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最終章_6-4

 急いで隠れ家に戻ると、


「おかえりー」


「早かったわね」


 部屋の中には二人が居た。アルファと、明日香。


「って、二人……? 那美音と利奈っちは?」


「二人なら、武器を取りに行ったわよ」


「ほう……」


「ソフトクリーム♪」


 アルファは言って、手を伸ばしてきた。


「ん、おう。ちょっと溶けかけてるけどな」


 俺は、アルファにソフトクリームを手渡した。


 受け取って喜ぶアルファ。


「アイスクリーム♪ アイスクリーム♪ ソフトクリーム♪」


 ごきげんだった。


「で、私のバナナは?」


「あぁ……明日香のは……」


 俺は言いながら紙袋の中から少々ヤバイ臭いを放つ黒い物体を取り出す。


「うっ……」


 顔をしかめていた。


「これしかなかった」


 俺は言った。


「これ、腐ってんじゃないの。ふざけんじゃないわよ。小指の骨折るよ?」


 なんか、おこられた。


「骨折る宣言、こわいからやめてください」


「これじゃ、熟し過ぎじゃないの」


「そうなのか」


「どうみたってそうでしょうが」


「俺はてっきり焼きバナナかと」


 見た目は、本当にそんな感じだ。だとしたらコゲてるけどな。


「だとしたら丸コゲじゃないの」


「かもしれん……」


「まぁ、食べるけどね」


「ちょっ、食うのかよ……」


「何? 悪い?」


「いや……無理して食べなくても良いんじゃないか? 腹こわすぞ」


「バナナを捨てるなどという飽食(ほうしょく)は、私の前では許されないわ!」


 言いながら、皮をむいた。


 中はなんか茶色かった。


「なぁ、やっぱやめといた方が良いんじゃないか?」


「いいえ、私はバナナに愛されているはず。だから、バナナを食べて体調がおかしくなることは無いわ!」


 そして、明日香は、そのバナナを食べてしまった。


「もぐもぐ……うっ――」


 ぱたり。


 お約束のようにパタリと倒れる。


 と、その時、ソフトクリームをあっという間に食べ終えたアルファが、


「……はれ? おにーたん」


 首をかしげて俺を呼んだ。


「んと、何だ?」


「おねーたん、どうしたの? ぐったりしちゃったけど」


「さぁな……」


 俺は、黒いバナナたちをゴミ袋に入れながら答える。


「……では、あたしが診察します」


「診察? お医者さんごっこか?」


「ううん。ごっこじゃないよ。あたし、医者だもん」


「そうなのか」


 まだ幼いのに、すごいな。本当だとしたら、だが。


「天才ですから」


「じゃあ、医者ってことは、大学とかも……」


「主席で卒業しました」


 それは、天才っすね……。


「闇医者の免許も持ってますよ」


 ん、闇医者の免許って、何かおかしくないか……?


 いや、まぁ良いか。


 とにかく、医学知識を持っているということを主張しているようだ。


「よし、ではアルファ。明日香を診察してやってくれ」


「はい。どう見ても食あたりです」


「だろうな……」


「そしてこれが、あらゆる症状に効果を発揮する伝説で幻の妙薬!」


 アルファは言って、どこからか紫色の液体の入ったビンを取り出した。


「伝説で……幻の……妙薬?」


 すげぇ胡散臭いぞ。


「これを一滴飲ませれば、たちどころに快復するでしょう」


 アルファは、どこからか取り出した布きれにその液体を少量染み込ませ、明日香の口にくわえさせた。


 すると、明日香は、がばっと起きた。


「おう、おはよう」


「……バナナのコスプレした男に襲われる夢を見たわ」


「三分の一くらい正解だ」バナナって部分だけな。


「悪い、夢だったわ……」


「おにーたん。完治しました」


「よくわからんが、すごいな。よくやったぞ、アルファ」


 頭を撫でた。


「へへへ」


 得意そうだった。


「あ、そうだ。達矢。私にバナナは? 買ってきてくれなかったの?」


 どうやら、黒いバナナについての一連の記憶が消えているらしかった。


「バナナなら、捨てたぞ」


「何ですって! バナナを捨てるなどという飽食は、私の前では許されないのに!」


「なぁ、アルファたん。面倒くさいヤツを黙らせる便利な薬とか、持ってない?」


 訊いてみたところ、


「くらえ、睡眠薬ぅ」


 と言って、ハンカチみたいなものを取り出し、そして、紅野明日香の口と鼻をそれで塞いだ。


「もごもご……っ」


 明日香は、僅かにもがいた直後、


「むにゃむにゃ……」


 寝た。


「便利だな」


「天才ですから」


 そうっすか。


「ところで、アルファ」


「何? おにーたん」


「利奈っちたちが居る武器庫ってのは、何処にあるんだ?」


「うーんとね、下」


「下……というと、さらに地下か」


「そう。そう言ってたよ」


「そうか、ありがとう」


 俺は言って、扉を出た。


 そして、蛍光灯が灯る階段を下った。


「いってらっしゃーい」




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