フェスタ_おりえ-1
「さぁ、誰を手伝うの? たっちゃん!」
「おりえにするか」
俺はそう言った。
「穂高さんを選ぶなんて、たっちゃん……。まさか、そういうことなの……?」
どことなーく蔑んだような視線を送ってくる志夏。
「どういう意味だ」
「ロリコンなの?」
「――ちがっ……」
「まぁいいけど」
何なんだ一体。何で穂高緒里絵を選んだことでそこまで言われなきゃならんのだ。だいたい、年齢からすれば、高校生なのだから、おりえはロリには入らないんじゃないのか。確かに見た目は、どう見ても未成熟だけども。
「まぁいいわ。穂高さんはえっと……その辺の廊下に居ると思うから、ブラブラしてれば会えるんじゃないかしら」
「何か、ずいぶん適当だな……」
「穂高さんがテキトーな人なのよ」
「えっと……志夏は、おりえと仲悪いのか?」
「そんなことないけど」
まぁいいか。
「じゃあ、そうだな……とりあえず廊下をブラブラしてみるか……」
「いってらっしゃい」
俺は生徒会室を後にした。
言われた通りに廊下をブラブラしてみる。
祭りの準備で騒がしい廊下をしばらく歩いたら、比較的静かなエリアに来た。校舎三階の、とある一角。理科室のあるあたりだ。
その今の学校の中では比較的静かで、喧騒が遠くから微かに聴こえてくるような場所を歩いていて、ある曲がり角に突き当たった時――
トスン、と俺の腹の部分に何かがぶつかった。
あれ、この感触、以前にもあったような。
「わひゃおう!」
高い裏返った声。女の子の奇声だった。
後、光る廊下の上に、何かがパサっと落ちた。
手紙のようだった。
「いたぁい……」
下を見ると、女の子が尻餅をついていた。
小さい子。
どう見ても幼い感じの、ロリな子。
どう見ても穂高緒里絵だった。
まさか本当に廊下をぶらぶらしてるだけで会えるとは。
「おりえじゃないか」
「あ、たつにゃん! いきなりぶつかってくるなんて最低だにょ!」
ぶつかって来たのは間違いなくお前だ。だが、まぁ、こいつは知り合いに対しては全部責任を押し付けたがるという最低な女の子なのだろう。
つまり、大抵の人にとっては知り合いじゃない時の方が好印象なのだ。
実際、遠くから見てりゃ可愛い感じだからな。
「次から気を付けてよねっ! ばいびー!」
言って、おりえは去って行った……。
俺の足元に、謎の手紙を残して……。
「そそっかしいヤツだな……」
とりあえず、その穂高緒里絵の落とした手紙を拾ってみる。
宛名は、と。
『大好きな人へ』
「…………!」
なっ……何だと?
これは、あれじゃないか……。
ラヴレター。
状況から考えるに……
どう考えても俺宛てッ!
つまり、こういうことだ。わざと俺にぶつかり、スキンシップと同時にインパクトを与える。まさに恋の上級テクニック!
つまり、手の込んだ逆ナンパ!
「何だ、そういうことか。俺も罪な男だゼ☆」
俺は手紙を手に、穂高緒里絵を探した。