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最終章_5-3

 さて、わけのわかんない謎の女スパイが出てきたところで……要点を整理してみよう。メロンパン料理を食いながら。


 何だか、何度も整理して、その度「わけわからん」っていう結論に至っている気がするのだが、とにかく、考えないと何も始まらないと思うので、必死に整理してみることにしよう。


 まず、紅野明日香が『選ばれし者』で、『ソラブネ』とかいう古代兵器を動かす鍵で、二つの軍から追われている。


 本子さんや利奈っちと一緒に探した古文書――正確には古文書を書き写したらしい紙――に記されていた文章によれば……、『ソラブネは宇宙より飛来した』もので、『ソラブネの正体は不明のまま』で、『選ばれし者が生まれるのは、世界に危機が訪れているか、ソラブネに危機が訪れているかのどちらかの場合に限定されるもの』であり、『誰が選ばれし者なのかを知るのは極めて困難』であるが、『選ばれし者が一定の距離に近付くと、輝く本が淡く赤く光を放つため』手がかりくらいにはなる。『近くに選ばれし者が近付いた場合、輝く本は金色に輝く』とのことだった。『兵器転用も可能であると推測されるため、安易にソラブネを甦らせようとする者には、必ず罰が下るべきである』とも書いてあった。


 ……つくづく狂った伝説である。


「へぇ、そういう伝説なんだ」


 俺が思考に耽っていると、那美音がまたしても俺の心の中を読みまくっていたらしく、話しかけてきた。


「あぁ、まぁな……」


「どうするの? ソラブネ、探す?」


「こうなれば、探すしかないだろうと思う」


「輝く本も、探したいわ」と那美音。


「ん? それが無くてもソラブネは動くんじゃないのか? 明日香が居れば」


「そうねぇ。動くとは思うけど……紅野明日香が本当に『選ばれし者』なのかを、確かめたいから」


「ふむ……」


「もちろん、紅野明日香は置いて行くわよ。本だけ持って帰ってくる感じね」


「あいつ、怒るんじゃないかな……」


 今は風呂に入っているが、きっと連れて行けと言い出すに違いない。


「そんな気もするわね」


「というか、ほぼ確実に言い出すだろう……」


「でも大丈夫、そんな時のために、この特製バナナ牛乳を作っておいたわ!」


 ドン、と机の上にビンを置いた。


 ビンからは、何やらバナナのようなものが飛び出している……。


「バナナ牛乳……これは、もしや……」


「そう。睡眠薬入りのバナナを牛乳の中にぶち込んだ傑作よ」


 どこが傑作だ。雑すぎるだろ。バナナはみ出てるし。


「そこが良いんじゃないの」


「で、つまり、またしても睡眠薬で眠らせている隙に明日香を置いて外に出ようということか?」


「その通り」


「後で怒られそうだがな……」


「でも、現状、ここが一番安全なのよ」


「そうなのか?」


「いつ町が攻撃されるかわからない状況だもの。たとえば、ミサイルとかで爆破されそうになっても、この深い地下の隠れ家なら爆撃にも耐えられるはず。他の洞窟とも繋がってないから、図書館裏さえ守れば、地下には誰も辿り着けない」


「……だが、武装した戦闘のスペシャリストが町に乗り込んできたら?」


「それでも、この洞窟が発見される可能性は低いわ」


「理由は?」


「洞窟は、他にもいっぱいあるのよ。洞窟が多い理由は、古代兵器を探した連中が過去にも居たから。図書館の裏側にあるこの洞窟は、確か、資材倉庫か何かでね、途中で道が途切れてることがわかってる。ソラブネに到達するものではないって理由で、比較的ノーマーク」


「でも、確実に安全ってわけじゃないんだろ?」


「そりゃそうだけど、町全体の人間の思考をあたしが読むから、少しでも怪しい思考を展開させる人が居たら、すぐにここに戻ってくれば良い」


「そんなことが……可能なのか?」


「かなり精神力を使うけど、不可能じゃないわ」


「なんつーか……すごいっすね……」


「何を置いても情報は大事。これは、近現代の常識」


 常識らしい。


「とにかく、外に出て情報を収集しないと。輝く本を探すために」


「そうだな……」


 と、風呂から明日香が出てきた。


「あぁー、良いお湯だった」


「そうか。よかったな」


「さ、アスカちゃん。お風呂上りに一杯」


 那美音は言って、笑顔で特製バナナ牛乳を手渡した。


「まぁ、うれしい!」


 明日香はバナナがヤンチャにはみ出ているビンを受け取ると、腰に手を当てて、バナナを食べながらそれをゴクゴクと飲んだ。


 ニヤリと笑う那美音。そして、


「ぷはーっ」


 飲み干した次の瞬間、


「ばたんきゅー」


 明日香はベッドに自ら飛び込んだ。


「くー、くー」


 寝た。


「さぁ! これでアスカちゃんの安全は確保されたわ!」


「ようし、それじゃあ出かけるか! 那美音!」


 俺たちは、隠れ家を後にした。




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