フェスタ_達矢-3
一通り、一階をのぞいた後、二階へ。
校舎二階は、部活の出し物でもなく、クラスの出し物でもない。
やりたい人が自由に色々やっている感じだ。
たとえば教師たちによるクイズイベントだとか、パソコン同好会主催のゲーム大会だとか。
その中で、目に留まったのが……。
『本子の占い』
という看板。
本子って誰だ……。
気になったが、入ってみる気にはならんな……と思ったその時だった。
「あ、達矢!」
間の悪いことに、背の高い女に声を掛けられた。
「あれは……たしか……鬼の風紀委員……」
女はズカズカと近付いてきて、そして、
「おい達矢、お前、文化祭実行委員のくせに、何サボってんだよ」
とか言ってきた。
「いや、俺はだな、志夏から『自由にしてていいわよ』って言われたから」
「ははーん。戦力外通告されたわけだ。かわいそうに」
「何ぃ?」
そうなのだろうか。
言われてみると、そんな気もしないでもない……が。
何となくコイツにそういう物言いをされると腹が立つんだが。俺の闘争本能に火が点きかけてしまう。ただ、何故だかはわからないが、戦っても勝ち目が無さそうなので、ここは冷静になるべきだろう。争いは、憎しみを生んでしまうから、忌避したいんだぜ……。
「ま、それなら、あたしが何かを言う権利は無いわね。今回のイベントに関してのボスは志夏だし」
「そうっすか……」
「あたしは今、風紀委員としてパトロールをしつつ、これからパソコン同好会のゲーム大会に参加するんだけど、よかったら見てく?」
「へぇ、お前もゲームとかするのか」
「勝負する?」
「いや、遠慮しとくぜ」
あいにく、今の俺は戦いを好まないんだ。確かに暇ではあるけれど、何となく暇ではないような気がしてて、ゲームなんて楽しくも疲れることをやるような気分じゃない。
「まぁ、後で興味があったらのぞいてみろ。百人抜きくらいする予定だから」
「あ、ああ」
「じゃあな」
「ああ。またな」
そしてまつりは、パソコン同好会のゲーム大会の会場へと消えた。