表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
397/579

フェスタ_おりえ-4

 俺は、おりえに連れられて、校舎の一角に来た。


 一見、何の変哲も無い廊下に見えるが……。


「たつにゃん……ここからは気をつけて。赤外線センサーがいっぱいあるから――ってアウチ!」


 ずべんっ。


 おりえは転んだ。


 何してんだ、こいつ……。


 いきなり何もないところで転んだぞ……。


「やはぁ……ころんだにゃん……」


「大丈夫か?」


「はっ! しまった! ここは赤外線センサーエリアの真っ只中! どうしようたつにゃん! 見つかっちゃったにゃん!!」


『ぴゅーい、ぴゅーい。侵入者発見。侵入者発見。ぴゅーい、ぴゅーい』


 なんかチープな音の警報が鳴っていた……。


「はわわわわーっ。どうするにゃん! どうするにゃん!」


 慌てていた。可愛い。


 って、かわいいとかそんな場合じゃないか……。


 ここは、逃げる場面じゃないか?


「おい、おりえ、逃げるぞ。ここは出直すんだ」


「でも、Dくん……」


「俺たちまで捕まったら、助けるどころじゃなくなるだろうが」


 そう、世間で言うところの「ミイラ取りがミイラ」になってしまう。


「冷静になれ穂高緒里絵! 安易に突っ込まず我慢するんだ!」


「うむにゅん、わかったにょ……」


 おりえが頷き呟いたその時――


「くぉらああああああああ!」


 廊下なのに砂煙を舞わせながら、上井草まつりがやって来てしまった!


「そら来た! 逃げるぞ!」


 俺がおりえの手を引っ張った時、


「わにゃんっ!」


 こけっ。


 また転んだ。


 この子は……ほんとにもう……。


「ええい、仕方ない! こうなれば俺だけでも逃げる! 後で助けに来るからな! おりえ!」


 俺は咄嗟にそう判断した。


「ぅえ!? そんにゃ!」


 つまり、おりえを犠牲にして逃げようというのだ。


 我ながら卑怯な男である。


「たつにゃーーーん! 待ってぇええ!」


「オラァ、待て達矢ぁあああああ!」


 その声に、一度振り返る。


 振り返った瞬間!


 俺の視界には、衝撃の光景が広がっていた。


「はにゃーん」


 そう、それは、なんだろう。おりえロケットとでも言うのだろうか……。何と、穂高緒里絵が、空中を飛んで俺に向かって来ているではないか!


「えぇええ! 何それえええ!」


 そして――


 ドムン


 おりえは俺に直撃した。鈍い音がした。


 まさか人間一人を投げ飛ばして武器にするとは……。


 上井草まつり……恐ろしいヤツ……。


「うにゃ~……やらっちゃ~」


 おりえの下敷きになった俺。


「…………」


 まつりは倒れる俺たちを腕組みで見下ろしていた。


「おい、独房に何の用だ」


「まつりがそう言った時、俺の視界にはまつりの紫色の下着が――」


「しねぇええ!」


 ばこーーーん!


「はぐぁあ!」


 俺はやられ声をあげながら吹っ飛んだ。


 まるで一番重い球に弾かれたボウリングのピンみたいに、おりえもろとも弾け飛んだ。


「あぁん? 何の用だって訊いてんだろうが、言ってみろよコラ」


 今度は穂高緒里絵の胸倉を吊って言っている。


「ごめんにゃさい、まつり姐さん……たつにゃんは悪くないんだにゃん……あたしが……」


「ん……? カオリが自分から非を認めて他人のせいにしないってことは……」


 まつりは呟き、素早く首を回し、俺の方を見た!


「キミ! おりえのこと脅したな!」


「――何でそうなるのっ!」


「血祭りだオラァ!」


 そして、おりえを雑に投げ置いたまつりが俺に向かってダッシュしてくる!


 俺は逃げるを選択しようとした。


 しかし、今日のまつりからは逃げられない。まるで、ロールプレイングゲームのボスのごとく、逃げようとしてもそれはシステム的に不可能なのだ!


 あぁ、また俺はこの女の暴力の餌食になるのかっ。


 まつりが右腕を振り上げようとしたその時――


 その腕に、おりえがまとわりついた!


「ん? 何よ、カオリ」


 おりえのおかげで、命が助かった。


 まつりは、おりえを廊下に降ろす。


「ちがうにゃん! あたしは、Dくんを……」


「D? あぁ……そっか、カオリは、そっか……面会しに来たの?」


「ううん、こっそり脱獄させに来たの」


「なんだってぇ?」


 さすがおりえ……。


 風紀委員に面と向かって堂々と脱獄計画の告白とは。


「カオリ、牢屋入りする?」


「やだにゃん」


 拒んだ。そりゃそうだ。


「あぁ、えっと、あたしが言ってるのは、Dくんと同じ部屋に入るかってこと」


「入る」


 即答した。


 どういうことだ。


「でも、その代わりに、達矢が酷い目に遭うけどいい?」


 え……何いってんの、この女……。


「かまわにゃい」


「――おいぃ! おかしいだろ!」


「少なくとも独房入りは免れないわね」


「平気だにゃん」


「こらぁ! それお前が言うことなの!?」


「最初から考えてたにゃん。たつにゃんがDくんのかわりに独房に入れば何の問題もないにゃん」


「フフッ、確かに」


「お前らおかしいだろ!」


「お前……だと? 会ったばかりの人間にその呼び方は失礼だろう。しねよ」


 いや……しねとか言う方が失礼だろ……どう考えても。


「じゃあカオリ、これ牢の鍵ね。今日は特別だかんね。お祭りだから許可してるんだよ。わかるよね」


「うむにゅん。ありがと、まつり姐さん!」


 言って、おりえはステテテッと駆けて行った。


「さ、達矢。キミはこっち来い」


「え? あの……まつり様、どこに……?」


「こっちだっつってんだろうが!」


 そして、カチャリと音がして、俺の腕に掛けられたのは……。


 手錠。


「って、ててて、手錠ォゥッ!?」


「今日のあたしは機嫌が良い」


 俺の腕を引っ張って歩く上井草まつり。


「あの、機嫌良いなら解放してくれませんかね……」


「それはできない相談だな」


 そして、まつりは、廊下のカベの前で立ち止まった。


「おい、何でこんな所で止まるんだ。ここは何も無いカベだぞ」


「ふっ、実はこの何の変哲も無い壁が、あたしの魔法によって変わるのよっ」


「魔法? お前、そういう夢のある子だったの?」


 で、まつりは、


「マジカルマジカル、フェスティバル!」


 呪文を唱えるようにそう言って、


「うおらぁ!」


 バゴン!


 正拳突きで壁を崩落させて大穴を空けた。


 何なのこの子。


「ほらな、隠し部屋が現れた」

 まつりがしたり顔で指差した穴の中を見ると、確かに空間があって、下り階段がある……。


「何で隠されてるんだ……?」


「この階段を下れば、特別室」


「其の下り階段の奥には、漆黒の闇が広がっているようであった」


「そうだ、達矢。ここは極悪人専用特別更生室。しかも……」


「しかも……?」


「しかも、喜べ。今まで一度も使われたことない部屋だぞ」


「何故そんな部屋に俺が入れられねばならんのだ……?」


「戸部達矢の名は、未来永劫、キミが死しても語り継がれることになるだろう」


 言って、ビシリと指をさしながら、


「初の特別室入りは戸部達矢という記録がな!」


「うれしくない! うれしくないです! 不名誉な記録を残さないでくれ!」


「いいからとっとと入りやがれっ」


 げしっ。


 俺はまつりに蹴落とされ、階段を転げ落ちた。


「ごゆっくり!」


 そして、俺が入ったかと思ったら、目の前の鉄扉が自動でガダンと閉じた。


 そこは無明の闇の中。


「ひぃあ……」


 俺は怯んだ。


 目の前の、その闇に。


 本当に何も見えない。一筋の光も無い。


 ……こわすぎるぞ。


 しかし、この闇の恐怖に打ち勝てれば、俺は悟りを開ける気もしている!


 ――だが無理だ!


 絶対無理だ!


「暗いのこわいんじゃぁああああああああ!」


 俺は恐怖に負けて叫んだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ