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フェスタ_まつり-4

 翌日。文化祭当日である。


 通学路が無駄にカラフルになってたり、いつの間にか周囲の雰囲気が完全にお祭りモードになっていたり、知らぬ間に中庭に謎のオブジェが完成していたりしていた。


 校門には『ウィンドミルフェスティバル!』という楽しげな文字が書かれた看板が掲げられ、本当に一日でお祭りモードに仕上げてきやがったぜ、と驚愕したい。


 不良集団のえんにちも完成し、『不良A派』の店と、『男子生徒D派』の店がシノギを削っていた。


「金魚すくい! ワッホウ!」不良A。

「たこ焼きィ! やきそばぁ! お好み焼きィ! 安いよオ!」B。

「チョコバナナー! チョコバナナー!」C。

「かき氷ィ!」不良D。

「かざぐるまぁいかがっすかー!」E。


 ここまでが『不良A派』のようだ。

 そして、


「いらっしゃいませー、いらっしゃいませー」男子生徒D。

「射的ィー! 射的ー!」不良F。

「はいはいはいはい、バナナの叩き売りィ! バナナ! バナナぁ!」不良G。

「型抜きもあるよー」不良H。


 こちらが『男子生徒D派』である。


 両陣営が、中庭を二分していたわけだ。


 そして……双方に共通してある出し物が……!


 なんと!


 ――人間モグラたたき!


 驚いた。人間モグラたたき……採用されたのか……。


「人間モグラたたきぃ、一回千円」不良A。


「こっちは一回五百円!」男子生徒D。


「何だと……じゃあこっちは百円だ!」A。


「五十円!」D。


「くっ……こっちも五十円だ!」


「五十円」


「五十円!」


 値段は五十円に落ち着いたようだ。


 そこに、一人の巨乳ちゃんがやって来た。


「あ。人間モグラたたきやります」


 彼女こそ、女子Aちゃんである。背景(もぶ)キャラではあるが、けっこう可愛いのである。


「おう、五十円だ」


 彼女は、不良Aグループの方を選んだらしい。


「はい、五十円」


 女子がお金を払うと、不良Aはピコピコハンマーを女子に手渡し、


「イージー、ノーマル、ハード、マニア。四つのモードを選べるぞ」


「イージーで」


「てめぇら! お客さまだぞ! モグラ用意!」


「「「「アイアイサー!」」」」

 整列した。


「点呼!」


「イチ!」B。

「ニ!」C。

「サン!」D。

「シ!」E。


「よし! 入れ!」


 そして、横長のダンボールに不良どもが入り、準備を完了した。


「叩ける時間は百秒間たたき放題! それでは、スタートォゥ!」


 大きな体から発せられる、太い声の号令で、合図がかけられた。


 そして、不良どもが首を出したり引っ込めたりを開始した。


「あっはははは」

 ぴこっ、ぴこっ。


 笑いながら叩いてる。大きな胸を揺らしながらでもあるので、わりかし眼福。


「見てんじゃねぇよ!」

 金髪が通行人に罵声を浴びせながら。


 ぴこっ。

 叩かれる。

 引っ込む。


「オラァ! 叩けるもんなら――」赤モヒカン。


 ぴこっ、ぴこっ。

 叩かれる。

 引っ込む。


「ボーナスターイム! 連打したまえ!」


「わひゃーーー!」

 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴこっ!


「ばっちこいやぁ!」リーゼント。


 ぴこっ。


「痛くねぇんだよオラァ!」弱そうなメガネ不良。


 がつっ。


 あ、ハンマーの硬い部分が当たった。


「いてぇじゃねぇかコラァ!」


 ぴこっ。

 叩き直されていた。


「あはっ」

 巨乳の女子Aちゃんは、実に楽しそうである。


「ラスト十秒! てめぇら! 頭を出せぇ!」

 と太い声。


 そして、不良どもが最後の十秒間、頭を出したまま叩かれ放題の中で、


「終了だコラァ!」


 終了した。


「あっはぁ! 楽しかったぁ!」

 思ったより人気だった。


 で、そんな不良の声だけが大きくて、人口密度の低い中庭をボンヤリと眺めていたところ。


「達矢、おはよう」


「ん、ああ。おはよう」


 上井草まつりがやって来た。


「そういや達矢、きいたわよ」


「ん? 何をだ」


「不良どもをマトモに営業させるために、営業成績を競わせるなんてなかなかの敏腕ね。人間モグラ叩きも繁盛(はんじょう)してるみたいだし」


 いや……それほどでもないと思うが。


「あたしだったら、全員ぶっ飛ばして病院送りか独房行きにしてたとこだったから助かったわ」


 いやいや、こいつ、おかしいだろ。


「ところで、まつり、お前は何かやってんのか?」


「え? 何かって?」


「いや、店とか、イベントとか」


「何も」


「そうなのか」


「あたしは風紀委員だからな。校内をパトロールする」


「パトロールか」


「パトロールがてら、ゲーム大会を荒らしたりする予定」


「へぇ……」


 と、まつりと会話をしていた時だった――。


「てめぇ! ふざけんなよ!」


 何やら騒ぎが起きた。


「アァ? 何だよテメぇ!」


「てめぇが売ってるチョコバナナは、元々こっちで叩き売ってたもんだろうが!」


 そう言ったのは、バナナを手にした不良Gで、言われてるのは赤いモヒカンの不良だった。


「それがどうしたんだオラァ! 勝手に叩き売ってただけだろうがぁ!」


「何だとてめぇ! やんのかオラァ!」


「上等だゴラァ!」


 剣呑だった。


「また騒ぎが起きてるみたいね。鎮圧してくるわ」


 まつりは言って、つかつか言い争う二人に近付いていくと、


 ばこーーーん!


 一瞬にして不良Cと不良Gの二人は吹っ飛ばされた。


 言葉を失う俺……。


 うつ伏せで、完全に沈黙する不良二人。不良CとG。


 というよりも、中庭全体が恐怖によって静まり返った。


「さて、バナナ屋は達矢! キミが受け継ぎなさい。風紀委員補佐として!」


 なんか、よくわからん命令されたぞ。


「あの、大丈夫なのか? あの二人……?」


「死なない死なない。あいつら不死身だから。せいぜい病院送りじゃない?」


 明らかに傷害だろ……あれ……。


 この町では、あんなことしても捕まらないのかよ……。


 おそろしいところだ……。


「おい、達矢、返事は?」


「え。あ、おう……」


 逆らえない。


 こいつは強すぎる。


 逆らって病院送りにされたくはない。


 本当におそろしすぎる……。


 俺は言いなりになり、バナナ屋を引き継いだ。


「それじゃあ、あたしはパトロールしてくるから! 中庭の平和はよろしくねっ」


 言い残して、まつりは去っていった……。


 中庭の平和ねぇ……。


 そんなもの守れる気がしないぞ……。


 ともあれ、俺はバナナ屋店主になった……。


 ……えっと、何だろな、バナナ屋って……。




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