フェスタ_紗夜子-5
で、俺と紗夜子と穂高緒里絵は、屋上に来た。
ここで、風船にヘリウムガスを注入していこうというのだ。
屋上には、既に何人かが居て、風船づくりをしていた。
なかなかしっかりしてそうな男の子が一人。ありゃおりえの弟っぽいな。
あとは、病弱そうな痩せ型、風間史紘。
そして何と、生徒会長の志夏まで。
――って、既に色んな人に手伝わせてるんじゃねぇか!
皆疲れた顔してて、おりえが一番元気そうだぞ。
「これ、わたし必要?」
紗夜子は不満そうに言った。するとおりえは、
「皆でやった方が、はやく終わるにゃん」
「「「ってオイ!」」」と三人の声。
既に作業にとりかかっていた三人が、一斉に顔を上げ、おりえを咎めるような声を上げたのだ。
「な、何だにゃん……皆して……」
「ねぇちゃんも働きなよ!」
「私が依頼したこと、穂高さんはほとんどやってないじゃない。オブジェもほぼ浜中さんの作品だし」
「僕だって、暇じゃないわけですよ」
「ねぇちゃん……少しは仕事しなよ……」
「やったもん! 見てよ、屋上からの眺め。この街並みを。この街をペンキで塗るように皆に頼んだもん!」
見ると、確かに街は染まっていた。
「実際に体動かしてないじゃない」
「ごめんにゃん」
へらへらしていた。
「また口だけの謝罪なの?」
紗夜子が責めるような視線を向けて言うと、
「はにゃーーーん!」
叫びながら逃げやがった……。
何と言うか……最低だあの娘。
「何なんだ一体……」
そして、フォローするつもりなのかどうか不明だが、志夏が言う。
「そういや好きな人を、ずいぶん気にしてるみたいだったわね。それが何とかならないと、何も手につかないんじゃないかしら」
「なるほど、恋に生きているということか……」俺。
「へ? 誰? カオリの好きな人って」紗夜子。
「あ、えっと……これ、言ってもいいのかな……」俺。
「まさか、まつりさん……ですか?」穂高弟。
「だとしたら女同士なわけですか!」
フミーンが叫んだ。何を興奮しとるんだこいつは。
とりあえず、フミーンの女同士云々ってのには首を振って、俺は言う。
「さっきおりえが言ってたのは、Dくんって男のことらしい」
んでその好きな人が独房入りしたとか何とか騒いでいたが。
「だからって、私が頼んだ仕事を放棄しないで欲しいんだけどね……」と志夏。
「でも」とフミーン。「穂高さんががいくら独房入りしたDくんを助け出そうとしても、まつり様のカベを破るのはあまりにも困難ですね」
「そうだな、モイストされて、頬を引っ張られるのが関の山だろう」
「……よく知ってるわね、たっちゃん……上井草さんの攻撃手段まで……」
「え? あぁ……何でだろうな……」
「たっちーも、宇宙電波を受信できるようになったのかも」
そんな紗夜子の声に、何だか皆から冷ややかな反応。
「さぁ、たっちー。わたしと一緒にやろう」
「何をだ?」
「元気になるおまじない!」
あぁ……あれか。
「「ハンガリー……アーンド……」」
紗夜子と俺は言いながら腰に左手をあてて空に向かって右手を挙げた。手の平を太陽に向ける形だ。
そして――!
「「イターリアー☆!」」
俺と紗夜子はポーズをキメた。
フミーン、おりえの弟、志夏。三人から冷たい目を向けられた……。
「仲良いですね……」
フミーンは苦笑い。
「紗夜子さん……」
穂高弟の悲しそうな呟き。
「はいはい、ふざけてないで風船つくりましょ」
志夏はパンパンと手を叩いた。
「はーい」
返事した。