フェスタ_まつり-3
不良どもが戻ってきた。
ダンボールとピコピコハンマーを抱えて。
「それで? どうするんだ? 達矢」
「ええと、どうしようかな……ダンボールを、切ったり組み立てたりして、人が何人か入れるような空間を作って……。ダンボールの高さとしては、お客さんが叩きやすいように腰くらいの高さが良いと思う」
「達矢の言う通りに作れぇ!」
「「「「はいっ! まつり様!」」」」
不良どもは、まつりに従った。
やがて、横長の巨大な人間モグラたたき装置が二つ、完成した。
頭を出せるくらいの円い窓が六つある頂面。そこから、不良どもが頭を出したり引っ込めたりするというわけだ。
「できたみたいね、達矢」
「あぁ……そうだな、まつり」
「さぁ、キミたち! この中に入りなさい」
不良どもは、屈辱に体を震わせながらも、ダンボールの中に入った。
「さぁ、首を出したり引っ込めたりしなさい!」
不良どもは、円くくり抜かれた窓から、首を出したり引っ込めたりしている。
「あっはははは!」
笑っていた。そして……。
ぴこっ。ぴこっ。ぴこっ。
不良どもの頭を叩いていく。
「…………」
ああ、何これ。何か……すっごいシュール。
不良らしくカラフルな髪色の人たちがピコピコハンマーで叩かれてる。
「あっははは、これ面白い。面白いよ達矢ぁ!」
楽しそうだった。
ぴこっ。
「うふっ」
飛び出すモグラを次々に叩いて楽しそうだった。
無言で淡々と、頭を出したり引っ込めたりするモグラたち。
「おりゃっ、おりゃっ」
ぴこっ、ぴこっ。
「達矢もやりなよっ! 面白いよっ」
まつりが俺の方を振り返りながらそう言うと、
不良どもは、モグラたたきから一斉に首を出し、俺の方をにらみつけた。
「いや……遠慮しとく……」
後がこわすぎる……。
「えいやぁ、えいやぁ」
ぴこっ、ぴこっ……。
まつりの人間モグラたたきは、しばらく続いた。
結局、まつりが叩き疲れて帰るまでずっと、中腰でスクワット運動をしていた不良ども。
陽はすっかり落ちて、夜になった。
不良どもは全員立ち上がれず座り込んでいた。
さすがに疲れて俺に攻撃を仕掛けてくる余裕は無いようだった。
「クソッ、何だ、人間モグラたたきって! オレたちが目指していたのは、えんにちだったはずなのに!」
チャラチャラ系不良のリーダー格である男子生徒Dくんが言うと、
「おのれ上井草まつり……」
バラエティ系不良のリーダーである不良Aが低い声で呟いた。
「こうなったのも、てめぇらがケンカふっかけてきたから……」男子D。
「何ィ?」不良A。
「ケンカすんなって」俺。
全員に、ぎろっとにらまれた……。
こわい。
「これじゃ、どっちのグループが上なのか、わからせてやることができねぇじゃねぇか……」
と、男子生徒Dくんが言えば、Aさんも、
「それはこっちのセリフだ。おのれ……風紀委員のヤツめ……」
その時、俺は思いついた。
「なぁ、俺は思ったんだが、文化祭の売り上げで優劣を競ったらどうだ?」
しばしの沈黙の後、
「良い考えじゃねぇかこのクソ野郎」不良A。
「最初からそれ提案しやがれ殺すぞ!」不良G。
褒めてんのか脅してんのか何なのか……。
ともかく、
「明日の文化祭本番!」A。
「売り上げで勝負だ!」男子生徒D。
そういうことで、まとまったらしい……。
ところで、男子生徒Dと不良Dが、同じDって名前で、超まぎらわしいんだけど。




