最終章_2-10
理科室から廊下に出てすぐに、「ねぇ、達矢」と利奈が俺を呼んだ。
深刻そうな調子だたので、「何ですか」と敬語で返事すると、利奈は、
「朝から言おう言おうと思ってたんだけど……」
「な、何だ? 大事なことか?」
今さら言われても困るようなことだったらどうしよう。
しかし、利奈は言うのだ。
「お風呂入らなくて平気なの?」
「は?」
「少しばかり……汗くさい」
「あ、あー……」
言われてみると、昨日の朝から風呂に入っていなければ着替えもしていなかった……。
「男の子って、やっぱそういうの平気な人が多いの?」
「まぁ、たぶん、わからんけど……」
「できれば、その、一日一回は、お風呂に……ね?」
「あぁ、洞窟の風呂を、借りようかな、とか思ったことはあるぞ。でも、ほら……何か色々気を遣ってしまって……女の子が使ってるお風呂だし……」
「そんなこと気にしたの?」
「まぁな。俺は紳士だからな」
「バカじゃないの?」
「す、すまん……」
「この学校の校舎の一階に、シャワー室があるから、そこで汚れを落として来て」
「いや、着替えが無い……」
着替え等、生活用品は全て、寮に置きっぱなしだった。
「えっと……この時間だと、もうお店閉まっちゃってるわね…………じゃあ、わたしの洞窟隠れ家に戻りましょう。汚いから本当は嫌だけど仕方ない。シャワーと着替え、貸してあげる」
「あ、はい。何か、すみません」
俺たちは歩き出した。
「ゴーゴー!」
また、本子さんがそう言った。