フェスタ_達矢-1
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「さぁ、誰を手伝うの? たっちゃん!」
志夏は言って、俺の返答を待った。
ぶっちゃけ、祭りなんぞ、面倒くさかった。
とはいえ、面倒だやりたくないなどとはっきり言うのもはばかられるというもの。
「いや……」
と言葉を濁すことしかできない。
「まさか……私を手伝いたいとか言うつもり?」
志夏を手伝うのも、何か違う。今の俺は、何にも縛られたくないのだ。
もう、この際だ。正直に言おう。俺は自由が欲しいと。
「俺は誰も手伝わねぇ!」
「まぁ、反抗的……」
「だいたい、無理矢理連れて来て手伝わそうなんて、おかしいじゃねぇか。拉致して強制労働なんて、マトモな人間のすることじゃねぇよ!」
「だって、神だもの」
「はい……?」
何言ってるのこの子。神とか言ったか?
「まぁ、手伝いたくないのなら仕方ないわね。私も今は人として生きている身だわ。好きにして良いわよ」
「え?」
「たっちゃんに、自由行動を許可します」
「でも……良いのか? 俺だけ」
なんと、俺は戸惑った。自分で願ったことだとしても、突然自由を与えると言われると、何をすれば良いのかわからなくなるのは俺だけじゃないと思う。
とはいえ、よく知らない誰かを手伝うなんて、やる気の無い俺はまっぴら御免こうむりたい。
「まぁ、いいんじゃない? 皆、そんなの気にしないちょっとアレな子たちだし」
「そ、そうか。じゃあ、お言葉に甘えて……」
俺はそう言って、
「うん、じゃあね」
志夏の声を背中で聞いて、生徒会室を出た。
さて……いきなりやることがなくなったぞ。
俺は、何もわからないまま生徒会長を名乗る女に連行され、突然自由を与えられた。
……何なんだこの展開は。
転校初日から文化祭だのウィンドミルだのフェスティバルだの。何が何だかさっぱりだ。
ここは、現実逃避も兼ねて……とりあえず寮に帰るというのはどうだろうか。
そうだ。
そうしよう。
俺は元々そういう不真面目な子なのだ。
前の学校では無断遅刻とサボタージュを繰り返し、その恥ずかしいほどの無気力の末にこの街に送られてきたという経緯がある。
いきなり文化祭なんて、転校早々やってられっか、といったところだ。
さぁ、それでは帰るとしよう。
俺の寝泊りする寮の一室に。
そして無人の寮に戻った俺は、特にやることもなくゴロゴロして過ごし、いつの間にか眠り……。
次の朝を迎えた。




