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フェスタ_紗夜子-9

 すぐに出てきた。メイド服の二人。


「おそろいだねっ☆」


 紗夜子がまつりに微笑みかけるが、まつりは明らかに目を逸らし、


「あ……あぅ……は、恥ずかし……」


「に、似合うじゃねぇか。二人並んだところもまた……エクセレンツ!」


 俺が賛辞を送ると、


「うっせぇ殺すぞ!」


 何故……。褒めたのに。


「照れちゃって」


「あぁ、これは照れてんのか」


 素直じゃないヤツなんだな。可愛いやつめ。


 しかし、あれだな。制服以外の姿を一度も見たことなかったけど、かなり似合うじゃないか。


「いらっしゃいませご主人様って言ってみろ」


 俺が言うと、


「死にやがれご主人様ぁああああああ!」


 叫びと共に繰り出した拳は、容赦なく俺に打ち込まれるッ!


 どごーーーん。


「ぐわああああああ!」


 俺は叫びながら空を飛んだ。


「あたしが冥土に送ってくれるわぁああああ!」


 ばごーーーーーん!


 空中コンボが決まった!


「ごめんなたぁあああああい!」


 そして俺はバフォンと天井に突き刺さった。


「たっちー。生きてるー?」


 どうだろ……わからんな。


 とにかく、視界は真っ暗だが、みんなの声は聴こえてる。


「やれやれ、って感じね」

 この声は、生徒会長か。


「おぉ? しなっち、いつの間に」

 やはり志夏が来たようだ。


「私は神出鬼没なの。神だから」


「……むぁあああ!」


「わぁっ、何よ、まつりちゃん。いきなり叫んで。びっくりするじゃないの」

 これはみどりの声。


「お前らもメイドになりやがれぇ!」まつり。


「そんなこともあろうかと、全員分用意してあります!」紗夜子。


 早速良いコンビっぷりを発揮しているようだった。


「さすがマナちゃん! 抜かりないにゃん!」


「えと……あたしもメイドに……?」


「強制的に着せてやる!」


「ひぃぁあああ! はぅ! やめてっ、いやぁ! くすぐったい! てかどこ触ってんの!」


「ふはは、成長がイマイチだなぁ、みどりぃ」


「まつりちゃんに言われたくないのよ!」


「……着てみようかな……」と利奈。


「ってマリナまで!」


「よいっしょ……」


「四面楚歌だね、サハラ」


 紗夜子の声は、なんだかとても楽しそうに弾んでいる。


「~~♪」


「カオリまで鼻歌交じりに着替えてるし! あたしは着たくない! やだ! やだ! やだあぁあああっ!」


「観念しなさい笠原さん!」と志夏。「いくらあなたが過去にメイド服を着たバイトをしていた喫茶店で猛毒料理を振舞って店を潰したことからメイド服を着たくないからって! それが今! メイド服を着ない理由にはならないのよ!」


「うぅぅ……」


「へい、メイド一丁!」まつり。


「可愛いジャン」紗夜子。


「…………」


 みどりの恥ずかしそうな息遣いが闇の中できこえてきた気がした。


 そして、穂高緒里絵が、おかしなことを言い出す。


「ねぇ、でも、一人だけメイドじゃない人が居るよね」


「……………………」


 俺は天井に突き刺さったままで視界が真っ暗だが、全員の視線が、俺に集まった気がした。


「ま、とりあえず……」


 そんな志夏の呟きが聴こえたかと思ったら、


 ずぼっ。


 俺は天井から引き抜かれた。


 ぼてっ。


 尻餅をついた音。


 顔を上げると……。


 素晴らしき景色!


 麗しきメイドたちがそこに居た!


「さぁて、着てもらおうか」


 え……? 着るって何をだい、まつり様。まさか手に持ってるその服か。


「ちょっ、ちょっと待て。俺が? 何で? メイド?」


「自業自得だよなぁ。このあたしに対する無礼の代償としては、むしろ安いもの。さあ、メイドになれ達矢!」


「え、た、助けて、みどり!」


「こうなったら見てみたいわね」


「利奈っちぃ!」


「わたしも見てみたい」


 ダメだこの子たち……。


「おりえちゃん! 助けて欲しいにゃん!」


「たつにゃん。あたしからのDくんの救出依頼を断ったのに、自分ばかりあたしに助けを求めるなんてムシが良すぎるにゃん」


 俺史上、最大のピンチ!


「紗夜子……っ」


「たっちーはね、こういう運命だったんだよ」


「どういう運命だよ!」


「さぁ、さっさと着替えなさい。お祭りはこれからよ!」


 志夏まで……。


「おらぁ! 着やがれぇ!」


「うわああああああ!」


 そして俺は、メイド服を装備させられた……。


 そして生徒会長の伊勢崎志夏が、真面目そうな彼女らしからぬおかしなテンションで拳を穴の開いた天井に向けて突き上げる。


「さぁ、行くわよ! この街を守るメイド戦隊の初出動よ!」


「もう許してくれ! 俺何も悪いことしてねぇだろ!」


「でもさ、しなっち。何と戦うの?」紗夜子。


「風紀委員活動に従事しよう!」まつり。


「まつりちゃん……何かヤケになってない?」みどり。


「あれだにゃん。ほら、『メイド服、皆で着ればこわくない』ってやつだにゃん!」


「また変なこと言って……」利奈。


「まずはミサイルを撃破して、その後に落ちてくる謎の隕石との争いに勝利するために、私たちは結成されたのであります!」


「うわ、級長まで変になってるよ……どうしよう」とみどり。


「ふぇ? しなっちは元々こんなんだよ?」これは紗夜子。


「え。そうなの?」

 みどりが言うと、志夏はまるで緒里絵みたいな口調で、


「そう、猫をかぶってるんだにゃん!」


「にゃんだと……」俺。


「にゃんにゃん?」

 と、おりえが猫語で質問してきたので、


「にゃんにゃん」

 ねこっぽいポーズで言ってみた。


「達矢、ぶん殴っていい?」と暴力女。


「すみません……」

 こわい。まつり様こわい。


「さぁ、ふざけてる暇はないわ。もう、敵の攻撃が来たわよ。まずは……ミサイル」


 志夏は呟き、窓を全開に開くと、その窓から外に飛び出して、上空高く舞い上がった。


「え……?」


 戸惑う利奈と、


「…………風が……」


 呟く紗夜子。


 強風が、皆のスカートを揺らした……。


 俺は、級長が空飛んでるのが、どうしても信じられず、


「何これ……夢?」


「屋上! 屋上に行こう!」まつり。


「うん!」紗夜子。


 走り出した。



 志夏の奮闘及ばず、街は崩壊した。


 瓦礫の中で、志夏は溜息。


「ふぅ、メイド装備でもダメだったか……」








【フェスタ_紗夜子ルート おわり】



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