ばいびー!」

 利奈っちと本子さんは去って行く。


 追いかけて一発頭でも叩いてやりたかったが、できなかった。俺は、その場から動けずにいた。つまり、疲労が限界だったのだ。


「嗚呼、俺には……家に帰る体力も残っていないというのに……」


 俺は、展示物が大量にある部屋、その床の上にドサリと倒れこんだ。





 目を覚ますと、朝だった。


「い、いてててててて」


 予想通りの筋肉痛がきた。全身が軋む。


 無理して立ち上がって見渡した部屋は、近代兵器で溢れていた。


 近代兵器――。


 まぁ要するに、銃とか、手榴弾とか、そういう類のものだ。


「物騒だな……」


 火炎放射器やら、ロケットランチャー。


 最終的には手作りロケットまであると……。


 一体何と戦争する気なんだ、この兵器群は。


 ゾンビでも出るのかな。


「まぁいいか」


 俺がそう呟いた時――


『全校生徒の皆さん!』


 校内に放送が流れた。志夏の声だ。


『生徒会長の伊勢崎志夏です』


 俺は、その放送に耳を傾ける。視線はスピーカーに集めて。


『私が言いたいこと、言わなきゃいけないことは、ただ一つです。長々と口上を述べるつもりはありません。一日限りのお祭りだけど、楽しくいきましょう!』


 そして志夏は、


『ウィンドミルフェスティバルの開幕を、ここに宣言します!』


 開幕を告げた。


 で、ガラッと扉が開く。


 開幕宣言が終わるや否や、扉が開いて、利奈っちが姿を見せたのだ。


「やはー、早いね達矢。もう来てた」


「いや、ここで寝てたんだよ」


「こんなところで? ちゃんと布団に寝ないと風邪引くよ」


 やべぇ、頭を優しくひっぱたきてぇ……。髪の毛とか甘く弱く引っ張りてぇ。


 お前にこき使われたせいで、動くことができなくなってここで眠ったというのに……。


「ん? どしたの? なんか今日の達矢、動きが変だよ? カクカクしてる」


「いや、まぁ……ちょっと筋肉痛でな」


「何で?」


 首を傾げおった。


「重いものを運んだからに決まってるだろう」


「あの程度、まつりなら軽々だよ」


 ああ、そうか、こいつ、あの凶暴豪腕女(ゴリラ)を基準に考えてるから、そういうことが言えるのか……。


 つまり……俺は上井草まつりを憎みたい。


「最低だな、まつり」


「え、何で、急に」


「いや、こっちの話だ」


「達矢さん達矢さん!」


「ん? 何だ、本子ちゃん」


「本子なら、筋肉痛を消すことができます」


「おぉ、それはすごいな。どうやってだ?」


「全身の神経を、本子の念動力でぶっこわします。そうすれば感覚がなくなって――」


「おいそれ、体動かなくなるじゃねぇか。やめてくれ」


「そうですか、お役に立てなくて残念です」


「ていうか待て……。念動力なんてもん使えるなら、俺が重たい荷物抱えてる時に横にフワフワいたんだから助けてくれりゃ良かったじゃねぇか!」


「筋力つけたいかなぁと思って」


 何て嫌な幽霊だ。優しさは無いのか。あんな可愛い感じなのに。


 ふと、利奈が思いついた顔をした。


「あぁ、そだ、達矢。筋肉痛なら、便利な人が居るよ」


「便利な人?」


「まあとりあえず、その人の所に行こう」


「ゴーゴー!」


 幽霊ちゃんは拳をかかげた。


 便利な人とやらのところへ行くことになった。




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