最終章_3-2
朝食。
ショッピングセンター内の中華料理店に、俺たちは居た。
女子二人は制服姿、俺も制服に着替えた。
利奈っちが洗って乾かしてくれたのだ。
今日も学校は授業中なのだが、制服姿でサボタージュとは、堂々としたものである。
中華料理店内の、四人掛けのテーブル席に腰掛ける。
少々遅めの朝飯ということもあり、他のお客さんは一人も居なかった。
「明日香……ごめんってば……」
利奈っちが謝っている。
ここへ来るまでの道中、ずっと明日香は怒っていた。
「何なの。何なの。あんなワナまで仕掛けて、そこまで私が嫌い?」
「そういうわけじゃ……」
「しかも、達矢!」
「何だよ……」
「私の下着、見たでしょ! 最低!」
「おいおい……助けてやった恩を忘れて、そういうことを言うのか」
「私の下着が見たかったから助けたんでしょ。この変態!」
「そんなわけあるか!」
下着姿が見たいなら助けず鑑賞してるっつーの。
すると本子さんが、「なんか、理不尽に怒られてますね」と言ってニコニコした。
まったくだ。
「もう腹立ったから、超いっぱい頼んでやる」
「「え……」」
俺と利奈の戸惑いの声が揃った。
「店員さーん!」
明日香が大声で店員さんを呼ぶと、
「ハイー」
愛想のない店員さんがやって来た。昨日出前を持ってきた店員さんだ。
そして、明日香は注文する。
「酢豚と、水餃子と、小籠包と、フカヒレの姿煮、麻婆豆腐と、バンバンジー、あとは……」
店員さんは、次々と伝票に書き入れていく。
「お、おい……明日香……。それちょっと頼みすぎじゃあ……」
「うっさい」
おこられた……。
「すみません……」
「あと回鍋肉と」
ま、まだ頼むのか……。
「エビのマヨネーズ炒め、八宝菜、チンジャオロースと、白いご飯を大盛りで下さい」
「はい」
「二人は?」と明日香。
「お、俺は普通のラーメンを……」
「わたしは普通のチャーハンを……」
「ハイ、以上でよろしいですか?」
「あ、そうだ」
「「え!」」
まだ何か頼むのか!
「何でしょう」
「あとウーロン茶をお願いしまーす」
「かしこまりましたー」
愛想なく言うと、店員さんは厨房の方へと消えた。
「しかし……頼みすぎだろう……」
「いくらオゴリだからって、ちょっと行きすぎっしょ……」
「そりゃ私だって、遠慮するつもりだったわよ。でも、ワナにはめられて逆さ吊りにされた上にパンツ見られたら、温厚な私だって怒るわよ!」
「その怒りの方向を食に向けるとは……太るぞ」
「は? 何? 達矢? まだケンカを売る気でいるの?」
「い、いえ、決してそういうわけでは……」
「ま、ここの支払いで全部チャラにしてあげるから、ありがたく思いなさい!」
「そ、そうですか……」
と利奈が俯いて呟いた。
「ありがたいことです……」
俺もそう言うしかなかった。
そして俺たちの前には、無愛想な店員さんの手によって、やや乱暴に御冷が三つ置かれた。