表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
372/579

RUNの章_時代はRUN世-8

 昼休みの廊下を六人が練り歩く。


 みどりを先頭に、どこからか用意した『まつりちゃん被害者の会』と書かれた戦国時代の軍旗みたいな形をした巨大な旗を持って。


 周囲の生徒たちのヒソヒソ声が、風に乗って聴こえて来る。


「内乱らしいわよ、風紀委員補佐が二人ともRUNちゃん側についたって……」

「それどころか、風紀委員の幼馴染が全員反旗を翻したらしい」

「しかも理科室の幽霊まで一緒だって……」


 そして、三年二組の教室の扉を開くと、まつりが居た。


「よお、皆! 遅かったじゃ――」


 言い掛けて、言葉を失ったようだ。


「まつりちゃん。こういうことだから」


「は、反乱……」


「少しは反省すると良いのよ! バーカ!」


 みどりさんはお怒りのようだ。もうちょい大人しくておしとやかな可愛い子だと思ってたんだが、猫かぶってたんだな。


「な……ななな……なんで、カオリまで、マ……うそ……マナカまで?」


 驚いた顔。


 いい気味だぜ。


 と、その時、高らかな笑い声が響いた。


「ハーッハッハッハ! 上井草まつりィ! 仲間にも見捨てられたようだなぁ!」


 RUNちゃん親衛隊を名乗る不良どもまでやって来た。


 さらに、アイドルオタクっぽい集団までやって来て、


「RUNちゃんと勝負しようなんて、百年早いんだよ! 思い知ったか、上井草ァ!」


 まつりは完全に孤立した。元々孤立気味だったのに、俺たちにまで裏切られたまつり。かわいそうな、まつり。


「……あ、あの……まつりさん! 僕は――」


「こら風間くん。まつりちゃんのためにならないってさっき言ったでしょ! 甘やかしたらつけあがるだけなんだから、このバカは」


「そ、そうでした、すみません、みどりさん」


「フミーン……お前もか」


「さぁ、おとなしく、あたしたちに今までのことを()びなさいよ! そしたらまた味方になってあげてもいいわよ!」


「そ、そんなこと言われて、誰が謝るか!」


「またプライドとか言うの? 良いの? あたしとか戸部くん抜きで、RUNちゃんと対等に勝負できるとでも!?」


 何か、予想以上に強硬な態度だな、みどり。


「それは……」


「負けたら、風間くんも戸部くんも、RUNちゃんのものになっちゃうけど、それでも良いの?」


「…………うぅ」


「ごめんなさい、と。あたしや、マリナや、カオリや、そして何よりマナカに。言うべきなんじゃないの?」


「やだ!」


「何で!」


「やだから!」


「わからずや!」


「強要された謝罪になんて、意味ないもん!」


「何それ! いつも、まつりちゃんがやってることでしょうが! 『あやまりなさい』って上から目線で言って、頭下げないと暴力だもん!」


「ううっ……」


「独裁。弾圧。そんなんじゃ、誰もまつりちゃんに清き一票なんて入れない! 票が入るとしても、そんなの、穢れちまった一票でしょ! そんなんでRUNちゃんに勝てるの? 勝っても、勝ったって言える?」


「べ、別に、RUNちゃんと戦いたくなんてないもん」


「じゃあ、ほら、RUNちゃんに頭下げたら?」


「へ? ウチが何?」

 ランちゃんはランちゃんで当事者の一人だと言うのに暢気(のんき)だった。


「やだぁ」とまつりは泣きそうな声を出す。


「やだぁ、じゃないわよこのクソガキ!」


「なっ……」


「今まで、どれだけの人が圧政の下で苦しんで来たと思ってるの?」


 このみどりの言葉に対しては、クラス中が「そうだそうだぁ!」と答えた。


「皆を解放しなさいよ! この甘えん坊さん!」


「なんだよ! みどりのくせに!」


「ふん、暴力でしか人の上に立てない人なんて、あたしの貧困な語彙じゃ『無能』以外の言葉で言い表せないわ!」


「…………無能……」ずーん。


 精神ダメージを受けている。


「他人に多大な迷惑かけてしか生きられないようなら、死んじゃいなさいよぅ!」


「…………」涙目だった。


 うそだろ……。


 あの、上井草まつりが泣きそうだ。


「これも、いつもまつりちゃんが言ってることなんだからね! いっつも。『死んじゃえ』って!」


「う、うるさい!」


「今、ここに宣言します! 『まつりちゃん被害者の会』会長である。あたし、笠原みどりは! RUNちゃんを応援します!」


 クラス中に「うおおおおおおおおおお!」と歓声が響く。喝采だった。超盛り上がってる。


「RUN! RUN! RUN! RUN!」

 クラス中を包み込むコール。


「RUN! RUN! RUN! RUN!」

 さらにランちゃんコールは広がっていき、学校全体からランちゃんコールが響いてる。


「ちっくしょおおお! 全員死ねぇええええ!」

 まつりはそのRUNを後押しする声の中を悔しそうに叫び、涙を溜めながら教室の外に駆け出て、


「うぁあああああああん」


 そのまま遠ざかっていった。


「RUN! RUN! RUN! RUN!」


 学校中がランちゃんの味方だった。


 ふと、みどりの横顔を見ると、とても心配そうな表情をしていた。


「みどり、良いのか? 追いかけなくて」


「知らないわよ。まつりちゃんなんて。それに、まつりちゃんが大人になるチャンスだもん。そんなことより、RUNちゃんの所に行きましょ……ってあれ? RUNちゃんは、いずこへ?」


「あれ?」


 見当たらないな。さっきまで教室に居たはずだが……。


「となれば……」


 行き先は一つしか無いだろうな……。


 喧騒を逃れて、屋上に行ったのだろう。


「心当たりが?」


「ああ、行こう。屋上だ」


「うん。皆! 行くよ!」


 被害者の会は拳を突き上げる。


「「「「おーーーーー!」」」」

 屋上に向かう事にした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ