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風車は力強く回転を繰り返し規格外の強風は坂を駆け抜けてゆく  作者: 黒十二色
番外編_大場蘭(ドキドキ☆真夜中の学校探検)
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幕間_13_学校爆発事件と華江さん

 それは、着物の人の若かりし頃。


華江「おーい、宮島くーん!」


宮島「む?」


 振り返る宮島ムキムキ


 坂を元気よく駆け下りてきた穂高華江は、宮島の前に立つと、


華江「宮島くん、ロケット打ち上げようロケット」


 とか言った。


宮島「ロケットぉう? ワシのロケットはそんな何の目的もなく打ち上げるほど、安っぽいものではないぞ、穂高クン」


華江「卒業記念だよ」


宮島「ふむ……それなら話は別じゃ。よかろう、景気いいのを打ち上げようではないか」


華江「そうか! ムキムキのくせに話がわかるヤツでよかった。それじゃあみんな呼んで来るから、ロケット持って湖の前に集合な」


宮島「おう」


華江「あ、カノジョも連れて来いよ。秘密にしたってバレてんだからな。穂高家の情報網甘く見るなよ」


 情報網、というよりは、単に田舎なだけであるが。


宮島「うぐっ、何故それをっ!」


華江「じゃあなー!」


 穂高華江は、坂を駆け上って行った。


 卒業式を終えたばかりの学校に向かって。





 数十分後、湖の前。


華江「さぁ、三浦(後の板前)、深谷(後の男子寮長)、笠原(後の万屋店主)。ショータイムだ」


三人「「「はい! 華江姐さん!」」」


 湖の前に集合したのは、華江、三浦、深谷、笠原、宮島の五人。女性一人に男性四人という組み合わせである。ちなみに、宮島は恋人を連れて来ていなかった。


華江「ここに、宮島くんが用意してくれたロケットがある」


深谷「ええ、ありますねぇ」


華江「宮島くん、このロケットさ、人乗れないの?」


宮島「最初につくったワシのロケットは人が二人入れるように造ったんだがな、重すぎたようで飛ばなかった。そこで軽量化と小型化をすすめていって、今の形に至るわけだ」


華江「あんたのロケット建造の浅い歴史なんてどうでもいいんだけどな、乗れるの? 乗れないの?」


宮島「頑張れば乗れると思うぞ。そういう風には作ってないが」


華江「というわけで、三人とも、がんばれ」


三浦「――えぇっ?」


深谷「無理無理無理!」


笠原「穂高さん、おかしいってぇ!」


華江「何ビビってんだよ、三人して。男のくせに」


三人「「「そんなの関係ないぜ! 無理だろどう考えても!」」」


華江「何て奇跡的な声の揃え方してんだ。ぶっ飛ばすぞ」


三人「「「すみません……っ!」」」


宮島「まぁ、ワシのロケットが安全かどうか、一度目の飛行を確かめてからで良いのではないか? 穂高くん」


華江「うーん、それもそうね。作った宮島くんが言うんだから、そうしようかね」


三人「ホッ……」


華江「何安心してんだ、第二ボタンちぎるぞ」


三浦「え……華江さん、僕の第二ボタン欲しいんですか?」


華江「ちぎって捨てるんだよ」


深谷「じゃあ、まさかオレの第二ボタンを欲しているのかっ!」


華江「焼却炉投げ込むぞお前の第二ボタンなんて」


笠原「…………」


華江「ん? 笠原。お前、第二ボタンどうかしたか? 手で覆い隠すようにして……」


笠原「な、なくしました」


華江「何故目を逸らす?」


笠原「いえ……あの……渡す約束を……」


華江「ちょっと見せろ」


 ばっ


笠原「あっ……」


華江「なくしたって言ってたのに、あるじゃないの。第二ボタン」


笠原「こ、これは第二ボタンにして第二ボタンにあらず……」


華江「何いってんだい」


笠原「…………」


華江「誰に渡すんだい?」


笠原「…………」


華江「答えな」


笠原「いや……その……」


華江「答えなって言ってんだろ!」


笠原「と、隣村の女の子です!」


華江「隣村だぁ?」


笠原「もういいでしょ、ほら、ロケット飛ばしましょうよ」


華江「じゃあ、お前、ロケットに乗れよ。朝に岩に張り付く図鑑の爬虫類のように、ロケットにしがみつけよ」


笠原「そ、そんなのっ……」


華江「そうだ、隣村まで運んでやるか。ついでにいけ好かない隣村の連中もぶっ潰せるかもだしな。お、我ながらグッドアイデア。宮島くん! 行き先を隣村にセットしてやって!」


笠原「ちょっとちょっとちょっとちょっと! 殺す気ですか! 穂高さん!」


宮島「穂高クン、残念ながら、ワシのロケットは、今はまだそんなに精密に行き先を設定することはできない。いずれ、ワシの生きているうちに正確にコントロールできるようにしてみせるつもりだ」


笠原「た、助けてくれ、三浦! 深谷!」


三浦「頑張れ、笠原!」


深谷「まけるな! 笠原!」


笠原「くっ、何て薄情な……」


二人「「第二ボタン渡す約束があるような奴は、少しくらい痛い目にあえばいいんだよ!」」


華江「さぁ、捕まえたぞ。すぐにくくりつけてやるからな。飛んでけ! 隣村まで!」


笠原「だ、誰か、助けてくれぇ! 離せ、離せぇ!」


宮島「おっと、間違って点火しちまった!」


華江「なにぃ! まだ笠原をくくりつけていないよ?」


宮島「ワシとしたことが、うっかり!」


 ジリジリジリ……。


 導火線を炎が焼いていく。


 そして炎は、すぐにロケット本体へ辿り着いた。


 ドドドドドドドドドッ!


 爆音と震動と噴煙を発しながら、ロケットは離陸した。


 高く高く舞い上がり、風に乗って……。


華江「あらあら……?」


宮島「あっちは、学校じゃあ……」


笠原「あ、あぶなーい!」


 そして、爆音と、爆発と、爆風。


 風車の村特有の海からの風が吹いていたが、それを押し返すほどの熱風が、五人を襲った。


華江「えーと、どうしようかねぇ……」


三浦「学校……の建物……なくなったね……」


深谷「華江姐さん、どうしましょう」


華江「とりあえず……ほとぼりが冷めるまで隣村に逃げようか。ウチに秘密のトンネルがあるんだよ。そこを使えば、隣村まで行けるから」


笠原「な、何だって! そんなトンネルが!? じゃあ、船に乗らずに隣村まで行けるってことかぁ!」


華江「使用禁止だけどね。でも今回は仕方ない! 皆! ついてきなっ!」


三浦「はいっ!」


深谷「了解です!」


宮島「おう」


笠原「行きましょう!」


華江「走るよ!」


 五人、駆け出した。


 幸い、怪我人は一人も出なかった。


 ただ……学校と、学校のそばに建てられていた神社が壊れた。





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