幕間_01_アンブレラなんて意味ないのよ
中学校の教室で、笠原みどりは傘を開いてみせた。
みどり「見てみて、このキレイな傘! いいでしょ? 可愛いでしょ? 花柄だよ!」
まつり「何だ、自慢かこの野郎」
みどり「そ、そうじゃないけど……」
まつり「教室内でアンブレラを広げて見せびらかして何が楽しいんだ、みどり」
みどり「見せびらかしてるとか、そんなんじゃ……」
まつり「あやまれよ!」
教室内は、水を打ったように静まり返った。
みどり「ごめん……」
まつり「だいたいね、この街でアンブレラなんてもんが意味あると思ってんの? 傘なんて風ですぐに壊れるだろうが!」
みどり「ふふふ」
まつり「何笑ってんだ、みどり。アンブレラなんて風の弱い日とか凪いでる時間帯しか使えないんだからあったって無駄だろうが」
みどり「これはね、丈夫な傘なんだよ。壊れにくい傘で……」
まつり「どれ、貸してみろ」
みどり「…………」
まつり「貸せっつってんだろ!」
ばっ!
奪われる。
みどり「あっ……」
まつり「ていっ!」
ばきっ!
みどり「!」
まつり「…………ふっ」
みどり「お……おれた……」
まつり「な? 丈夫なんていっても、こんなもんなんだよ。アンブレラは所詮はアンブレラ。あたしの方が実力は上よ」
みどり「ひ、ひどい……うぅ……」
まつり「チッ、嘘泣きしやがって、このタヌキ!」
みどり「うぁーん!」
まつり「アンブレラなんて意味ないのよ!」