最終章_4-2
風呂から上がった俺は脱衣所でまたしてもダサいちょんまげのオッサンが印刷されたダサい服に着替え、タオルを首にかけたまま、利奈の待つ部屋へと続く扉を開けた。
「こ、これはっ……」
その視界に飛び込んできたものとは!
「あ、ちょうど、ごはん準備できたところよ」
テーブルにあったのは……
「これは、お茶漬け……?」
「美味そうっしょ」
「ああ。まぁ……」
味の想像が容易にできそうだがな……。
「ほらほら、食べてみて」
レンゲを手渡され、受け取る。
「いただきます」
食べてみる。想像通りの味だった。白米にお湯を注いで出来上がり、が売りのインスタントお茶漬けだからな。
「美味いぞ」
うむ。さすが市販品は安定している。
と、そこで俺は、あることに気付いた。
日本の西の方にある、とある都市では、お茶漬けを出すという行為は『もう帰れ』のサインだということを思い出したのだ。
「……まさか、利奈っち」
「何?」
「行き場の無い俺に出て行けというメッセージを込めたのか?」
「何それ?」
首を傾げられたぞ。
「あぁ、いや、心当たりが無いなら、いいんだ。変なことを言って、すまない」
言うと、利奈っちは、思いついた顔で、
「ここは、そんな古都っぽい場所じゃないわよ」
と言った。
ほっ、と安堵の溜息。
とりあえず、追い出されたりはしないようだ。優しい子。
「それで? 今日のご予定は?」
「ご予定、ねぇ……」
本子さんの除霊が行き詰まり、輝く本についての探索も打ち切ることになった以上……えっと、何もやることがない。となれば、
「そうだな。学校でも行くか。真面目に」
「そうねぇ。行きたいなら行ってみたら。今日、お休みだけど」
「何だって? それじゃあ行かないことにしよう」
「そう。あ、でも、どこか行くんなら、一緒に行こうよ」
「ああ、そうだな」
一人で行動するよりは、賑やかな方が好きだし、まだこの町に来て、数日しか経っていない。
ここは、利奈っちに町の案内でもしてもらおうかな。
そこで俺は、
「散歩でも行くか」
「ゴーゴー!」「ゴーゴー!」
本子さんと利奈っちは声を揃えてそう言った。
利奈っちめ。本子さんとも、だんだん息が合ってきたじゃねぇか。




