フェスタ_紗夜子-2
数時間後――。
まだ昼間であった。
「た、ただいま……」
何故か制服が汚れてしまった紗夜子が帰ってきた。
「おう、おかえり」
そして、帰ってくるなり、
「ちょっと……疲れた……。三時間経ったら起こして」
とか言って、席の一つに座ると、すぐに突っ伏して、眠りに就いた。
まだ昼だが、眠りに就いた……。
「え……あの……暇なんすけど……」
そして腹も減った!
俺がここに居る意味って何なんだ。
本当に、メイド服を着ることになってしまうのか!
「戸部達矢の運命やいかに!」
「たっちー! うるさい!」
おこられた……。
「すみません……」
で、紗夜子が眠って、しばらくして……。
ガララッ!
理科室の扉が開き、
「はにゃーーーん!」
甲高い叫び声。またテンション高い子が来た。
今度は何だ?
「しっ、今、紗夜子寝てるから――」
「それどころじゃないにゃん!」
「何だ、どうした? おりえ」
「好きな人が捕まったにゃん」
「は?」
耳を疑った。
「好きな人が、捕まったんだにゃん」
いきなり何言ってんの、この子……。
「え? 何て?」
「あたしの好きなDくんが、まつり姐さんに捕まっちゃったにゃん!」
「それで……紗夜子にどうしろって……?」
「マナちゃんじゃなくてもいいにゃん。誰でも良い。とにかく、たつにゃんでも良いから協力して欲しいにゃん」
ほう、俺の力が必要かもしれないと。だったら話くらいは聞いてやるか。
「どうしろっての……?」
「それがわからないにゃん……忍び込んで連れ出す以外に考えつかないにゃん……」
「でも、待てよ。風紀委員のまつりに捕まったってことは、悪いことしたんだろ」
「そんなことは問題じゃないにゃん」
「何いってんのこの子……」
「嗚呼……Dくん……」
かなり好きらしい。虚空を見つめて神に祈るかのようなポーズをとりつつ彼の名を呟いている。
「いや、しかしなぁ……俺はこの場を離れることができないのだ」
「何で!」
いや……そんな力いっぱい訊かれても……。
「紗夜子から三時間後に起こしてくれって言われてるんだ。だから、そんな時間掛かりそうなイベントは無理だ」
「たつにゃんが独房入ればいいのに!」
新鮮な暴言だな……。
「とにかく、俺はそんな面倒なことに協力したくないぞ。他をあたってくれ」
「うむにゅん……」
おりえは、少し考えた後、
「わかったにょ……」
呟き、トボトボと去っていった。
「何なんだ一体……」