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最終章_3-9

 さて、穂高家の前にやって来たぞ。


 まつりの話によると、ここに、大事なものが保管されている可能性が高いらしい。


「花屋さん……?」

 と明日香の呟き。


 そう、花屋さんだった。


「そうなのよ」

 利奈は呟き、後、すぐに、


「おーい、カオリー」

 戸をガラッと開けて『カオリ』という人を呼んだ。


「ふぁ?」

 そんな声が聴こえてきて、すぐにエプロン姿の小さな女の子が出てきた。


「うげぇ、マリナっちだぁ!」


「そんな、人を妖怪みたいに言わないでよ」


「幽霊には取り憑かれてるような存在だけどな」


「ちょっと、達矢……ひどくない?」


「事実だろうが」


「そうよね」


「明日香まで……」


「ゴーゴー」と本子さん。


「今それ、言う場面じゃねぇだろ」


「うふふ」

 笑ってた。何この幽霊。


「ま、まぁ、ともかく、この子は、穂高緒里絵。本題に入りましょう」

 利奈が言って、


「そうね。早く幽霊が見たいわ」

 明日香が言った。


「ふにゃ? 何か用?」

 カオリは、首を傾げた。


 で、だ。


「――かくかくしかじか……で……」

「――……かくかくしかじか……というわけだ」

 利奈と俺は、穂高緒里絵という女の子に説明した。


「そうなんだ……輝く本に、除霊の方法……」

 呟くおりえ。


「そう。心当たり、無い?」

 利奈が訊くと、


「にゃい」

 無いらしい。


「うーん……ここもダメかぁ」


「あ、それじゃあ……まつり姐さんに訊くのは」


「もう訊いたが、ダメだった」


 すると、


「うむにゅん……」


 などと謎の単語を発声しながら考え込み、


「マナカは?」

「それもダメ。あいつはひきこもり」


「みどりさんは?」

「役立たず」


 利奈……ひどい言い様だな……。


「じゃあ、わかんないにゃん」


「そうなのかにゃん」

 俺は言った。


「そうだにゃん」


「にゃんにゃん?」


「にゃんにゃん」


 首をかしげ合いながら突如として開始された異次元にゃんにゃん会話を繰り広げていると、明日香と利奈から気の毒なものを見るような目で見つめられていた。


「な……何だよ……」


「いや……達矢って、そういうのが好きなの?」

 と明日香。


「え……えっと……」


「にゃんにゃんって……」

「変態ね……」

 と明日香と利奈っちが渋い顔を揃えてきた。


「おいおい、にゃんにゃん言っただけで、変態と言われたら、猫はどうなってしまう?」


「猫ちゃんはかわいいからいいっしょ」と利奈。


「そうね。達矢が言うとキモい」と明日香。


「うぐ……」呟く俺。


「うむにゅー?」首を傾げるおりえ。


「にぇー、にぇー」本子さんは変な声を出した。


「本子ちゃん、それ何か違う……」と俺。


「?」

 おりえが更に大きく首を傾げた。


「なあ、おりえ。今、利奈っちは、幽霊に話しかけたぞ。変なヤツだよな、利奈は」


「ふぇ? 幽霊? どこどこ?」

 キョロキョロした。


「そのへんに浮いてて、輝く本に触った人間にしか見ることができないらしい」


「見たいみたーい。幽霊見たーい」


「でも……そうすると、俺や利奈っちは、既にその本ってのに触ったってことになるけどな」


「そんなの触った記憶ないんだけど」


「俺も無い」


「私も」

 と明日香。


「明日香には見えてないだろうが」


「そうでした」


「じゃあ何で余計なこと言ったのよ」


「会話に入りたくてつい」


「あ、何か……ごめんね。気が回らなくて」


「あ、いいのいいの。気にしないで」


「それで……ここでも手がかりすら掴めないのなら、どうするんだ……?」


「どうって……」利奈は考え込み、「…………どうしよ……」


「うーむ……」


「完全に行き詰まりますね」


 本子さんは、軽い調子でそう言った。


「そうねぇ」


 と、その時、


「あ、そうだ」思いついた顔で、おりえが言った。「穂高のおうちのことなら、おかーさんが何か知ってるかも」


「あっ。そっか。華江さんに聞けば!」


「華江さん? 誰だそれは」


「華江……どこかで聞いたことある名前ですね」


 と本子さんが斜め上に視線を送りながら考え込んだ。


「でかしたわ、カオリ。よくぞ思いついた」


「えへへー」

 褒められて照れていた。


「それじゃあ、華江さんを、呼んで来てくれる?」


「あ、いや、えっと、この家には居ないにゃん」


「え? どこに居るの」


「おかーさんは、ショッピングセンターに新しくできたお店で忙しくて……」


「ああ、例の二号店か」


「うむにゅん」

 おりえは大きく頷いた。


「じゃあ、そこに行くわよ」と利奈。


「うん、あたしも行くにゃん」とおりえ。


「ゴーゴー!」

 恒例となった本子さんの声で、俺たちは坂を下っていく。




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